愛しいと思う人が去ってゆく
これで何度目かとため息ついた
あの子は知らない
あの子も知らない
人里離れて
周り見わたし
小さく泣いた
悲しかったのは嘘じゃないと
嘘をついたあの子をもう一度
薄れゆくおもかげに
止まらないなみだ
あの子は知らない
あの子も知らない
ぼくがあの子のおもかげを
ゆめを
きおくを
そんざいを
こんなにあいしていることを
ぼくも知らない
ぼくは知らない
それを「愛」と呼べる日を
愛おしいと思うのに
特別だと思うのに
ぼくはこの世でいちばん
いちばん不必要と切り捨てた
あの感情を
あの子が望むカタチで
あの子に告げて
みせて
進まなくては
あの子の隣を諦めたとは同義語で

あの子は知らない
あの子も知らない
ぼくはまたしてもうそぶくの?

あの感情のカタチを言葉にしたのも結局は

そう、結局は

ぼくの———

あの子は笑う
楽しそうに笑う

この世界に生きようとこころみる

それで充分

そうだった

ああ、それでも

あの子がぼくを望むなら


ぼくは君の隣なら


切り捨てた感情を育みたいって

強く

つよく

願えるようになったんだ


【題名】恋

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