「トラベルミステリー」って何だろう問題4、あるいは少女トラベルミステリの定義のやり直し
かなり時間は開いてしまいましたが前回はこちら。
前回である程度オチがついた気分でいたのですが、結果的に館山が『少女トラベルミステリ』の中で「どんなものをトラベルミステリと認識するか」という部分については曖昧になっていました。そこをもう少し詰めようと思います。
まずトラベルミステリにはふたつの要素があります。言うまでもなく『トラベル』と『ミステリ』です。「いやー、要するにトラベルでミステリなのがトラベルミステリですよー」とかいうトートロジーで落とすのではなく、自分にとって「何がトラベルで何がミステリか」という問題です。
前にやったにはやったのですが、三要素を無理に同時に扱ったことで混乱してしまってあまりいい記事ではありませんでした。本当は消してしまいたいのですが、これを叩き台として、まずは『トラベル』『ミステリ』の二要素に絞って考えていきたいと思います。『少女』については後でやります。
まずトラベルです。旅行ですね。
こちらについては「ホームグラウンドから、読者の移動できる(できた)、帰ってくることが可能な、日常的に移動する範囲外の、実在の場所へわざわざ移動すること」とします。架空の場所は不可、実在するものの実情と違うアレンジを伴う場所も不可です。
観光とかの要素を必要としません。
出張でも受験でも逃避行でもぼんやりして公共交通機関を乗り過ごしたでも犯罪などで拉致されたでも問題なしです。
帰ってくることが可能な状態なので「移動した場所に居住した(引っ越した)」場合はトラベルと認識しません。
移動距離については「実在の場所へ、非日常的な移動であれば近距離でも可」と認識しました。普段の行動パターンで移動する範囲内から外れる、わざわざ行くのがトラベルという前提です。
つまり通学中の高校生や通勤中の大人が買い物で途中下車などした駅で事件に遭った場合はトラベルではなくても、(そういう作品があるかは知りませんが)小学一年生が校区外の場所にわざわざ出かけるのはトラベルの可能性があります。前者は「日常移動する範囲内」ですが、後者はわざわざそうではない場所に出かけているからです。
例えば山村美紗先生の祇園舞妓小菊シリーズの場合、祇園の茶屋や日常の移動で何とかなる作品はトラベルミステリではなく、ドライブや旅行などの作品はトラベルミステリという認識です。
次はミステリです。
「何かが起こり、それがどのような形で行われたか判明できること」──謎解き要素がある、事件への推理を伴う、何が起こったのか判明することになる作品です。超常能力や特殊設定のあるものも含みますが、探偵役や犯人がその能力、設定を使用する場合、あらかじめそれを何らかの形で説明されている必要があります。伏線もなく、公開されていなかった謎の能力で犯行がある、謎を解明するなどの作品を『少女トラベルミステリ』ではミステリと認識しません。(ただ、トラベルミステリと認識されている作品の場合、超常能力をメインとして持ってくる可能性はかなり低いとは思います)
フレーバー的な超常能力、超常現象についてはスルーします。
謎解きメインではないサスペンスでも「何かが起こり、それがどのような形で行われたか判明する」なら、『少女トラベルミステリ』ではミステリの範疇に入れます。そこが明らかにされない作品はNGです。
探偵役は必要としません。みんなで調べているうちに判明したでも、犯行はこのような形で行われたなどが主人公などに公開される場合、ミステリとして認識します。
犯人役も必ずしも必要としません。玉突き事故的に起こってしまった事件などを書く作品も、それを推測することが読者に可能ならミステリです。
「ホームグラウンドから、読者の移動できる(できた)、帰ってくることが可能な、実在の場所へわざわざ移動すること」「何かが起こり、それがどのような形で行われたか判明できること」が満たされていれば『少女トラベルミステリ』ではトラベルミステリと判断します。
ここまでやったので、残っている『少女』の部分の定義をします。
まずはこの『少女』は『少女主人公』です。『少女探偵』である必要はありません。状況的に事件に巻き込まれ、何が起こったのか知りたがっている知ろうとしている少女主人公であれば、探偵役として機能していなくてもOKです。
ミステリの場合、狂言回し、語り部的な、そのキャラの視点で進んでいく人物がいて、探偵役は別にいることもありますが、その場合は探偵役を主人公と認識します。シャーロック・ホームズシリーズならワトソンは主人公ではなく、二階堂蘭子シリーズなら二階堂黎人は主人公ではないという認識です。なので二階堂蘭子は(学生時代までは)少女探偵主人公ですし、キャサリン・ターナーも『百人一首殺人事件』までは少女探偵主人公です。
年齢についても定義します。『少女トラベルミステリ』では「保護者がいて、一人で生計を立てることができない」年齢の若い女性を『少女』としていますが、学生時代は大学生でも学部生なら少女と判断します。
成人年齢に達していて、かつ既に一度社会人経験があって大学に入り直したなどの場合は『少女』ではないものと見なします。
成年擬制があった時期の未成年の既婚の女子学生を『少女』と判断していいのかは判断が分かれると思いますが、そこについては考慮しないものとします。
その他の健康、法律的な面で後見人がついている成人女性は『少女』と見なしません。『ミレニアム』のリスベット・サランデルは犯罪者で後見人がついていますが、『少女』ではないと認識します。
若くて職業を持っている場合は、未成年のうちが『少女』です。子役タレントや著述業などで巨万の富を得ていても、その国の未成年である間は基本的に『少女』です。
舞妓などの少女性をアピールする職業の場合は芸妓(一人前と見なされる職)になるまでは『少女』とします。
時代小説のミステリなど、現代と児童労働などについての認識が違う舞台の場合は「上流階級ではない若い男女が大人と同じ髪型、服装をするようになる」のを大人として定義します。上流階級の場合や、女性の地位が低い国では、女児を子供の頃に結婚させてしまう可能性が上がるので、未婚既婚、性体験の有無では判断しません。
つまり成人年齢を過ぎていても少女と判断するのは『大学の学部生』と『舞妓などの少女性を前提とされる仕事の就業者』のみです。それ以外は基本的に未成年かどうかのみで判断します。
少女
未成年の女性。『大学の学部生』と『舞妓などの少女性を前提とされる仕事の就業者』を除く。
トラベル
ホームグラウンドから、読者の移動できる(できた)、帰ってくることが可能な、日常的に移動する範囲外の、実在の場所へわざわざ移動すること。
ミステリ
謎解き要素がある、事件への推理を伴う、何が起こったのか判明することになる作品。超常能力や特殊設定のあるものも含むが、探偵役や犯人がその能力、設定を使用する場合、あらかじめそれを何らかの形で説明されている必要あり。
この定義でいくことにします。