男4人が話す、2010年代の日本の音楽について Part2
おはようございます、こんにちは、こんばんわ、くさのです。
くさの、ノイむら、ゴリ、まっつの4人で2010年代の日本の音楽についてを、非常に雑記めいた感じで話してみました。今回はPart2です
それぞれに見ている部分が異なる4人で、日本の音楽を広く見通してみて、どういったことが同時多発的に起きたかをひとまとめにしておきたかった。それが第一の目的です。とはいえ、あいつもあいつもあいつもあいつも、この話のなかに出てこなかったりします・・・!!!ごめんなさい!!!
今回の4人話、その時間、2日がかりで10時間オーヴァーで収録しています。飲み会トークよりかはしっかりとしつつ、真面目な大学講義よりもサバけた感じにはなってるかと思ってます。
とはいえ、ちょっと雑に話してしまったな・・・というのは感じています。気分を害されるかたがいらっしゃるかもしれません。その点、さきにお詫びしておきます。申し訳ないです。そしてこのPart2の後半から次回以降、徐々に徐々に本当にサバけて、ガッツリとした批判否定もでてきます。たぶん読む方はちょっと「ウオッ」って思える部分があるかも知れないです。
そういった部分は、まったく台本すらなく、共通するテーマをガッツリと設けたからこその、かなりキレッキレなエッジ部分に繋がってるんじゃないかと思います。
では、さっそく始めてみましょう。
今回のテーマは、日本のロック/バンドシーンとメジャー/インディについて。初音ミクとAI美空ひばりと2Pac、そしてニコ動を中心にしたクリエイターの続発・・・「まふまふさん」について、この3つです!
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ロックシーンからバンドシーンへの拡大。
「ロックだけがバンドではない」ということの影響度
草野 いますごく自然とロッキンオンジャパンにまつわる話があがったからしたいんだけども、ぶっちゃけ、ロッキンオンジャパン関係のフェスによく出演していると、そこに出ているバンドや出演者に人気がどんどん集中していく流れってのはあるわけで。そうなると顕在化してくるのは、「ロッキンオンジャパンによく出てくるバンドを好きかどうか?」という部分で、音楽好きの面では一つ境目がでてくるじゃない?
まっつ うんうん
ノイ村 間違いないですね。
草野 で、まぁ奇跡的にも、ここにいる4人はロッキンオンジャパンに出てくるようなバンドらは割と好きな側に入るじゃない?有名じゃなくても、出てきたばっかりのロックバンドでも好ましく感じたりできる、という部分で
まっつ 確かにありますね。
草野 逆に、そういったバンドは好きじゃない、という人もいる。そうではない方々は、例えばFISHMANS、ゆらゆら帝国、フリッパーズ・ギター、キリンジが好きだったりするわけだけども、00年代途中からはそういったところを引き継げるバンドがなかなか出てこなかった。そうなってくると「ロッキンオンジャパンを信じますか?信じませんか?好きですか?嫌いですか?」っていう問いかけが、「日本のロックを愛せるかどうか?」みたいな、むちゃくちゃヘタな問いかけにスライドしてしまっていた。なんか主語がデカすぎる話になってしまってるけど、ホントそこまでの状況になりかけたわけだ。
ノイ村 めちゃくちゃわかりますね。そこがあまりにも大きくなってしまったがゆえに、僕の中で「巷で言われてるライブハウスシーンって、いったいどこにあるんだ?」っていうふうに感じ始めたのが2010年代の後半だったりしますね。
草野 そう感じるひとも出てくるよね。10年代初頭だとスカート、昆虫キッズ、トリプルファイヤー、オワリカラ、太平洋不知火楽団、the moringsといったバンドもいたけども、その近くにいたandymoriがMUSICAに注目され、タナソーさんがフックアップしてSNOOZERにも出て、というところでヒーロー化した。いま思わずフックアップして・・・と言っちゃったけども、要はメディアから取材を受けたり、フェスに出たりしないと、バンドへの注目が集まらなくなった構造になってしまったと。
ノイ村 それ、THE NOVEMBERSを見ていて、すごく思います。
