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40 黒いスポットライト

ある仕事の帰り、
いつもの電車に乗っていた。
いつもの様に人が多い。

この日は、妙に人が気になった。

人が近くにいる事に耐えられない。
とにかく気分が悪い。

吐きそうだ

だめだ…
限界…


途中下車した。

少し休んで、次に来た電車に乗る。


また気持ち悪くなる。

また近くに人がいるのが耐えられなくなる。

また一駅で途中下車した。

どうしよう…

何これ…

気持ち悪い。


真っ直ぐ歩けない…
何これ…

しっかりしないと!!

また電車に乗って、

もう少しで次の駅、次の駅まで我慢!!

そしてまた下車。

そんな事を繰り返して、何とか最寄り駅に着いた。

”助けてください!!”

”何かおかしいんです!”

駅員さんに言おうとして、何とか言葉を飲み込んだ。

駅のベンチで休んだ。

しばらく休んで、家に帰った。

一体何なんだろう…
こんな事今まで一度も無かった…

もうダメかもしれないと思った。


生きるには、

自分で働いて、家賃払って、光熱費…

働かないと生きていけない。

頑張らないと。

体が重かった。

体ってこんなに重かったっけ…

何とか気力で奮い立たせる。

朝の電車のホーム。

下を向いて歩く、何となく線路を見ていた。

飛び込む人の気持ちが分からなくも無い

でも私は、飛び込まない。

今はしんどいだけ、少し楽になりたいだけ。


会社に着く。

誰の事も、もう信じる事は出来ない。

私の言葉が遮られ、無視される。

仕事の連絡事項も、

私なんていなくてもどうでもいい

いなくなってもどうでもいい。

私の人生なんて意味が無い。

消えたい。

どうでもいい。

もう面倒だ。

何もかも。

また会社で吐いた。

その日、友達が探してくれた病院の予約が入っていた。

病院は抵抗あるかもしれないけど、

仕事を続けていく為に、薬で少し楽になるから。

熱が出ている時に解熱剤を飲むのと同じ。この病院行ってみて。

会社の最寄り駅から、病院まで2駅なのに、

すごく遠く感じた。

体が重くて、歩く事も辛かった。

病院の待合室には沢山の人がいた。

空いている席を見つけて座った。

立って待っていられなかった。

○○さん診察室にお入りください。

あーーー名前で呼ばれるんだぁ…

こんな時も、

どうしても、そういう病院に行く偏見がぬぐいきれなかった。

医者は白髪の上品で優しそうな先生だった。

診察室は広くて真っ白で、診察室の奥窓から木々の緑が見える。

ソファに腰を掛けて、

色々聞かれて、そのまま感じている事を答えたと思う。

先生 ”症状を抑える薬を出しますが、会社から離れた方がいい”

私 ”仕事は辞められません。働かないと生活出来ません”

先生 ”それより、あなたそんな状態で仕事できるの?辞められないなら会社休んだ方がいい”

私 ”会社を休んだら、辞めないといけなくなるので出来ません”

先生 ”診断書を書きます。これを持っておきなさい。

あなた自身が限界だと思った時にこれを出せば、会社をすぐに休めます。

仕事より体を治さないといけない。

もし、会社に行けなくなったら、これを郵送でもいいから会社に出しなさい”

私 ”それであれば、わかりました”


体がだる過ぎて、出された薬をすぐに飲んだ。

その日は途中下車せずに家に帰れた。




つづき



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