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ポジテイブ組織心理学を学んでみた其の六〜「"EQ"とは?これからのリーダーの必須スキル。心の知能指数」編〜


突然ですが、皆さんはEQという言葉を聞いたことはありますか?
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、「心の知能指数」を意味します。心の知能指数って書かれてもいまいちピンときませんよね笑。

【EQ】
心理学者のMayerとSalovey(1990年)が初めて提唱した言葉で、自分の中や他人の中の情動情報を正確かつ効果的に知覚し、処理し、調整する能力。そしてこの情報を自分の思考や行動の指針としたり、他人の行動に影響を与えたりする能力を指します。


今回は、

◉EQを軸に繁栄し続ける組織を構築するためにはどうしたらよいのか?
◉これからの時代なぜEQという、人の感情や気持ちに焦点をあてた力が必要とされるのか?

この二つに焦点を当てて記事を書きたいと思います。


ポジティブ心理学的EQ

ポジティブ心理学観点からお話するとEQは、認知と感情の接点を形成し、レジリエンス、モチベーション、共感、推論、ストレス管理、コミュニケーション、そして様々な社会的状況や対立を読み解く能力を促進するとし、より充実した幸せな人生を実現する機会となると教えています。ポジティブ心理学で何度も言わているwell-beingの実現においてEQは非常に重要なものであるということですね。


EQの5つのカテゴリー

EQには5つの能力カテゴリーがあります。

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①自己認識:自分自身の感情や他者への影響を認識し、理解する能力。
自己認識は、内省的な自己評価の第一歩であり、自分の心理的構造の行動的・感情的側面を特定し、それを変化させるための目標とすることができる。感情面での自己認識は、何が自分を動機づけ、ひいては何が自分に充足感をもたらすのかを認識することでもある。

②自己調整:自分のネガティブな感情や混乱した感情を管理し、状況の変化に適応する能力。
自己調整能力に長けている人は、対立をうまく処理し、変化にうまく適応し、責任を取る傾向があります。

③モチベーション:外からの賞賛や報酬ではなく、内的な自己満足を得ることに重点を置いて、自らを動機づける能力。
このように自分を動機づけることができる人は、より献身的で目標を重視する傾向があります。

④共感:社会的な状況において、相手の気持ちを認識・理解し、その気持ちを考慮した上で対応する能力。
共感することで、個人的にも職場でも、人間関係に影響を与える力学を理解することができると言われています。

⑤社会的スキル:感情を理解することで他者の感情を管理する能力。
アクティブリスニング、言語的・非言語的コミュニケーションなどのスキルを用いて信頼関係を築き、人とのつながりを持つことができると言われています。


これらのスキルを磨くことは、自分の真の可能性を実現するための第一歩です。そしてこのスキルを磨くことが人とのつながりや対人コミュニケーションの向上、職場や社会での人間関係の成功、ストレスへの対処やモチベーションの向上、意思決定スキルの向上など、個人生活でも仕事でも、成功を実現するための中心的な役割を果たしていくのです。

現在世界的に雇用者が学歴よりもEQの重要性を重視する傾向がますます強まっています。


EQはIQより重要か?

IQというのは、「Intelligence Quotient」の略で、「知能指数」を指します。一般的に浸透している言葉なので、IQが高い人といえば、多くの方が記憶力が高く、勉強や仕事ができるイメージを持つのではないでしょうか。

今までは人の能力を測る指標のひとつとして有力視されているのが、修士や学士といった学歴でした。このため、学歴が高い、すなわちIQが高い人材がビジネスでも成功すると一般的に考えられてきたのです。今までの学校教育が偏差値の高い学校に行って、高い学歴を得ることが勧められてきた背景でもあります。

しかし、IQが高いからといって必ずしも成功できるとは限りません。学校や会社などの組織の中で上手く人とコミュニケーションをとれなければ、円滑に社会生活を営むことはできないからです。

国内200万部を突破したアドラ―心理学の入門書である「嫌われる勇気」の中でも、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。」と書かれており、どんな種類の悩みであれ、そこには必ず他者が関わるといわれています。

「少し前までは、仕事ができる人財の要件は、豊富な知識を持ち、頭の回転が速い人。つまり、IQ(知能指数)の高い人でした。しかし、働き方も人財も多様化している今、人はIQ(知能指数)だけでは生きていけません」

「これまで日本人の生活の中心は仕事でした。会社に行き、求められる仕事をやっていればよかった。そんな"会社起点"の人生に対し、これからは"個人起点"で生きていく時代です。

人間関係を円滑にすることができるEQがあってこそ、IQをいかすことができるといえるのです。さらに、ビジネスや生活様式が一変したニューノーマル時代を迎え、私たち一人ひとりが、どう生きるのかを考えなければなりません。そんな現代では、自分の感情を管理し、人の気持ちに寄り添ったマネジメントができる能力、EQが必要なのです。

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リーダーに求められるEQと仕事の成果の関連性

「IQが高く優秀な人をリーダーに選任しても、チームとしては上手く機能しなかった。」こういった経験は誰しも一度は感じたことがあるのではないでしょうか?前述したピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士は、心理学の立場から、ビジネス社会における成功の要因とは何かを探りました。

その調査の結果分かったことは、「ビジネスで成功した人は、ほぼ例外なく対人関係能力に優れている」というものでした。

具体的には、ビジネス社会で成功した人は「自分の感情の状態を把握し、それを上手に管理調整するだけでなく、他者の感情の状態を知覚する能力に長けている」というものだったのです。