草野 彼らも最初はRIJF2008のときにWING TENTに出たんだよ、People In The Boxとか、LAST ALLIANCEとかと同じだったかな。いま思い出すと、あそこに出ていた人らはレーベルから今後の期待枠としてでていたバンドばかり出ていたんだよね。
草野 彼らと2007年や2008年くらいに音源を出してインディー/メジャーデビューしていて、THE NOVEMBERSとほぼ同期といえるのが、サカナクション、UNISON SQUARE GARDEN、OGRE YOU ASSHOLE、People In The Boxとかだったかな。前者2組は、いわずもがないまのロックシーンやロキノンシーンの顔なのは一致してるとして、THE NOVEMBERS・People In The Box・OGRE YOU ASSHOLEは、2010年代を通した活動で、オルタナティブ/インディ/DIYな活動を示した3組だよね。ロキノンが主導するロックシーンの見せ方からは外れてはいるけども、そうではないオルタナティブなシーンを彼らが作っていった部分は大いにある
まっつ それこそ、toeやLITEみたいなポストロックバンドも同じくね
草野 もちろん00年代でのピザ・オブ・デスレーベルなどのパンクバンド、それ以前から活動しているパンクバンドの方々も含めてね。そういった姿があったからこそ、ceroがビッグヒットして、その後にも活躍できるインディシーンが少しずつ広がってきた、GEZANなどはそういった影響を貰ってきたバンドだと思うんだよね。
ゴリ メジャーデビューをしようと思えばできる、でもメジャーデビューしないで、インディでやる。この姿勢がより多くのバンドに通じるようになったことが一つのトピックになったと
ノイ村 そうですね。だからこそ、「東京インディシーン・関西インディシーンが一気に花開く、SSWが多く登場し、シティポップリバイバルも起こる」ということになると。
草野 逆に言ってしまうと、ロッキンオンが主導しないバンドシーンがより拡大して、ヒットを飛ばすようになった、そこまで持っていったのが2010年代だったと。メジャーレーベルが育成枠としてインディバンドを育てる、いわば下位互換というか、サッカーでいうとアカデミー機関のような存在としてのインディという字義が日本独特ながらもあったんだけども、そことはまた違った意味での「インディーシーン」が一気に花開いたわけだ。
ゴリ とはいえ、インディっていう言葉も、海外でいうとかなりデカイ言葉になるんだよね。ユニバーサル ミュージック・グループ、ソニー・ミュージックエンターテインメント、ワーナー・ミュージック・グループ。ここの傘下に入ってなければ、ぜんぶインディという括りにはいるというね。
ノイ村 The War On Drugsを語る時につかう「インディ」という言葉が、日本でも生まれたという点ですよね。でも海外だと、メジャーに属しててもインディって使う時、ありません・・・?
草野 いやホントそれなんだよね。例えばSUB POPってインディレーベルでは超有名だけど、実はWarner Music Groupが49%くらいの株を持っているから、それはもはやメジャーレーベルじゃねぇの!?とかね(笑)
ノイ村 あとはArctic Monkeysはいまメジャー契約でしたっけ?みたいな話ですよね(笑)
ゴリ 同じことはさっき名前が上がったスカートにも言えますよね、契約はポニーキャニオンとメジャー契約、でもカクバリズムとも提携しているから、「あれ!!?どっち!!?」みたいなね。
草野 マネジメントはインディレーベル在籍なんだけども、CD販売経路はメジャーのものを使っていて・・・ああもうややこしい!!ってね(笑)そういった流れがあって、インディーズシーン、同時にライブ場所であるライブハウスシーンというものが見えてくるようになった。この潮流から、2014年頃からのシティポップリバイバルの流れが生まれたりするというね。これは関西でも同じようなことが起きたと思うけども。
ノイ村 ナードマグネットの話になりますね、これ
ゴリ ナードマグネットの話でもいいんだけども・・・。僕のみている部分でいうと、個々で発信をしていくということが重要になったと思うんだよね。僕と草野さんの師匠筋にあたる岡村詩野さんは、2010年代の途中から移り住んだんだよね。
(草野、拍手をする)
草野 2012年か2013年ごろだったけか?
