ルリドラゴン 五話感想

 ルリドラゴン五話です。今回も期待を裏切らない良回でした。5週連続でこのクオリティとなると、この作品への信頼を盤石にしても良さそうです。

 自分も普段から色々と漫画、映画、アニメを見ているのですが、最近ふとそのコンテンツを楽しんでいるのか、そのコンテンツで楽しんでいるのか分からなくなる時があります。例えば面白い映画を見ても映画館を出た瞬間にTwitterを開いて感想や考察をチェックしている自分がいます。その作品が楽しいのでなく、その作品を語り合うことの方を楽しんでいるような気がします。もちろんコンテンツをコミュニケーションツールに使うのは悪いことではないのですが、何だかコンテンツの方が従になってしまっている感もありました。

 翻って、昨晩ルリドラの五話を読んでため息をついてしまいました。他の人の感想を見たいという感情の前に、作品を自分の中で堪能していたいという気分になり、しばし呆然としてからまた読み返し始めました。こういう気分でコンテンツに触れたのは本当に久々だった気がします。ジャンプを長年読んできて、いつの間にか作品の内容よりもネットの評判や掲載順や単行本の売り上げばかり気にするようになってしまった自分には何だから懐かしい気分です。こんなに夢中になってジャンプを読んだのはいつ以来でしょうかね。ハンターで宮殿突入してた頃まで遡る気がします。

 さて本編です。三話でクラスメイトから暖かく迎え入れられたルリ。三話時点では単にこの漫画はそういう優しい世界だと思っていたのですが、実は同級生たちも色々と感じるところもあったようです。「実はわたしちょっと怖いけどね」「わたしは分からん」という三倉さん達の言葉を聞いて、ルリは(やっぱり自分を怖がっている子もいるんだ)と物思いに沈みます。この時、ルリは飲み終わった空のフラペチーノのストローに何度も口をつけてシュコシュコやっています。緊張してるんでしょうね。何と言っても火を吹く女子高生です。吉岡を焼殺しなかったのはたまたまでしかありません。そこでルリは母親が尽力していたことを知り、そして神代が「ルリちゃんも怖いのは一緒でしょ」と言ってくれて心の重みがスッと取れていったようです。

 この時、ルリは神代に抱きつかれて気持ち悪がっています。まあ実際同性に抱きつかれていては正直気持ち悪いでしょうね。まあルリは三話でユカに抱きつかれても体温を感じて顔を赤くしていましたけどユカは特別なんでしょう。どういう意味で特別なのかは今後明らかにしてほしいところです。ところで宮下さんがルリをぎゅっとしてる神代に「でた」と言っていますがこれは何に対する「でた」なんでしょうか。神代の誰にでも抱きつく癖がありそれが出たのか、それとも日頃からルリに対して好意を曝け出していたのでそれが「でた」のか。神代とルリが友達になったのは今日ですが、神代は一話でもやけに馴れ馴れしいことをしていたのでツノが生える前から彼女がルリをチェックしていた可能性はあります。

 そして帰宅するルリを迎える海ママです。海にとって娘のこの笑顔はとても嬉しいものでしょう。ルリが学校で迫害されるかもと怖がって一週間学校に行けなかったのと同じように、海も娘が学校で虐められるかもしれない。またルリが「学校に行きたくない」というかもしれないと不安で仕方なかったはずです。ユカはともかく学校には色んな人がいますからツノや火で娘が化け物呼ばわりでもされたらと思うと落ち着いてはいられません。けれどルリはユカ以外の友達と寄り道して、笑って学校から帰ってきました。海の「(学校は)嫌だった?」に対してルリは「嫌じゃない」と返答します。この答えに海もまた不安が溶けて、嬉しすぎて自分が食べるのも忘れてルリにたこ焼きを差し出しています。孫に大量にメロンを食べさせてるルリの祖母の血も感じますね。

 学校での心配もなくなりリラックスした海は娘と一緒にマリオのゲームに興じます。髪を後ろに結ぶルリもそうですけど、お母さんも表情豊かですごい可愛いです。このシーンは母娘の血の繋がりを感じます。

 どんなことがあっても親が味方でいてくれるというのは子供にとって安心できるものでしょうね。今後起こりうる身体の変化に対しての海の「大丈夫何とかなるよ」という言葉にもルリは不安そうではありますが素直に「うん」と言います。そしてそのお返しにルリは「どれだけドラゴンになっても学校に行き続けられたらいいな」といい逆に海を安心させます。五話の締めの「行ってらっしゃい」「行ってきます」の何気ない挨拶も、ドラゴン娘にとっては特別な意味をもち始めます。いつまでもこの会話が続けられることを願ってルリは笑顔で玄関を踏み出していきます。


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