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文文(もんもん)としたっていいじゃない。①


マジか、勘弁してくれよ。


社長が「みんな毎月、仕事での学びをnoteに書いていこう」と言ったときの正直な感想だ。


私は今年4月に入社したばかりの新人デザイナーで、いつも日々の業務で手一杯だ。しかし新人たるもの、何事にも全力投球していかねばならない。それにnoteは以前から書きたいと思っていた。よし、腹を括ろう。


改めまして、新人グラフィックデザイナーの亀田です。私が毎月noteに書くのは「手描き文字」について。


毎回テーマを設け、その書体の概要や、レタリングしたときに考えたことをまとめる。技術解説ブログというよりも、文字デザインとその歴史に関するエッセイだ。そのうち活版やデジタルフォントに話が広がるかもしれないが、当分は手描き文字について書いていく。


拙文でもグラフィックデザイン、あるいは文字文化に興味がある、私と同年代の若者に響けば良いなと思う。


今月は初回なので、主に自己紹介だ。昨年の卒業制作から現在・社会人4ヶ月目までの話をする。


(写真は、最初に書いていた良い子ちゃん文体の原稿。)


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“一応” 美大生なキャンパスライフ

私は今年の3月まで、グラフィックデザイン学科の美大生だった。しかし一般の勉強、特に世界史が好きで、高校時代は美大と総合大学どちらに進学するか随分悩んだ(というか今でも文学部に入り直したいと思っている)。


ところで美術・デザインは、何もノンバーバルの表現に留まらない。私は小学生の頃から習字や白抜き文字を書くのが好きで、大学の卒業制作もタイポグラフィで修めた。卒業制作は366日分の愚痴を手描きでレタリングして、日めくりカレンダーを作った。


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大学ではものづくりが大好きな同級生に囲まれ、ずっと違和感を感じていた。


「私はみんなほど、デザインが好きじゃないな。」


昔から絵を描くのは好きだけど、実技よりも座学授業の方がずっと得意だった。4年間歴史や語学の勉強を続け、塾講師のアルバイトをし、雑誌編集者になりたくて就活は出版社ばかり受けていた。すべて中途半端だったかもしれないが、それでも好奇心の赴くまま、とにかくやりたいことをやった。


デザイン以外にもあれこれ手を出した大学生活だったけれど、卒業制作では納得できるものを作れた。言語と非言語の表現バランスがとれた作品を、はじめて作れたからだ。


美大生になってよかった。


まだ卒業して数ヶ月しか経っていないが、意味ある4年間をすごせたと思っている。


卒業制作で愚痴をレタリングした経緯については、また別の機会で詳しく書きたい。



実務デザインも窮屈じゃない

卒業制作を提出して3ヶ月後。私は編集者を目指していたが、一転してグラフィックデザイナーとして働きはじめた。なんだかんだ言っても広告アイデアを考えるのは好きだし、専門職なら海外に高飛びもできると思ったからだ(本当に世の中をなめている)。


教授には散々「社会に出てデザイナーになったら、好きなものは作れないよ」と脅されてきた。実際、4月から毎日矛盾にぶつかっているが、すべてが期待外れだったわけではない。


商業デザインで、手描きの文字はほとんど使わないと思っていた。身の回りの広告や商品パッケージを見渡せば、PCで打ち込んだフォントで溢れているからだ。


ところがデザインの現場にいると、案外それが求められるのだ。もちろんそのデザイン案が世に出るとは限らないが、企画提案の段階では手描き文字が含まれていることが少なくない。


なんだ。私のスキルも生かせるじゃん。


手近な印刷物を見返すと、ただ無遠慮に情報が並ぶ、文字列ばかりではない。私の早とちりだったのか。
わからないことだらけの仕事も、少し楽しくなってきた。


今までは自分の手癖でレタリングしていたが、仕事では様々な注文をクライアントや上司から受ける。


英文を筆記体で。簡体字をLUSHみたいな文体で。


サラサラ描けるときもあれば、資料を見ながら何度も練習することもある。今のところ仕事中で、いちばん好きな時間だ。


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デザイナーになっても、やっぱり文字の人間

私は記事の冒頭から悪態をつき、数百個の愚痴を卒業制作にする人間だ。基本、ちゃらんぽらんに生きているが、考えが巡ってまとまらない気持ちを友人や家族にぶつけることも多い。


定期的に文章を書くことで、思考の整理をしていきたい。散漫な文章になるかもしれないが、自分の考えを書き残すことが大切だと思う。


プロのデザイナーになってかなり日は浅いが、文字は子供のころから書いて(描いて)いる。デザインとしての手描き文字と、言語表現としての文字。2つの側面から文字と向かい合いたい。


悶々とひとりで悩むより、思いを文字に託して晒してみよう。





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