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資源エネルギー庁が示した「太陽光発電導入抑制シナリオ」の衝撃と政策強化の不十分さ

本日開催された「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)」にて、資源エネルギー庁より「今後の再生可能エネルギー政策について」と題した資料が提出されました。

私も登壇した事業者・団体へのヒアリング結果も踏まえて、2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標を整理した資料です。この中で太陽光発電には「現行政策努力継続ケース」のみが示され、「政策強化ケース」更なる検討が必要として目標値が示されていませんが、イメージ図は掲示されていました。この2つについて見ていきたいと思います。

現行政策努力継続ケース

こちらは「太陽光発電抑制シナリオ」とでも言うべき内容です。地域活用要件による50kW未満の事業件数の激減(前年比88%減)や、極めて低調な入札の状況も踏まえ、それが継続した場合という表現です。

後半に「政策強化ケース」が言及されているので、「政策強化を図らなければこうなる」というシナリオと言えますが、言い換えれば現在は「太陽光発電を抑制する施策を取っている」ことを資源エネルギー庁が認めた形とも捉えられます。

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世界的には年間2億kWの太陽光発電が導入される中、また各国が再生可能エネルギー導入目標を引き上げる中で、国内は太陽光発電が年間150万kWしか導入されないという状況の異常さが際立つ資料となっています。

この現状から、政策強化によって導入量の上積みを目指すのが次の「政策強化ケース」です。

政策強化ケースとは

ヒアリング等を通じた意見を含めて、普及阻害要因を取り除くような政策対応を取る場合を「政策強化ケース」と称しています。しかし、太陽光発電については定量的な目標・KPIが具体化されている部分が少ないとして、今回の資料では更なる検討が必要として具体的な数値は記載されませんでした。

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2030年の再エネ導入目標を上方修正するとなると、事業化のリードタイムを考慮すれば大量導入が可能になるのは太陽光発電しかありません。そういった点も理解した上で、現時点では結論を出すことを回避した印象です。

今回、資源エネルギー庁の姿勢として一つ変化が見られたのが、産業再構築という観点が取り入れられたことです。これまで再生可能エネルギーに対する産業政策の不在を繰り返し指摘してきましたが、下記の資料にあるように産業拡大を図っていくことが必要という点が記載されていることは評価できます。

ただ、施工面の記述はあるものの、国内の太陽光パネルメーカーの相次ぐ生産撤退などについては触れられておらず、その点では片手落ちになってしまっています。今回の資料全体でコストに関する言及もなく、そこも敢えて議論を回避している印象です。

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政策強化ケースによる導入量増加について、現時点での資源エネルギー庁としての想定を示唆するのが「2030年までに徐々に6GW規模まで回復させていく」という記述です。FIT制度による市場縮小を踏まえ、それを反転させる方向性が下記のイメージとして示されています。

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太陽光発電を増加基調に向かわせることを示した形ではありますが、その導入量が果たして妥当なものなのかは疑問です。上記のようなペースでは、太陽光発電以外の電源種を政策強化ケース相当で導入したとしても、2030年の再エネ導入量を40%に持って行くことすら困難でしょう。

今回、こうしたシナリオ案が示されたことで更に再エネ導入目標に関する議論が加速することになるでしょうから、その中で私もより野心的な政策措置の必要性を訴えていくことにしたいと思います。

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