見出し画像

カフェサークル「cLuV」での思い出②

前回はcLuVの創設について、その時の私の想いの部分もからめてお話いたしました。今回は、活動を始めてからのお話をします。

初めての知見共有

自家焙煎を始める前から、私は友人などにコーヒーに関する話をしていました。ただ、今思えば本をかじっただけの知識を偉そうに語っていたように思います(笑)それが、自家焙煎をするようになり、また「コーヒーがまずい」事件以降は特に、コーヒーに関していろんな本を読み漁ったり、コーヒー屋に行ってお話を聞いたりして、コーヒーがいかに経験則でのみ語られてきたのかを知りました。「コーヒーは嗜好品だから」の大義名分をもって、多種多様なコーヒーをいろんな人が提供している中、共通して「コーヒー豆の鮮度が大切なのは知っているが実際はそこまで重要視していない」という実態があることを知り、それによって(特に若年層において)こだわる人のコーヒーは美味しいはずなのに美味しくないという認識が広まっていることを肌で感じました。
後ろ向きなことをお話いたしましたが、こうした状態を鑑みて、焙煎したての鮮度が良いコーヒーの、コーヒー本来の美味しさを知ってほしいという想いから、サークル「cLuV」の設立にいたりました。もちろん、ただ鮮度が良いコーヒーを飲んでもらうだけでは「先輩のコーヒーは美味しい!」だけで終わってしまうため、鮮度がコーヒーの美味しさに影響するロジックを講座形式で教えました。
cLuVでのコーヒー講座が、私にとって初めての「知見共有」でした。高校時代に友人に勉強を教えたことはありますが、コーヒーのように正解がないことを教えるというのが初めてでした。私にとって、とても大きなプレッシャーだったことを覚えています。少なくともcLuVにおいては私が正解でなければならず、また私が教えたことをみんなが正しいことだと認識することになり、ひいてはそれを次の人に教え伝えていく可能性もあるため、責任重大であると思ったからです。…長々と書いてしまいましたが、要するに「知見共有」を行う自信が弱かったんです(笑)

自信を形成するのは「自」分を「信」じる想い

知見共有を行う自信が弱かった原因は明確で、私が自分自身の知識・理解・技量に自信がなかったことです。例えば、コーヒー一杯淹れていても「ドリップってこれで正しいのだろうか…」「豆の個性がちゃんと出る焙煎が出来ているだろうか…」など、常に不安がつきまとっていました。そんな状況で、上述のような責任を考えるとプレッシャーに負けそうになり、到底自信なんて持てなかったです。
しかし、cLuVのみんなに教える中で、本当に様々な質問が来ましたが、7割方答えることができました。また、答えられなかったことについては、答えられなかったという事実に悔しくなり、躍起になって勉強を重ね、答えを見出すようにしました。こうしたことを重ねることで、答えられない質問はほぼなくなり、いつの間にか自信が持てるようになっていました。知見共有を繰り返す中で「先輩にこう教わったけど嘘だった!」ということはなく、むしろ「他の人にこう言われたけど先輩の言ったことのほうが論理的で正しいと思った」と言われることが多かったので、より自分を信じることができました。そういった経験を積ませてくれたcLuV部員には、本当に感謝しています。

嗜好品を論理的に教える難しさ

言わずもがな、コーヒーは嗜好品です。そのためどうしても個人の嗜好に左右されやすく、「これが正しい」ということを教え伝えるのはなかなかに難しいです。また、反対に「これが正しいんだ」と教えられることも多いコンテンツです。もちろん「粉の大きさが小さい方を細挽き、大きい方を粗挽きという」みたいな自明のこともありますが、「ブラジルは苦いよ」「酸っぱいのが嫌い?じゃあコロンビアはやめときな」といったように、偏見や経験則で教える人が多いです。
ただ、何も知らない、コーヒーに触れるのが初めて、という人にそんな風に教えてしまうと、例えばフルーティな甘味を伴う酸味が特徴のブラジルを紹介されても「ブラジルって苦いんでしょう?苦手だわ〜」と考えて避けてしまうことになります。ある意味、昨今のスペシャルティコーヒーの香味が受け入れられ難いのってそういう教え方をされてきた世間的な蓄積が原因なのではないかと思いますが。とにかく、偏見や嗜好を伴った経験則で教えるのは、かなりの危険をはらんでいます。
このようなことを避けるにはいかに論理的・客観的に教えるかが重要ですが、そのために必要なのが、数値化です。私は早い時期からこのように考えて、科学の立場からコーヒーを勉強するように注意いたしました。
私が勉強し始めた当時は、本屋で購入できるような一般的な書籍には科学的知見は少なかったので、とても苦労した記憶があります。英論文を読む、あるいは少ないながらある書籍をつまみながら、自分が理解できる範囲でまとめました。つらい時期もありましたが、そうした努力がcLuV部員に教え伝える時に実を結び、今に繋がっているので、本当に頑張ってよかったなと思っています(←自画自賛)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?