ゴリ たしかその頃だったかな。その頃から、京都のライブハウスシーンを発信したり、メディアで当地のバンドをフックアップして書いたり、ということをしてきた人なんだよね。それで同じような動きがチラホラと出てきたことで、まずは関西のなかで色んなアーティストが注目されるようになってきた。それで中村佳穂や、ナードマグネットなど、メジャーやインディとか関係なく、いいものはいい!!で盛り上がることが増えたよね。
草野 この2010年代だと、「メジャーデビューがゴール!!インディはまだまだ!!」とか「メジャー契約が正しくて、インディー契約止まりじゃ失敗」みたいなアホみたいに雑な認識が一気に吹っ飛んだとも
ゴリ そもそも「メジャー契約してもヒットに恵まれないとお金が厳しい」なんて話をちょっとずつ漏れ聞こえているからね。逆に仕事をしながらインディでヒットしつづけることで自由に活動するバンドが最近増えたと思うんだ。
ノイ村 もはや「働きながらバンド活動をするよ!」っていうのが普通になった感じはありますよね。
草野 それもそうよね。2010年代の話に戻るけど、2013年14年以降だと、いわゆるギターロック系統・・・例えにあげちゃうと申し訳ないけども、ロキノン系ともいえるようなロックバンドではなく、「非」ロック系なバンドが盛り上がったというのが重要なんだよね。再三再四名前が上がってるけども、cero、Suchmosといったシティポップリバイバルと目されてるバンドらは、総じてそういった部分があるんだよね。ギターを主役にしない、ゴリッゴリにロックな側面は避ける、みたいな。
ノイ村 草野さんの指摘はとても分かるんですけど、ボク個人がふっと考えちゃうのは、そういった2極化の流れのなかで、やはり取り残されてしまうバンドやミュージシャンもまたいたよな、というところなんです。例えば、僕らが昔からよく聞いていて、中堅どころと目されているような・・・
まっつ THE BACK HORNだ!
ノイ村 そう!あと9mm Parabellum Bulletとか。むちゃくちゃいい作品を作ってるのに、彼らをまた新しくフックアップするという流れ、正直無かったと思うんですけども・・・
草野 僕ら4人はロッキンオンジャパンで育っては来たけども、ここまで読んでるひとならお察しの通り、どこかのタイミングで離れた人でもある。ぼくは2つのバンドとも最新作まで追っかけているけども、途中でファンでいるのをやめてしまった同世代の人は絶対いるし、口に出したくはないけども、「音楽を卒業した人たち」といえよう層があって、その人らをまた呼び戻せるくらいに熱い評価っていうのは、正直出会わなかったね。
ノイ村 それもありますし、それまでとは違った評価軸を持ち出して評価していくっていうのも、うまくされていなかったように思うんです。GLIM SPANKYとか・・・
草野 TRICERATOPSじゃない?
ノイ村 トライセラは本当にそう!ほんとそういった方々ですよね。
まっつ ふっと思ったのは、中村一義さんとか?
