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I Remember You, Ping Ping!〜熊猫をめぐる冒険

同志Aからのお題:私だけが憶えている映画


ランランでもカンカンでも、ホァンホァンでもシャンシャンでもない。パンダのピンピンをご存知だろうか。ピンピンは、ただのジャイアントパンダにあらず。俳優なのだ。

主演作は「パンダ物語 ピンピンの大冒険」。もともとは1981年の香港映画だが、日本では87年秋に本田美奈子さん最初で最後の主演作「パッセンジャー 過ぎ去りし日々」と2本立てで公開された。

メインの「パッセンジャー」は世界を目指すロックシンガーの妹とバイクレーサーの兄を軸に描く青春映画。「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」や「グーニーズ」の人気子役キー・ホイ・クァンさんを起用したり、鈴鹿サーキットの8時間耐久レース中にコンサートやレースシーンの撮影を敢行したり、本格的に実写製作に乗り出した西崎義展プロデューサーの力み具合がそこかしこに(映画としての出来はさておき)。

松竹の主力劇場の一つ「丸の内松竹」のこけら落としに選ばれ、主題歌の「孤独なハリケーン」も「Oneway Generation」などに続き、本田さんの自己最高となるオリコン2位のスマッシュヒットとなった。

しかし、映画の興行成績は惨敗に終わる。

話を「パンダ物語」に戻そう。物語は子パンダのピンピンと少年ダニーが、パンダ狩りの追跡や自然の困難を乗り越え、夢の楽園「パンダランド」を目指すアドベンチャー。悪くはないが、なにゆえファミリー向けの本作がロックでバイクの併映に選ばれたのか。

菊池桃子さん「アイドルを探せ」と三田寛子さん「Let's豪徳寺」のセットなら、ご陽気でよろしかろう。南野陽子さん「スケバン刑事」と台湾映画「カンフーキッド 好小子」の組み合わせも親和性高し。

「アイドルではなく、アーティスト」志向だった本田美奈子さん。「パッセンジャー」は彼女の歌唱力を生かそうとした野心作だが、人気小説・マンガの実写化やテレビ番組の映画化のような基盤を持たない、オリジナル企画。いわば無派閥候補。

苦戦も事前に予想されため、補強策として西崎Pが代表を務める映像会社が買い付けていた「パンダ物語」との2本立てになったようだ。「パンダ物語」の日本語版は宮川泰先生が新たに音楽を付けるなど手を加えている。

ヤングも子連れ家族も来て欲しかった? だが、二兎を追う者は一熊猫をも得ず。

封切り時、高校2年生の私は、この2本立てを映画館で見た。530席ほどの館内が清々しいほどガラガラだった。

でも俺は忘れないぜ。ピンピンの名演を。野を越え、森を進み、イカダで川を下る君の姿を。我記得你!

余談ながら、邦画の「パンダ物語 熊猫的故事」が88年に東宝系で公開されたが、ヒットしたとは聞かない。生パンダを客寄せに使っちゃダメかもね。

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*映画といえば…
FM沖縄で49年続く長寿番組「スクリーンへの招待」は9月26日の放送が最終回。日曜夜8時、映画音楽とリスナーのお便りでつづる、映画ファンの心のオアシスのような時間でした。番組の幕が下りるその時、パーソナリティーの安谷屋眞理子さんに感謝の拍手を送ります。


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