心理学・組織行動学の権威として名高いデイビッド・マクレランド教授の研究によると、ある世界的な食品・飲料メーカーに関する1986年の調査で、同社の経営陣のなかでEQがある一定の水準に達している経営幹部の場合、担当する事業部門の年間利益が目標を20%も上回っていることを発見しました。

他者と円滑にコミュニケーションをとれることで、クライアントなど社外との関係もうまく維持調整することができ、社内的にも多くの協力者を得ることができるため、結果的に高い成果を生み出すことができます。これはどんなにIQが高くても、EQが低ければ実現できないことです。

今の時代、激しい変化と不透明な未来の中で事業を推進していくことが求められ、またグローバル化も進み、様々な要因が絡み合っている複雑な社会や組織の中では、自分一人の力だけで対応することはほぼ不可能です。

今後のリーダーに求められる能力は、他者のもつ専門性・知見・ネットワーク・アイディア等を引き出し、未来を構想しながら、推進していく力です。今後リーダーには、ますますEQの力が求められていきます。

世界トップ企業といわれる「フォーチュン500社」のうち、8割の企業が教育などの研修等によって、自社になんらかの形でEQを導入しています。


EQを高めるエクササイズ!

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1 笑顔で挨拶+もうひと言
挨拶はコミュニケーションの基本です。ただ「おはよう」と言うだけでなく、その後に「気分はどう?」など、必ずひと言付け加えましょう。そして、挨拶のときは必ず「笑顔」を心がけましょう。

2 今の"気持ち"を聞く
「How do you feel now ?(今の気持ちは?」と、1日3回、自分に問いかけてみましょう。「仕事が楽しい」「やる気があふれている」という日もあれば、「仕事をしたくない」「眠い」とネガティブな感情を抱くこともあるでしょう。今自分がどんな気持ちなのかがわかれば、とるべき行動が見えてきます。自分に問いかけるのが難しい場合は、同僚や家族に聞いてもらってもよいです。

3 "気持ち"をテーマに会議を
最近では上司と部下の「1on1ミーティング」を取り入れている会社も増えています。会議のテーマは主に「で(出来事)」「き(気持ち)」「こ(行動)」ですが、日本企業では「"で・こ"のみのケースが多い」と言われています。そこで、あえて"気持ち"をテーマにした会議を開いてみましょう。組織の一体感の醸成や部下のモチベーションアップにつながります。
また、「楽しく仕事してる?」と聞くと、「実は最近、〇〇さんとうまくいってなくて……」と仕事上の人間関係の悩みなどが出てきたりして、仕事の進捗以上に深い情報を入手できることもあるとかないとか、、

4 1日に5人ほめる
「素晴らしい」「よくやった」「頑張ってるね」など、1日5人をほめてみましょう。人をほめることは、相手のやる気を高めるだけでなく、自分自身のエネルギーを上げていく効果もあります。

5 スキップ&ジャンプ
行動によって感情は変えられる。この最適な例がスキップとジャンプです。
気分を上げたいときややる気を出したいときにはぜひ実践してみましょう。楽しみながら実施することも、EQトレーニングの重要なポイントです。

行動心理学では、2カ月継続すると、その行動を自動的にできるようになると言われています。そのため、これらのトレーニングをまずは2カ月続けてみましょう。


会社起点の管理統制の時代には、指示命令で人は動きました。しかし、これからの個人起点の時代には、人は共感と信頼によって動きます。その信頼と共感を得るためにも、EQは必要不可欠。また、社内外の人とどれだけつながれるかがビジネスの成功の鍵となりますが、人とつながる力もEQによって高めることができます。今後ますますEQは求められていくことと思います。

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まとめ

これからの時代に求められる能力であり、自分自身と他者の気持ちや感情に寄り添うEQの力。

まずは自分自身の中にある感情がどのようなことがきっかけで生じ、それがどのように行動に繋がっていくのか、自己認識能力を鍛えることが最初のステップになります。

その上で、その感情の適切な扱い方を身に着け、実践していくことで、自分自身だけではなく、他者の気持ちや感情にも敏感になり、深いレベルで共感し、円滑なコミュニケーションに繋がっていくということがお分かりいただけたかと思います。

テレワークの進展により働き方が大きく変化している今、「EQ理論」を用いたマネジメントが注目を集めています。
EQは遺伝などの先天的な要素が少なく学習によって高めることができます。
ぜひだまされたと思って上記のエクササイズを取り入れてみては?

世界中とのつながりが容易になった今、また会社、学校という規模の大小に関わらず人と繋がる場所に身を置いている私たち。
そんな私たちにとってこれからの未来を作っていく上で非常に重要なEQ。新たなニュースタンダードになりつつあると言えるのではないでしょうか。

最後に、EQの重要性を感じさせる言葉を紹介します!

アメリカの公民権運動家、Maya Angelouの言葉、

“I’ve learned that people will forget what you said, people will forget what you did, but people will never forget how you made them feel.”


”あなたが何を言ったか、何をしたか、人々は忘れてしまうが、あなたが彼らをどう感じさせたか、人々は決して忘れないということを学びました。”

”心を動かした何か”は行動そのものよりもはるかに人の脳裏に焼き付く。
この結果は時にポジティブにもネガティブにも働くものですよね。
多様性が随所で叫ばれる今、”自己を理解し、他者を理解する姿勢”はますます重要となってきている、、と思うのです。



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