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男4人が話す、2010年代の日本の音楽について Part1

おはようございます、こんにちは、こんばんわ、くさのです。

前回にやった話しの続きで・・・くさの、ノイむら、ゴリ、まっつの4人で2010年代の日本の音楽についてを、非常に雑記めいた感じで話してみました。

それぞれに見ている部分が異なる4人で、日本の音楽を広く見通してみて、どういったことが同時多発的に起きたかをひとまとめにしておきたかった。それが第一の目的です。とはいえ、あいつもあいつもあいつもあいつも、この話のなかに出てこなかったりします・・・!!!ごめんなさい!!!

僕ら4人は、たしかにメディアで書いてはいるものの、その筋の評論家だと言われたり、ましてや自称するには力不足な面もあります。

飲み会トークよりはしっかりと、でも真面目な大学講義よりもサバけた感じに、前回と同じムードで話しました。その時間、2日がかりで10時間オーヴァーです。

もう一度言いますが、飲み会トークよりかはしっかりとしつつ、でも真面目な大学講義よりもサバけた感じです。

とはいえ、ちょっと雑に話してしまったな・・・というのは感じています。気分を害されるかたがいらっしゃるかもしれません。その点、さきにお詫びしておきます。申し訳ないです。

では、さっそく始めてみましょう。

Part1で話すのは、CDとストリーミングについて、フェスについて、この2つです。

あ、Part2は・・・みんなが忘れた頃にでもあげようと思います・・・!w

はじめに

草野 前回はありがとうございました!

ノイ村 いえいえ

ゴリ ありがとうございました。

草野 今回は2010年代の日本国内の話について・・・ということなんですが、そのために4人にこういうのがありましたよね!というトピックを挙げて貰いました。重複している部分がありますが、こういうのです!

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まっつ おおーー!まとまってみるとすごいですね。

ノイ村 こうやってザっと見てみると、いままでブロガーさんや音楽記事などで散々話されてきたり、ネタにされてきたことが総ざらいになってますよね。

草野 本当にね(笑)あと今回4人でトピックを挙げていく中で、まっつが参加していた『サラバ!平成狂想曲』が物凄く有用ということに気付かされて、書店に買いにいったら、そもそも書店が開いてない!!という事実!!(笑)(当時2020年5月5日です)

まっつ 年ごとの主なトピックもレヴューと併せて掲載している『サラバ!平成狂想曲』一家に一冊よろしくお願いします・・・!


ノイ村 宣伝もちゃんと入るんですね(笑)

草野 ダイレクトマーケティングだ・・・(笑)

ゴリ これ、まともに全部話そうとすると、『文化系トークラジオ Life』ばりに4時間以上話すことになるよね(笑)

ノイ村 そうですよね。例えばまっつさんが一つ目に書いた、「3.11以降の音楽シーンやアルバムについて」という部分でも、僕ら4時間くらい話せそうじゃないですか?

草野 どうだろう・・・?実はオレ、これがあがった時に全然フィックスしてなかったんだよ。

まっつ そうなんですか?

草野 だってさ、2010年代のうち、2011年3月11日以前以後っていうのは、ビフォーアフターでいえば、アフター9年のほうが圧倒的に長いわけじゃない?もはや「3.11アフター」の感覚のほうが、平易なものとして受け取られているわけで。むしろまっつがここで挙げたからこそ、2010年代のトピックのほかに、その直前だった2007年から2009年の話もちょっとあげてもらったの。そうじゃないとうまく話せないだろうと思ってさ。

ゴリ あーなるほどね。

ノイ村 歴史があがってきましたよね。

草野 そうそう。もちろん当時、音楽シーンでいろんなことが起こって、シーンの内外で助け合いながらやれていた、加えて色々と文句や批判もあがった・・・というの触れるべきだろう。でもさ、じゃあ3.11以降の音楽シーンが、その後EDMによるヒットしていったのとどう結びつくのよ?っていう・・・

ノイ村 意外と潜在的にはパーティ需要が高まって、あの大ブレイクにつながったんですよ。AviciiやZeddがデビューしてきて、そのタイミングとピッタリ符号したんです。

ゴリ マジかよ、無理やりすぎでしょ!!