草野 100sが活動休止したあとは、池田貴史さんのレキシがあったりして、正直かなり影が薄くなったよね・・・
ノイ村 なにがきっかけだったかというと、去年『NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019』に行って、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDEN、STRAIGHTENERを見たんですよ。まぁ同窓会の部分があるんですよ、この3マンをみたいファンとなると
ゴリ 同窓会になるよね。
ノイ村 そのなかで、STRAIGHTENERが明らかに最新型なインディ・ミュージック寄りのことをやっていて、横浜アリーナの音響も完全に掌握していたし、一番スケールの大きな音を出しているのに、個人的にうおおお!って思ったんですけども、観客があまり反応しない。往年の曲がバンバン演奏されるのは分かっていたし、みんなで盛り上がるのはもちろんそこなんですけど、各バンドの最新の状況に関しては追えてない部分をすごく感じたんですよね。一番盛り上がったのは「Melodic Storm」で、そりゃぼくも踊りましたよ(笑)。でもそれでいいのかなという。
ゴリ ロッキンオンジャパン本誌でも難しいだろうね。
草野 オレさっきさ、ゴリさんが「Webの音楽メディアさんを筆頭に、SNSとかブロガーさんが色んなところで発信することで、評価基準がハッキリとわかるようになった」って言った時、かるーく首を捻ったじゃん?なんでかっていう理由がこれなんだよ。本当に評価基準が広まったなら、もっとより多くのひとに理解されていたり、評価されて然るべきバンドが評価されているはずでさ、こういった場面は少なくなるはずなんだよね。
ノイ村 ファンダムの問題じゃないですか?
草野 ある種ファンダムの問題だし、いろんな評価軸を外部から提供されない状況、アーティストの変化を受け付けないファン心理、あとは単純にミュージシャン側の力量によったりするからさ。それぞれのミュージシャンとそれぞれのファンたちで全く別の話になるから、本当に一概には言えないよ。ぶっちゃけ、雑誌であるところの「ロッキンオンジャパン」では、表立って批評したり、点数つけたりとかはしてないじゃん?フェスの「ロッキンオンジャパンフェス」で、このステージこの順番に選ばれたのは「こういう音です!!」っていう風に、音で観客を納得させるような方向性も、影響有るよなと思う。
ノイ村 雑誌のほうではそういった部分は触れることはないですけど、ロキノンジャパンとしての評価なのでは?
草野 それだと会社全体を使ったうえでの評価になってしまっているのであって、雑誌としての評価と、フェスとしての評価がゴッチャゴチャに混ざってしまっているとも言わない?
ノイ村 ああ、たしかにそうかもです。それはそうですね。
ゴリ それはそうやね。
まっつ それって、批評上での評価の高さと、現場の人気がリンクしていないってことですよね?
草野 そうそうそう。それがうまく作用して色々と活動したのがSuchmosになると思うんだよね。SNSやwebメディアで取り上げられるところから始まり、フェスに出たり、音楽雑誌やファッション雑誌の表紙を飾るようになると、彼らの音楽性とはつまり・・・みたいな文章がどんどん出ていったし、広まっていったと思う。そういったなかで、「ファンクやシティポップは一旦やめよう、疲れたし一旦休んでみよう、昔からやっていた60'sなブルースロックをやろう」というふうなマインドセットのもとで3rdアルバムが生まれた。多忙を極めたという部分もあるし、音楽的にそればかりを求められ続けたからこその反動でもあるじゃない?
まっつ そうですね。
草野 でもこういうストーリーがちゃんと築けてる方々もいれば、こういった変遷がファンに共有されていないバンドや、そもそも知られていないバンドもいるわけだ。
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『まふまふさん』って・・・だれ?
ノイ村 こういう、評価軸と現場人気との剥離でいうと、まふまふさんとかがほんとそうなんですよね。
草野 ああ、それはそうかもしれないね。あんなに人気なのに、ぜんぜん全国区な感じじゃないし、評価の仕方がみんな分からないから、傍観者になってしまっているというね。
ノイ村 東京ドームまでライブができるっていうのに、ニコニコ動画とyoutubeからの人気であそこまでいきましたからね
ゴリ・まっつ(・・・・????)
草野 ノイくん、待って、wait、ウェエエエエエエエエイト!
