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41 限界スイッチ

会社を休む訳にも、辞める訳にもいかなかった。

今更実家に帰れない。

私は働いて生活をしなくてはいけない。

長く働いた会社だから、こんな風に辞める事はできない。

次の仕事を決めてから辞めたい。

私は仕事紹介会社に登録して、面接に行った。

こんな状態だけど、薬がある。

面接相手は、バリバリ仕事をしている人だと登場した瞬間に分かった。

キラキラして眩しかった。

それすら辛かった。


自己アピールと会社を選んだ理由を聞かれた。

本音の転職理由は、

今の会社を辞めたいから。

今の職場を辞めるにはどの会社でも良かった。

生活する為には働かないと行けないから。

というネガティブな物だった。


でもそんな話をする訳にはいかず、
こんな状態で、自分に自信が持てないまま、

上っ面だけの、よくありがちな自己アピールを話した。

それが当時の精一杯だった。

心なんてこもって無い、受かるわけも無かった。

今振り返ると、
この時の私自身にも魅力は無かっただろうから。

落ちて当然と言えば当然だった。


薬で何とかなっていた日々も、

ある日、カチッと音がした。

限界のスイッチだ。

もうここから離れよう。

上司に話があります。と言いに行った。

苦手な上司は、こちらに顔も向けず、目も合わさずにパソコンの画面を見たまま、

わかった。と言った。

その後数分後、私の席に来て、

Aさんが話を聞くそうです。と、その人より上の上司の名前を言った。

Aさんに呼ばれて、別室で話をした。

会社を辞めたくないけど、今体調が悪くて、薬が無いと電車にも乗れなくて、夜も寝れなくて、頭痛と動機がして、毎日吐いてしまいます。こんな事をお願いする前に辞めるべきだと分かっていますが、生活が心配なので、申し訳無いのですが、しばらく休ませてもらえませんか?

そう言って病院からもらったお守りの診断書を渡した。

Aさんはとても優しくて、ずっと話を聞いてくれて、理解してくれた。

19時位にAさんと話を始めて、22時を過ぎていた。

休みたいけど、休んでいる間の仕事も気になっていた。
あなたが休んだら仕事は大変になるかもしれないけど、他のメンバーが分担するので心配しなくていい、とにかく体調を治さないと行けない。体調が良くなったら待っているから、今は休んだ方がいい。
他のメンバーには私が話しておくから、何も心配しなくていい。

我慢していたけど、号泣してしまっていた。

もっと早く話せば良かった。

少しほっとして肩の荷がおりた。

もう今日は遅いから帰りなさい。

席に戻ると、上司が居た。

多分、私を待っていた。

23時になろうとしていた。

もうすでに帰っていると思っていた。

目の腫れた私を見て、

久しぶりに私の目を見て話しかけた。

上司 ”辛いの?”

私 ”…大丈夫です”

上司 ”……最近おかしいよね?話さなくなったし”

それは、だってあなたが無視してたから…全て否定していたから

仕事どころじゃない。
仕事がうまく進む訳もない。どうしようもない…

黙った私に、上司ははじめて向き合おうとした。

私がこれまでの仕事のやりにくさについて出来るだけオフィシャルに話した。

もちろん、仕事のやりにくさだけが問題では無かったけど、それは言えなかった。

上司は、わかった。

そしたら今日は遅いから、明日打ち合わせしましょう。と言った。

意外だった。

目も合わせず、存在を無い事の様にし、無視し続け、

部下を巻き込んで孤立を図り、大勢の目の前でわざと怒鳴りつけ、難題な課題を与え、それを準備しても全て否定してきた本人だった。嫌がらせをして辞めさせようとしていたと感じていた。

私がAさんに呼ばれたから、立場上まずいと思ったんだろうか…

その上司が23時をまわって会社にいた事はこれまで無かった。

私は心の中で、

もう遅いよ、

今更、、、
明日から仕事は休む予定で、それを誰にも言うなと言われている。

上司は、じゃあ明日。先に帰るね。と帰った。

……

私は混乱した。


…どうしよう…


明日、打ち合わせの約束が入った。


まだ席に残っている私の所にAさんが来た。

さっき上司と話した事を伝えた。

明日は会社に来てもいいし、
休みたいと思ったら、明日から休んでもいいし、
どちらでもいいから明日連絡して。
ただ、体調が悪そうだから、まずは体調を治してからの方がいいと思います。
体調が良くなったら本領発揮できる。


…どうしよう…


本当にどうしよう…


明日休んでしまえば、

どうなるんだろう。


取引先には?何て説明する?

問題のあった人以外の仕事仲間は?

これまで頑張ってきた。

でもこれまで積み上げてきた物が全て台無しになる様な気もした。

だけど。

もう本当に休みたい。

疲れた。

これまでの人生で味わった事が無い程、

とても疲れた。

これからの事より、

薬無しでも電車に乗っていられる。

薬無しでも、寝られる。

薬無しでも笑える。

本来の自分になれるならなりたい。

明日起きた時に考えよう。

今日は疲れた。

こころがつかれた。




つづき








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