草野 ちょっと頷きかけたけど、それダメだよ、ダメダメ・・・(笑)

ノイ村 すいません。いまのはホント、とんでもないこじつけです(笑)

草野 むちゃくちゃごじつけだよね(笑)

ノイ村 日本でのEDMのブレイクは2015年あたりですからね

草野 いったんトピックのほうに目を向けると、4人中3人がフェスについて言及していて、ノイ村くんはクリエイティヴマン主催フェスに行きまくっているので「あえてそんなこと言わんでもいいっしょ?」感すらあるという・・・

ノイ村 いやいや違くて(笑)3人ともあげてるから挙げなくていいかな?と(笑)ハイスタ・エルレ・ナンバガが再結成ライブをしている、90年代の伝説のバンドが再結成しているという部分があるじゃないですか?3組ともフェスには何かしら絡んでますよね。特にエルレは、今のフェス・シーンがなければ復活していなかったんじゃないか?とすら思ってます。

草野 ハイスタはフェスを主催しているし、ナンバガは自身らにとっても思い出深いライジングサンロックフェスティバルで復活だからね。フェスとはちょっと縁遠いけども、LUNA SEAも復活しているし、イエモンも復活しているわけだしね。

ノイ村 復活劇が本当にすごかったですね。

ヒットチャートとCD文化の崩壊→→→
ストリーミング時代のいま

草野 ノイくんがあげてるやつで、「オリコンチャート・マスとしてのCD文化の崩壊」っていうのがあって、2007年から2009年のトピックもあげてもらったついでに、当時のCDチャートやランキングをみなおしてみて、改めて思うのは、『オリコンチャートがランキングにならなくなり始める』のがこの3年だったんだなっていうことね。

ノイ村 チャートについては、10年代の前半はAKBと嵐しかいなかったといっても過言ではないですよ。

草野 EXILE関係やK-POPも多少あったけども、圧倒的だったんだなと、いま振り返ってみるとほんと思う

まっつ うんうん

草野 前回もちょこっと話したけども、J-POPはビジネスワードであるし、大衆が楽しめる文化でもあったわけで。ノイ村くんが書いてる部分って、ほぼニアイコールなわけじゃない?

ノイ村 そうですね。

草野 それはいわゆる「大衆文化」と言っても大きく差し支えはないと思うんだけど、それが一部地域の方々によるランキングハックによって・・・この辺は柴那典さんが著書とか記事中で何度か指摘している部分にはなるけど、分からないものになってしまった、と

ノイ村 それによって起こったのが、ヒットソングといえるもの、国民的といえる楽曲が消えたということだと思うんですよ。

ゴリ この時期の音楽が、誰にでも歌えるものではなくなってしまったということだよね。

まっつ しかも2010年代になってもそうでしたし、坂道グループがどんどん増えたこともあって、よりそうなってしまったというね。「みんなのうた」が無くなった、という感じですね。

草野 2010年代の初期でも同じだったと思うんだよ。しかもヘタしたら今でも続いてるんじゃね?というね

ノイ村 僕も、2010年代という括りで、影響範囲がデカかったし、根深いものってなんだろうな?と思ったときに、これがパっと思いついたんですよ。

草野 でもそうだと思う、音楽シーンが何だかよくわからないことになってしまった・・・という部分ね。

ノイ村 ヒット曲の定義が変わった、このへんは柴那典さんと同じ意見ですね、うん!(笑)

ノイ村 あと付け足すと、2010年代後半はMusic FMがどんどん大きくなっていった時代だと思うんですよ。

草野 ストリーミングではなく、Music FMなんだ?

ノイ村 そうですね

ゴリ オレ、使ったことないんですよね。

草野 オレもそうかな。いっちゃあれだけど、海賊サイト的な部分が大きいから、触れないようにしようかなと

まっつ 会社の同期に何人かいますね、どんなもんだろうか?と思って触ったことはありますけど、ガッツリ使ったことはないですね・・・

ノイ村 なるほどです。これは僕の周りの話ですが、MusicFMとかを使う人にとっては、「音楽は無料のもの」なんですよね。スマートフォンやiPhoneが流行るのって、2010年代前半ですよね。

ゴリ 2011年とか2012年とかじゃないかな。

ノイ村 パンパンに音楽を入れて、容量が全然足らねぇよーーみたいな時期がずっとあったじゃないですか、iPodの頃からそうですけども。この辺は草野さんはよく知ってるんじゃないかなと思います

草野 (深く頷く)

ノイ村 それが、SpotifyやApple Musicが出てきたのもそうですけど、youtubeからぶっこ抜いてきたような音源を聞かせるようなアプリがどんどん出てきたし、ランキングでもかなり上位を占めるようになった。CDは買わないし、無料で聴くものだっていう認識が広まったんだと思いますよ、特に若い世代はそうじゃないかなと

ゴリ これは2010年代だけじゃなく、00年代からずーっとあったと思うよ。昔Winnyとかのファイル共有ソフトが流行って、僕の周りのひとが使っていたということがあったんだけども、形が変わって今に至ってるようにも思えるけどな。