ノイ村 え、あ、はい
草野 2人が全く知らないって顔してる
ノイ村 おおぅ・・・まふまふさんは、もともとニコニコ動画で活躍していた歌い手さんで、いまだとゲーム実況とかやっていたりするんですけども、彼が東京ドームでライブをする予定になっていたんですよ。
草野 本当なら3月末にやれる予定だったんだけども、コロナウィルスにせいで中止になったと。ちなみにPerfumeとEXILEが2月26日に東京ドームと京セラドームでの公演を中止したこともあって、かなりインパクトがあったわけだけども、言ってしまえばそれと同じキャパでライブができるわけですよ、まふまふさんは
まっつ え・・・・知らないですね・・・・・
ゴリ (スマホで調べる)ツイッターのフォロワーが175万人で、youtubeのフォロワーが242万人って・・・むしろなんで知らないの?って聞かれるくらいじゃん。知らない俺らがおかしいのか・・・・????
ニコニコ動画・youtubeチャンネルでの最古の動画を引っ張ってきました。
ノイ村 いやいやそうじゃないそうじゃない!
草野 そりゃ、なに、大きく見ようよ?1億人いるんだよ?日本って。1億人いればさ?わけわかんない論理で首相を応援して、安倍晋z(以下自主規制
ノイ村 おい!!!おまえもやめろ!!!!!!!!!!!!!!
草野 あ、はい、ついカッとなってしまいました。
ノイ村 まぁそういうファンダムもあるんだよ!ってことですよ。
草野 これが面白いところで、東京ドームでライブができました!!って言ったらさ、Mステでドーーーンと特集組まれて、その日の主役で顔にすらなれるのに、そんなこと一度もないでしょ?
ノイ村 CMソングやドラマのタイアップっていうものは一切ないですからね。K-POPみたいにファッションとの兼ね合いがあってそういった層にウケたわけでもない。ニコニコ動画とyoutubeでの人気のみで、東京ドームでライブができたわけですよ
ゴリ いまパーーーッと調べて思ったんだけども、youtuberの人が東京ドームに出たっていう感じがしたね。
ノイ村 うーん、そう断言するかというと難しいですね・・・延長線上・・・っていう感じでしょうかね。
草野 そうだね。事業領域の一部としてそういったところもある、みたいなね。
ノイ村 ああ、そういえばネット発の音楽で言えばレペゼン地球がアリーナツアーをやる予定でしたね。
草野 まふまふさんは、昨年にメットライフドームをやっていたからね。いきなり一発目に東京ドームじゃないってことは言いたいわ(笑)
まっつ なるほど・・・・・すごいわ・・・・
草野 ネットカルチャーの音楽が軽視されている・・・っていう部分になるとは思うんだけども、たとえば「千本桜」が紅白で披露されたけども、千本桜の作曲者さんは登場せず、バンド演奏として和楽器バンドが出てきたわけだけども、彼らももともとはネットカルチャーの中から出てきたバンド。でもそこに作曲者はいないんですよ。
ゴリ ああ、たしかにそうだわ!
草野 これは自分で書いた所だけども、「ニコ動を中心に活躍していたクリエイターがドンドン生まれる」というところだよね。まふまふさんもそうだし、Supercellのryoさん、kzさん、じんさんかな。で、たぶんまふまふさんが最も近そうなのは、ハチこと米津玄師さんじゃないかなと。
追記:この4人話は5月にやりましたが、この数ヶ月でヨルシカ・YOASOBIが一気に評価されてますね。この2組もニコ動で活動していました。
ノイ村 たしかに。とても雑な例えになるかもですが。「ハチ」という名義を捨てず、メジャーレーベルでの活動や、そこから生まれる繋がりやコラボレートをあまりしないまま、ほぼほぼインディーな活動をしながら東京ドームへといったのが、まふまふさんと言ってもいいかもしれないです。もちろん、米津さんとまふまふさんの違いは、音楽に重きを置いているかとか、他の活動にどれだけ注力しているか?とか曲作ってるかとか、色々あるとは思いますが。
ゴリ なんやそれ、めっちゃくちゃドラマティックやん
草野 でもこれを、こと音楽の方面から捉えようとすると、少し遠いんだよね。
ノイ村 僕らが常に話をしている音楽談義って、いわゆる60年代からの音楽評論・音楽メディアの流れで話をしていたと思うんですけど、まふまふさんなどのニコ動クリエイターなどのネットカルチャーは完全に00年代以降に始まった価値観に基づいているので、とても難しいんですよね。
ゴリ ああー確かにそうかも。
草野 例えば、ぼくとかノイ村くんは・・・ここまでの話でお察しのように、ある程度はネットカルチャーのなかにいて、色んな動画やコンテンツを見て楽しんできた側なんだよね。これはさっきまでのロキノン関係の話にも言えるけど、確固としたファンダムがあり、そのなかである程度の共通認識と感覚があって、それが分かる人やマッチする人は中に入れて、わからないしマッチもしない人は中には入りづらい、という状況よね
ノイ村 そうですね。そういった断絶の状況がずっとあったのが2010年代でもあったので、僕は正直、これは無理なんじゃないのかな?と思ってしまってます。
ゴリ 音楽側の方々が、こういったところを書くというのってあまりないよね?
