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二見くんの日々11 鹿と鳩が集う写真屋


母と宮島へ行った。

フェリーを降りたら鹿がいてびっくりした。

町中に鹿がいるのって奈良だけじゃなかったんだ。
思わぬ鹿たちとの邂逅に浮き足立つ。
島という隔離された空間にいるんだし、奈良の鹿とは何か違いがあったりするのかな。

せっかくの旅行だからとちょっと予定を詰め込みすぎた僕らは、鹿たちをのんびり見ていたい欲を抑え足早に進む。

神社の境内が見えてきた。

鹿もいるし、島全体に神聖な空気が漂っているような感じがする宮島だけれど、神社の中はさらにピッと心地良い緊張感がある。
「お邪魔します」と一礼して境界を跨ぐ。

左に顔を向けると、石垣の上に草本植物と木が生える地面があって、奥に森が続いている。
そのうちの一本の木の根元に小鹿の姿。
ちょうどその鹿を包むように陽だまりができていて、スフィンクスポーズが神々しい。
「鹿は神の御使」って聞いたことがあるけれど
本当なのかもと思っていたら、鹿がウインクしたように見えた。


あれ、いつの間にか母さんがいなくなっている。
「じゃあまた」と心の中で小鹿に挨拶して
母を追う。

「母さん、お待たせ」
「あ、日々。見て見て、鹿がいっぱいいる」
言われて見ると、鹿が3匹集まっている。
その傍に写真屋があった。
「写真屋です」とのれんがかかっているから間違いない。

屋根の上には鳩がいて、隣には狛犬がいて、前には鹿が集っている。
愉快な写真屋さんだ。

楽しくなって母と並んで眺めていると、写真屋のおじさんが窓から顔を出して、
まるで「撮って〜」と店の前に並んでいるみたいな鹿にニカっと笑顔を向けた。


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