ノイ村 ぼくは工業系の高校にいて、パソコンに明るいひとが周りに沢山いたんですけども、そういったファイル共有ソフトやツールを使って、無料でゲットするひとが沢山いたのは知ってます。でもそういう人達は、まず「パソコンをよく知っている人たち」だったと思うんですよ。なので、使っている人たちのレイヤーが、P2Pのようなファイル共有ソフトを使っていた人らと、Music FMを使う人らで、ぜんぜん違うようにも思いますね。

草野 端的にいうと、陰キャやオタクの人らと、陽キャでイケイケな人らで、別々の話じゃないか?っていうことよね

ゴリ グラデーションとして、一般化したっていうことよね。P2Pがあって、スマホが流行ったタイミングで、そういったグレーな部分を凝縮したアプリが『合法ですよ』って感じで出てきてしまい、みんながまともにうけとってしまうと。

ノイ村 はは(笑)うんうん、そうですそうです。もはや使う人にとって、ダメなんだ!という意識はかなり薄い、結局CDは買いたいひとが買うものになってしまった、と

草野 今の話にちょっと肉付けして話をすると、youtubeとかニコ動のサイトを開きっぱなしにして、イヤホン直差しにして、音楽を聴いたり、もっと言うと、全然別の違法サイトでアニメもバラエティ番組も見ている、というような状況って2010年代の中頃まで普通にあったわけだよね。この表の右のほうに、youtubeが日本語対応したのが2007年っていうのがあるし、2007年というとニコニコ動画が一気にブレイクしていくタイミングでもあったわけじゃない?

まっつ はいはい、そうですそうです。

草野 ゲームでいうとマジコンの話とかもあったし、漫画でいうと漫画村問題があったわけだ。話の尺度をちょっと長く取ってみると、『音楽や動画などのエンタメ含めて、コンテンツを無料でせしめる』状況があって、それがスマホアプリなどのサービスによって一般化した。しかも10年以上前からずっと続いていて、世代的にそれが当たり前になった人たちがいる、と。

3人 うんうん

なぜここまで話題に? 「漫画村問題」を改めて整理する (1/3) - ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1805/02/news026.html
マジコン - ニコ百 https://dic.nicovideo.jp/id/684001

草野 ここで音楽の話題に戻して、CD文化の崩壊とかも加味すると、CDの売上が代弁していたり、後ろ盾にしていた大衆文化や大衆心理みたいなのがまったくわからなくなった。ここに付随してしまったのが、「個々人が好きなものを追求すればいいんだよ」というような論説、2010年代初期からそういったものが出始めていたのは覚えてるな。マイナスなワードでいうと「蛸壺化」とか言われた感じはあったよね。「個々人が閉じていくなかで、どうやって横つなぎにしていくべきか?」という目論見の話が様々にあったのが、2010年代の最初のころって、音楽業界の人だけじゃなく、もっと多くの人らがそういった話をしていたような感じだった覚えがあるかな・・・。
2016年17年あたりになると、ストリーミングサイトが日本にも知られだして、ようやくオリコンチャート以外で、みんなの意見に合ったヒットチャートができるようになったしね。世界の様々な国のチャートが見れるようになったから、何が流行ってるか?とかはすぐに分かるようになった、と。

ノイ村 あと、Billboard Japan Hot 100が日本でどんどん影響度を増したのも大きいですよね。2016年12月あたりから、ストリーミングサイトの再生回数が加味されるようになって、CDセールス、ストリーミング再生数、デジタル・ダウンロード数、動画再生数とか全てをひっくるめた総合チャートですし。

草野 そうね。SpotifyやApple Musicは、完全に無料ではなく、月額1000円の会費を払うというハードルはあるけども、全然ハードルは低く思えるよね。torrentとか使ってタダでせしめようとするより、ビジネス的にも自分の身としてもホワイトだし?(笑)

まっつ そうですね(笑)

草野 ここまで話をしておいて、ちょっと最初の話に戻ると、秋元さんが育ててきた坂道グループ、嵐を筆頭にしていたジャニーズ、EXILEを中心にしたLDH、彼らがランキングをずーーーーーっといたことで、ランキングがハッキングされていて何が何だか分からない、というような話をさっきした。けども、2016年から2020年で新しく出てきたチャートを独占していたのは、米津玄師、星野源、DAOKO、そしてofficial髭男dismっていうね。結局メンツが変わっただけで、ハックは変わらなかった!・・・という意見も飛んでたりする。これはどう思う?