草野 たとえば下に見ているとか、そういう部分ではないと思うんだよ。もっと単純に、「わからない部分が多すぎるから書けない」んだと思う。
ノイ村 ぼくもそうだと思います。たとえばじんさんの「カゲロウプロジェクト」について論評を書くというのは、かなり難しいことなんですよ。歌詞やサウンドだけではなく、映像動画の一つ一つ、グッズの細部、コミカライズやアニメ作品にいたるまで、そういった背景やメタファーをある程度フックアップしながら書かないと、作品の大事なところを見逃してしまう可能性があるし、面白みをうまく捉えた記事にはならないわけで。これはまふまふさんについても同様です。全体を見ないといけない。
草野 ニコ動出身の作曲家さんなどは、総じて自分のことを「クリエイター」と自称することが多いんだけども、音楽、映像、言葉、演奏、歌、どれに特化して作品を作ったとしても、彼らのなかでは「作品を作った!」という認識が非常に大きく残るんですよ。音楽を作った!とか、歌を歌った!とか、映像を作った!以上の感覚があると
ノイ村 ですね。
まっつ なるほどーー!
ゴリ やっぱりもう、そこは独自の文化圏と言語感覚とかがあると思うし、どっちも分かっていて書けるって言うと・・・
(静かに自分を指差す草野)
ノイ村 あれは無視しましょう!(笑)
ゴリ でも、本当に一握りしかいないと思うわ。
ネットカルチャー・初音ミク・AI美空ひばりと2Pac
本人性はどこにある?
ノイ村 まっつさんが書いてる「J-POPを始めとした日本由来のモチーフがオリジンとなった証左としてのVaporwaveとFuture Funk」っていうのは、海外から見た日本文化のいち側面で、こういったニコ動を起点にした歌ってみた文化とか、初音ミクのブームとかも、そういった目線の中に入ってきますよね。草野さん、これはどちらが大きい存在なんでしょう?
草野 初音ミクは海外でのライブ公演も何度もやっているし、関連作品を通して彼女を知るひとも多い。ライブ会場の規模感では間違いなく初音ミクでしょうね。ライブではミクを「降臨」させるための映像システムをちゃんと持ち込んだ上でライブをやってる。ライブ機材・演出・テクノロジーが非常に面白かったから、コーチェラ・フェスティバルに今年呼ばれてたわけで、その意味でも非常に大きいでしょうよ。でもVaporwaveやFuture Funkはああいう独特のアート感を生んだというのが大きいし、あのサウンドスケープのフォロワーも多いからね
ノイ村 ポッと出で選ばれたとか、なんか巨額のお金が動いたとか、そういうわけではないんですよね。5年近くに渡って、ことあるごとに世界中でライブをやってきたからこそだし。海外の掲示板やSNSでのファンアートでは、鉄板と言えるほどに彼女の絵が出てきますからね。
草野 そうそう。初音ミクのキャラづけは、ファンアートだったり動画だったりで付け加えたものが、ものすっごくバズって付け加えられたりするわけよ、最近だともう固まってきたりはするけども。まっつは、初音ミクがネギを持ってるやつとか見たことある?