ノイ村 ぼくはその点は見方次第だよなと思っていて、ちょっとヘタなこと言いたくはないですけど、当時は曲の需要というよりも、CDに付属する特典が注目されて、CDが売れたわけじゃないですか。でもofficial髭男dismを含めた方々というのは、CDが売れてるというよりも、SpotifyやApple Musicなどで「曲を聞かれていることでチャートで上位にいる」という状態なので、性質が少し違うと思えるんです。

まっつ たしかにそうですね。

ノイ村 注目すべきなのは、さっき蛸壺化という言葉もありましたけど、実はそれは違くて、みんなが「何を聴いたらわかんねぇな」となったとき、ヒットチャートを上から順番に聴いたり、人気曲をあつめたプレイリストを聴いた、ということなんだと思うんです。これがどうなっていったかというと、人気な曲はさらに人気になる、チャート上位の曲がずーーーっとチャートの上位に居続ける、という状況になったと。

草野 King Gnuもちょっと近しいところはあるよね。

まっつ あいみょんもそうですよね、ずっと上位にいるという。

ノイ村 これは世界のチャートでもそうで、例えばある時期までの、いつまで「Shape of you」は売れてるの?問題が発生していたのに近いんですよ(笑)

ゴリ Drakeとかもそうだよね。常に名前がある状態だし

草野 J-POPが分からなくなった!!音楽のヒット曲がわからなくなった!!という2010年代前半の状況に比べると、チャートがハッキリとしている分、なにがウケていたり、注目を集めているのかがわかりやすくなったよね。

ノイ村 そうです。なので、official髭男dismがチャートを独占している状況に、あまりネガティブな気持ちはないです。

草野 オレも全然ないね。むしろ、もしかしたらヒットチャートってそう簡単に変わっていくものではなかったのかもな、なんて思っちゃうよね。視聴方法によって様変わりする部分はあると思うけどもさ。

ノイ村 まぁ、若手の方々やインディの人らからしたら、こんなに厄介な状況はないよなと思えますけどね・・・

草野 まとめるとさ、2011年3月11日直後は、日本の社会は不安感がずっとあったんだけども、J-POPのチャートは相変わらずハッキングされたままだった。音楽は世相を反映したり、代弁したりするという部分があるし、J-POPにそういった部分を求めようとみても、ぜんぜん分からない状況にあった。デカイことをいうと、国民の心理とJ-POPのヒットチャートが反映してなくて、剥離した状況にあった。だからこそヒットチャートへのネガティブな意見が大きかった

それが2010年代後半になると、信頼できるチャートが出来上がって、とても見やすくスッキリとした状況に変わっていったと思うのよ。一体感がほしいとか、きままに音楽を楽しみたい、そういった多数層をちゃんとフックアップする・・・そういう話ね。

ノイ村 こうしてみると、いろんなレイヤーが絡まっていたんだなと思えますね・・・

音楽フェスについて

草野 そうした不安感のある状況が、「わかりやすいものを求める」心性を呼んだ。ヒットチャートへの文句もそうじゃないかと思うんだけども、フェスでもそういった面が強くなったともいえるよね。一体感がほしいとか、きままに楽しめる音楽を楽しみたいとか。

ゴリ まっつくんがあげてる「フェスシーンにおける四つ打ちロックの席巻」はまさにそれだよね。

ノイ村 KANA-BOONのブレイクがまさに2013年ごろですしね。

草野 夜の本気ダンスとか感覚ピエロとかね。ゴリさんが「ウケをとろうとするバンドが増えた・関西ゼロ年代の誤配」って書いてるけど、オレほんとそのとおりだなと思うんだよ。KANA-BOON周りもそうだし、兵庫にいくとFear, and Loathing in Las Vegasがいるじゃない?同じ兵庫には岡崎体育もいるし、とにかく才能に溢れた人らがむちゃくちゃいる

まっつ いいですねほんと

草野 さっきまでの話の筋から彼らを見てみると、とても良いだと思うのよ。

ノイ村 その辺、ゴリさんは現場で見ててどうでした?

ゴリ 大阪のバンドシーンの話になるけども、関西ゼロ世代といわれるバンドがいたんですよ。あふりらんぽ、ミドリ、オシリペンペンズとか

草野 ズイノシン(ボソッ

ゴリ そうそう。それで彼らが活動してたライブハウスの1つが難波のベアーズという箱で。それでそのベアーズの影響をモロにうけたバンドが、モーモールルギャバンだったの。この辺はメンバーがインタビューでハッキリと語ってたりするのよ。で、そんな彼らが登場して以降、過激でウケを狙おうとするバンドが多いなと思ったの。さっき挙がらなかったけど、キュウソネコカミ、ヤバイTシャツ屋さんってそうじゃない?