まっつ はいはいはい、ありますよもちろん。
草野 あれにも元ネタが有るんだけども知ってる?
まっつ あれ元ネタとかあるんですか!?ノイさん知ってます?
ノイ村 はい、もちろんです
草野 あれは、『BLEACH』で井上織姫がネギを持って買い物していた姿がモチーフなんだよ
まっつ え、あれなんですか?!
草野 もともとは、アニメ版の井上織姫がネギをグルグル回しながら登場していたシーンに、「Ivan Polka」の音楽をくっつけた動画が2ちゃんねるで流行ったの。あれ確か2005年とか2006年だったと思うんだけども・・・俗に言うFlash文化のなかにあったやつね。
ノイ村 それは知らなかったです・・・(笑)
草野 マジか。で、2007年頃にニコ動が流行った時、2ちゃんねるとニコ動を運営していたのがひろゆき氏だったということもあってか、ねらーがニコ動にかなり移動していたの。で、2ちゃんでそれまで流行っていたgifやswfなどのFlash動画をニコ動にあげて、再度大きな注目を集めたりしたのよ。同時期に初音ミクにも注目が集まっていたから、ちょっとアホの子っぽい顔したミクで・・・はちゅねミクね、そっからトレースしたような動画が生まれた・・・あとは御存知のように世界的にもあれが知られたので、「初音ミクはネギを持つ子」となったし、髪の毛の色もなんかネギっぽい色にまで変化したのよ。
ゴリ おお、たしかにそうだわ。
草野 そうそう、初音ミクが緑なのか、青なのか、というのもまたファンアートごとに違ったりするのも、それもまた創作者によって異なる部分。もちろんファンとしては大体はオッケーなのよ。
ゴリ オレさぁ、長いこと疑問に思ってたことを話していい?
草野 はいはい
ノイ村 どうぞ
ゴリ 深夜番組かyoutubeで、初音ミクのライブを見たのよ。ファンがうわぁーーー!と盛り上がって、ミクちゃんが出て、すごいなぁと思ったんだけども、ファンのみんなはそこに「初音ミクがいない」のに盛り上がるじゃない?それってものすごいことだし、「人がいないのにそこまで盛り上がる!?」って率直に思ったのよ
まっつ そうそう!わかります。ぼくも同じようなこと感じてました。例えばアイドルとかは、テレビ番組に出たりラジオに出たりするから、本人がどういう人柄なのか?というのが分かるわけじゃないですか?でも初音ミクってそういった本人性がほぼほぼ無いにも関わらず、人気が物凄くあったりする。これって・・・
草野 はいはいはいはいはいはい
ノイ村 草野さんはっやい(笑)
草野 これもさっきまでのところなんですけど、初音ミクは音声ソフトなので、実況動画などでよく使用されたりするのよ。いわゆるボカロ実況というところね。で、ミクの声を使っているから、ほぼほぼミクの絵も載っかっていることが大半なんだけども、その時点で「初音ミクが出演している動画」であり、もっと雑に言うと「初音ミクの動画」という風に受け取れることができるのよ
ゴリ ほへーーなるほど。
草野 で、「初音ミク実況動画」みたいなリンクとタグから、ずーーーっとミクの実況動画を見ているという偏執なひともいるわけですわ。それだけじゃなく、純粋に初音ミクで歌ってみた動画で、動画に使われたミクの声、曲、動画が好きになる人もいる。色んな動画やファンアートを楽しんでみている、こういうような状況がすでに、「アイドルが出ている番組を見ている」ようなものだと受け取ってもらえると分かるかな。
まっつ あああああ!!!なるほど!!物凄く理解しました!