草野 ああーーたしかにそうかもしれない!

ゴリ もちろんしっかりと演奏するのは大前提にして、ライブのパフォーマンスでウケることをするバンドが多いとは思って。例えばフレデリック、KANA-BOOMや夜の本気ダンスとか感覚ピエロとおなじ4つ打ちロックバンドとして出てきたけども、PVだと踊ってるものが多いじゃない?

ノイ村 ライブハウスでやるときだって、お客とコミュニケーションするのが当たり前でしょうしね。

ゴリ これは関西人の気質がゆえに、そういう風に見えてしまうという部分かもしれないね。自分の友達がインディーズ時代のキュウソは東京ではお客さんが静かだし、凄いなという眼差しでみてくるけど、関西だと「演奏やめてまえ(笑)」と愛情のある野次がガンガン飛んでた、と言ってたんだ。キュウソが特殊な感じというのはあるかもだけど、お客さんとのコミュニケーションもふくめて、過激さを求めるところは関西には2010年代前半にはあったと思うんだ。

草野 ぼくは00年代から今まで、ずっと東京近辺の・・・いやまぁ下北沢界隈のロックバンドばかりおっかけていたところがあるから、そっちのほうを語るとすると、まぁどうしても「シリアスさ」を売りにしたバンドが多いよね。自分の心象風景を切々と歌ったり、音楽をどう表現しようか??というところに関して、とにかく真面目なムードはとても感じる。

ノイ村 ART-SCHOOL、Syrup16g、THE BACK HORNは3大鬱ロックって言われてましたしね。

まっつ いやぁ、湿ってるなぁーー!

ゴリ ほんとそうね(笑)

ノイ村 湿ってるって(笑)

草野 いやでも、ほんと「生きるか、死ぬか」みたいなシリアスな歌詞を歌ったバンドがむちゃくちゃウケていたわけでさ。そこに加えて、音楽の演奏もしっかりやるんだ!というひたむきさも加わってくる。

これまで4人話しのなかでも何度か話しているけども、00年代初頭の東京のロックシーンは、そういった「生きるか、死ぬか」みたいなシリアスな歌詞を歌ったギターロックバンド、残響レコードを中心にした轟音ポストロックが流行った、the band apartなどのジャムロックバンドもかなりウケていたし、もちろんハードコア化していったパンクバンドらがいたわけよ。

その結果、「むちゃくちゃな曲展開があったり、メタルだったりパンクだったり、逆にむちゃくちゃおしゃれなサウンドになったり、いろいろな音の振れ幅があって、シリアスな歌詞を歌うバンド」という独特なロックバンドが00年代中頃から後半にかけて出てきて、彼らがロキノンジャパンにフックアップされて、全国に知られるようになって、全国共通でそういったバンドが出てくるわけじゃない?

まっつ 9mm Parabellum Bullet、マキシマム・ザ・ホルモン、凛として時雨、あとRADWIMPS・・・?

草野 そう、そのとおり(笑)まぁ話のオチをいうと、シリアスな東京のロックバンドと、観客に刺さるウケを模索する関西のバンドと、2つ出てくるようになった状況、それが2010年代初頭の邦楽ロックフェスだったり、ロックシーンだったともいえるよね。そういう状況にあって、KANA-BOONが『DOPPEL』でメジャーデビューしたときも、結構なパッシングもされたわけですよ・・・

まっつ ドラムがずっと同じ、全部4つ打ちじゃねぇか!とか

草野 なんなんだよあれ!ってね

ノイ村 あのファーストはヤバイですよね。

草野 BPMの振り幅も大きくなければ、ドラムがずっと4つ打ちしかねぇぞ!ってね(笑)

ノイ村 でもオレ、すげぇ好きですね。

草野 オレも好きなんだよ

ノイ村 面白いのは、KANA-BOONがリスペクトしているのはASIAN KUNG-FU GENERATIONで、あの4つ打ちの源流は「君という花」であるという部分ですよね。

ゴリ そうそう。

ノイ村 あとウケを狙う・・・という部分で外せないというと、THE Telephonesじゃないですかね

草野 2007年から2009年あたりの彼らってさ、どうしても色物感なかった?

まっつ それは思いました。

草野 『JAPAN』っていう一番最初に出したアルバムは、当時のUKロックシーンでいうとポストパンクとかエレクトロクラッシュのような部分、Arctic MonkeysやKlaxonsといったバンドとほぼほぼ同期的にやっていた。音楽的には非常に真面目なバンド、なんだけども、歌ってることはほぼほぼギャグ!!っていうね!(笑)

ゴリ モンキーディスコーーー!って歌っていたりね。そんな彼らがモロにやばい状況になったのは、フェスでむちゃくちゃ動員があるのに、ライブハウスでは全然入らない・・・という状況になったときじゃない?

ノイ村 The Telephonesはぼくホント好きなバンドなんです。ARABAKI ROCK FEST.07が僕にとって初めてのフェスだったんですけども、一番小さいテントのステージをバカみたいに盛り上げていたのをみて、「すごいバンドだ!」って思っていたんです。そこからフェスのステージがどんどん大きくなっていって、サマソニ2011のときは2万人近く入るマウンテンステージを完璧に埋めていて、Friendly FriesやTwo Door Cinema Clubにも負けない、あるいはそれ以上に埋めてたんです

草野 ああー!あったね、順番は先だったよね。

ノイ村 でも、そのあとにあったさいたまスーパーアリーナでのライブは、全然埋まらなかった、ということがあったんですよね

ゴリ あったねーー・・・

草野 客席がまったく埋まってなくて、アリーナ部分だけしか入らなかったんだよね。2階席3階席を暗幕で埋めていたって話ね。

まっつ 「いつかはここを全部埋めます!」ってMCしたやつですよね

ノイ村 そうです。ここらへんでフェスシーンというものが色濃く出てきて、フェスでの動員が、ライブツアーなどの単独公演に影響しないものになっていった、というね。

ゴリ これ、Doping Pandaにも同じことが言えるんだけども、みんな彼らのことは・・・

3人 好きです(ほぼ同時)

ゴリ 良かった(笑)彼らが2006年かの時に、ROCK IN JAPAN FESTIVALのLake Stageに出演した時、当時の3日間最多動員記録を塗り替えるくらいに注目を集めていたんだけども、Zeppツアーを回ったら、ぜんぜんお客さんが集まらなかった、みたいな話もあったりするから、00年代中頃からすでにそういう予兆はあったんだろうなと思う。

草野 2007、8、9年ですでに予兆があったんだから、2010年代ならそらそうなるわなっていう。

ノイ村 しかも後半になると、それすらも落ち着きを見せ始めるというね。そういう部分がハッキリ出てきちゃったので、近年のRIJFでメインステージに出てくるのは、バンドだけではなく、半分くらいはJ-POPとして戦ってきたかたばかりになってしまうというね。

まっつ なるほどー!

草野 こわいね・・・

ゴリ これはさ、ダイブができなくなってしまったというのがデカいんだと思うんだよ。RIJFの2008年にはBRAHMANが大トリを務めて、「好きなようにやれよ」とTOWSIH-LOWがガンガンに煽っていたけども、その年のCOUNTDOWN JAPANでダイブに関連した事故でお客さんが大怪我をしてしまったことで、ダイブを一切禁止になったんだよね。それでJ-POPやアイドルのアクトが一気に増えるんだよ。

(↑今回、この大怪我の件を調べたときに出てきたトップ記事を2つ掲載します。一つはBAND-MAID関係のブログさん、もう一つはRSRフェス2008のウェブログです。いまにまで至るモッシュ&ダイブに絡まる問題はもう10年以上続いているんだなと改めて再認識)

ノイ村 ゴリさんが書いてる「浄化されていく日本のフェス」の部分に通じますよね

ゴリ そうそう。で、アイドルのアクトがどんどん増えてくると、今度はサイリュウムが邪魔、ゴミが多くなる、ということもあって、今度はサイリュウムが禁止になったりもした。フジロックに目をむけると、今年はヘリノックスを禁止にしてしまった。フェスのなかで、楽しめる要素を少しずつ削りながら、安全安心なフィールドを作っていくのはあったよね。

ノイ村 これは全然感覚的は話なんですけど、00年代初期のフェスって、要はライブハウスの延長線上だったと思うんですよ。ライブハウスで見れるバンドたちが一堂に会する場所としてロックフェスがあったから、集まるお客さんはライブハウスで育ってきた精鋭たちになる、どういうノリになるのかも感覚的にキャッチできる人たちですよね。でも、そういった人たちじゃない、いわば普通のお客さんたちが来る場所になる、と

まっつ ライブハウスの人たちにとっては「ライブ中にダイブは起こるし、時にはケガするときだってある」というのは承知のところだけども、普通のお客さんたちには、そういった部分は伝わってないよね、というところですよね。