ノイ村 要は「本人性」をどこで捉えるか?「初音ミクらしさ」をどこで捉えるか?というところですよね。
草野 そうそう。もちろん動画制作主によりけりなので、口調がぜんぜん違ったり、勝ち気だったり内気だったりと性格がぜんぜん違ったりしているわけだけど、「ぼくはこの動画のミク、好きですね」なんてコメントが動画についたりして、「初音ミクとして」需要がちゃんとされてるわけですわな
ノイ村 そうですね。
草野 ちなみにミク以外にも、鏡音リン・レン、巡音ルカもいるし、後には実況動画向けにおおく使われるようになった読み上げ用音声合成ソフトのVOICEROIDもいる。もちろんそれぞれキャラデザも違うし、性格も、声も違う。そしてそれぞれにファンアートがあるし、動画もあると
まっつ 沼ですね・・・
ゴリ いま思ったんだけども、AI美空ひばり問題にも繋がりそうな話だね。
https://www.youtube.com/watch?v=nOLuI7nPQWU
草野 ああーーー・・・・さきにいうと、オレはあれはダメだった。ちょっと受け取れなかった
ノイ村 テクノロジーはすごいと思いましたし、歌をしっかり歌っているのもすごいなと思いましたよ。そこまでは00年代にもあったわけですよ。何がイヤかっていうと、MCなんですよ。
ゴリ それそれ
ノイ村 ぼくは美空ひばりさんがご存命のころを知らないですし、音楽や記事内ででしか触れたことはないんですけども、あのセリフの裏に秋元康さんの姿が見えてしまって、その時点でダメなんですよね。その人格は秋元康さんなんじゃないのか?と
まっつ それもさっきまで話していた「本人性」にまつわるものなんですかね?
草野 おれは間違いなくそうだと思う。同じような感じ、2Pacの復活ライブでも感じたんだよ。2012年頃のコーチェラ・フェスティバルだよね
ノイ村 Dr.Dre.とSnoop Doggがヘッドライナー出演した時のやつですね。そもそも2Pacが生きてたら、コーチェラ・フェスティバルには出ねぇんじゃないの?っていうツッコミもあったやつですね。
草野 それ知らなかったわ!(笑)
ノイ村 それで出てきて、「What's Up Coachella!!!!????」ってシャウトしてるんですけど、コーチェラ・フェスティバルが開催されたのは2Pacが亡くなったあとなので、実際にそんなことは彼の存命中にはありえないんですよ。2Pacを出そう!という判断をしたのは、おそらくDr.Dreなんですけど、2012年のDr.Dreの状況を考えると、これかなり厳しいことしてるんですよ
草野 ほぼ引退状態で、ヘッドホンのBeatsを売る経営者として振る舞っていた時期だからね。
ノイ村 そうです。「ヘッドライナーで出てきて何するんだよ」って思ってたらこれですからね。2Pacのサプライズ出演も、なにを歌って、なにをMCするかも、出演者であるDr.Dreが絡んでるとなると、AI美空ひばりと秋元康の図式で言えば、Dr.Dreは秋元康のポジションですよ。
(全員大笑い)
草野 Dreの一声で全部決めてるわけじゃないだろうけども、でも実際起こっちゃったことだからね!これ例えを日本のほうで訳するとさ、X JAPANがフジロックに出て、hideが登場してきて、『フジロック盛り上がってるかぁーーーーーーーーー!!!?』っていうのと同じだからね。お前ら盛り上がれるの?みたいな話しだよね。
ノイ村 オレは盛り上がりますね。
草野 そうだね、オレもバカみたいに盛り上がるかも。
ノイ村 初音ミクとの比較になったので、簡単に話をまとめてみると、初音ミクの場合にはこういった解釈違いは起こらない。初音ミクの場合は、クリエイターを含めた視聴者とともに作り上げる二次創作の部分が非常に大きく、彼女のキャラクターはみんなで作り上げたものだから。でも、AI美空ひばりや2Pacの場合は間違いなく解釈違いが起こって盛り下がる人も出てくるであろうと。なぜなら、誰しもが彼彼女らの過去やパーソナリティを知ることができるし、過去の彼らの曲でも心動かされる。そこには確実に本人性があるし、どうしたって解釈違いになりかねない部分が多々出てきてしまうと。
まっつ 非常に納得のいく話でしたね。
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PART3はこちらから
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