ノイ村 そうそう。そういった普通のお客さんが増えれば増えるほど、安心安全の場所にどんどん向かっていくし・・・いやそれはとても大事なことなんですけども、同時に「ライブハウスで育ってきた精鋭たち」が積み重ねてきた文脈やムードが欠落したり、薄まったりする・・・というのをゴリさんが書いてますね

ゴリ そういう一般化の結晶が、SHISHAMOの「君と夏フェス」には現れてるわけじゃない?個人的にはこれを聴いた時に物凄くショックをうけたのよ、「オレの知ってる夏フェスじゃない・・・!」って(笑)

ノイ村 PVを撮ったのはVIVA LA ROCKでしたよね

まっつ そうですね。

草野 あまりにもドデカすぎる規模になったRIJFだけどさ、もうひたちなかにこだわらないで、全国津々浦々でやればいいじゃん?とすら思うんだよ。野外会場2万人くらい入るところで、ポン!ポン!とやって、最後はひたちなかでドォーーン!!ってやってみるとか!

ノイ村 まさかのジャパンサーキットの再開じゃないですか、っていうかそれULTRA Music Fesと同じとも言いますよね?(笑)

草野 ああ、バレた?(笑)イメージではLollapaloozaみたいに、順々に各地でやっていくのをイメージしてた。ご当地出身バンドをフックアップしながら、有名アクトでドーーンとやる、みたいな。

まっつ 有名アクトでいうと、2010年代って色々出ましたよね。

草野 B'zと矢沢永吉がすぐパッと思いつくわ。正直本誌ではあまり触れてない2組だからね。

ゴリ あれ?えいちゃんは何回か出てなかったっけ・・・2006、09、14年か。

ノイ村 たぶんそれ、3回とも意味合いが違いますよね。

ゴリ 2009年は覚えてるんだよ。発表が一番最後だったんだよね。3日目GRASS STAGEのトップバッター、それを最後に発表するという。

ノイ村 2006年の初出場は、レジェンド枠ですね

草野 レジェンド枠だね。

ノイ村 サマソニにQueenが出るのと同じ考えですね!

(全員大笑い)

草野 ミュージカルがこの年に終わっちゃったり、Queen + Adam Lambertで北米ツアーをしていたっていう部分が関係しているとは思うけど、レジェンド枠だわね(笑)

ノイ村 まぁいまのは冗談めかして言っちゃいました(笑)ぼくは2014年に出たときのことを覚えているんですけども、8月9日に出るところを、8月7日に発表していて、サプライズ発表になっていた。しかもチケットはほぼ完売していて、エーちゃんファンがあまりいなかったという部分があった。出るのは、トリを務めるASIAN KUNG-FU GENERATIONの一個前で、当然ながらアジカンファンが多くいる中でライブをしたわけで。自分のプロモーション以外の何者でもないといえますよね。

草野 日本のロックはどういうものか?本流やルーツを生きてきたひとのアクトを、00年代以降の邦楽ロックを作ってきたアジカンの前で披露させるというね。レ加えてさっきまでの話とつなげると、ライブハウスキッズに一般のお客さんが加わってきて、客層がどんどんと変容していく中にあって、まずRIJ側がその状況をもちろん熟知していて、それを矢沢さんサイドにハッキリと見せることができて、矢沢さんサイドもオッケーを出せるくらいに、ハッキリとした変化があったということだよね。だからこそ、B'zだって呼べるわけだしね。

ノイ村 これが、若いお客さんだけしか集まっていない・・・というと、そう簡単にオッケーにならないのでは?とも思えますしね。

まっつ これはRIJFに限った話ではないですけど、こうして20年近くやってると、家族連れの2世代が本当に多くなってきてるんですよね。ダイブ禁止、サイリュウム禁止、ヘノリックス禁止、安全安心に向かっていくというこの流れは、家族連れが多く来るようになっているという部分も大きく有ると思いますよ。音楽フェスは純粋な音楽ファン、だけの場所にはならなくなった。それに親子連れじゃなくても、2世代3世代にまたがってきた音楽ファンの需要を受け止めるには、ホスピタリティの重要性は高まるんだと思いますよ。

草野 自分で書いたことだけども、出演者側にも、観客側にも、様々な需要と供給の流れがあって、複雑化しすぎて到底まかなえなくなってきたから、全国各地でいろいろな形の音楽フェスが出てくるようになったってのはあると思う。

ノイ村 全然話し変わっちゃいますけど、まっつさんのフェスの思い出ってあります?

まっつ ええーーっと、ぼくはそこまで多くフェスに行っているわけではないんですけど、初めて行ったフェスはCOUNTDOWN JAPAN12-13だったはずですね。その頃からホスピタリティがめちゃくちゃすごくて、リクライニングの椅子はたくさんあるし、飯はめっちゃ普通に食えるし、「フェスは過酷だぞ!」っていうのは何度となく聞かされてましたけど、僕は個人的にそう感じたことがないんですよ。

ノイ村 え、COUNTDOWN JAPANって椅子とかそういうのって結構置いてあるんですか?

まっつ 僕が行った時はかなりありましたよ。すごい快適でしたね

ゴリ 今でも同じじゃないかな?下手すりゃもっと良くなってるかも

ノイ村 同じ会場を使っているはずなのに、サマソニとCOUNTDOWN JAPANでぜんぜん違うんですね・・・サマソニは割と過酷っちゃ過酷ですよね

草野 それはほんとそう

ゴリ オレさ、東京のサマソニにも行ったことがあって、深夜帯にやってるソニックマニアに行った時に思ったんだけども、「床でこんなに寝てる人がいるフェス、初めて来たわ」ってホント思ったよ(笑)

草野 確かに。言われて振り返ってみるとそうだわ。サマソニ09のときに会場整理のバイトで行ったけども、その時にもそういう人いたし、あれ多分始まったころからずーっとそうなんじゃないかな?

ノイ村 あれはたぶん絶対減らないですよ(笑)

ゴリ いやほんと、会場内の後ろの方で山のように寝てるじゃない?びっくりしたもんオレ(笑)

草野 さっきまでのホスピタリティの話をしていてさ、フェスの最初期はライブハウスキッズや精鋭たちがーーーって話をしていたけども、そういったムードやノリが今でも続いてるのがサマソニじゃねぇのか?って思えてきたぞ。ユーザーフレンドリーじゃないよね?(笑)

ノイ村 絶対フレンドリーとは言えないですよ、そこに関しては(笑)最近のサマソニだと、そういったホスピタリティは金で買うっていうシステムになっているんですよね。去年ぼくは買わせてもらったんですよ

草野 で、ぼくは買わない側なのよ。去年ノイくんに会おうとして、「どこにいるのー?」って話をしていたら、VIP LOUNGEで椅子座って、ケータイ充電しながら飲み物飲んでるのよ。「うわぁ・・・いいなぁ・・・それいいなぁ・・・」って結構まともに感じちゃったもん(笑)

ノイ村 めっちゃ快適でしたよ。でもぼくはサマソニ2日間とミッドナイトソニックに行ったときがあって、2日目に入る直前で、客がいったん外に出されるんですよ。なので、会場の目の前にある階段で数時間寝て過ごしましたからね。

まっつ ・・・っへぇええ??

草野 あそこ!?

ゴリ マージか・・・

ノイ村 財布だけちゃんと抱えてね。でも僕以外にもそういう人いて、睡眠場所として確保して寝てるんですよ。階段を一個飛ばしにして、スペースを確保して寝てると。

(全員 大笑い)

ゴリ 簡易宿泊所じゃねぇんだぞ(笑)

草野 これ、タイミングが悪かったら、コミケの始発組で並ぶよりもきついよ。なんなら、深夜待機列よりぜんぜん厳しいと思う。だって真夏の朝5時から10時の間だよ?下手したら重病ものになるわけでさ

コミケの"徹夜組" いくら禁じてもなくならない理由「本当はいけないけど、来てしまった」【現地ルポ】 https://www.huffingtonpost.jp/2016/08/15/comike-tetsuyagumi_n_11522192.html
(たとえ話としてコミケの話をしましたが、コミックマーケットでの深夜待機は、公式から止めるように何度となくアナウンスされています。絶対にしないようにしましょう)

ノイ村 まぁその、こういう部分のホスピタリティは改善はしないだろうと思うんです。というかここまでくるとホスピタリティではなく、自己解決すべき問題の部分です、きっと改善を求めるのも変な話でもありますよ。もう一ついうと、それが許されるくらい、周りは安全な場所でもあるというわけで。

ゴリ ロキノンが関係するフェスは、ホスピタリティに関しては本当にしっかりしてると思うよ。ハードの面でも、ソフトの面でもね。関西でいうと、京都大作戦に行ったこともあるけども、ホスピタリティが良いか?と言われると、そんなに良いとは言いづらいぜ?それにRadioheadが出たときの大阪のサマソニ、バスが全く来ないので、そこにいたお客さん全員が終電を逃してしまい、タクシー代をクリエイティヴマンが支払う・・・なんてこともあったくらいだしね。

草野 あったなぁー!そんな話。

ノイ村 それはいずれするであろう、海外公演のときにしましょう・・・!

まっつ そうですね(笑)

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