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わたしの居場所、そしてみんなの集う場所|Mildego

 お施主さまインタビュー、今回は、因島で自宅の一部を開放し、Mildego(ミルドエゴ)という屋号で住み開きをおこなっている、むらいあつこさんにお話を伺いました。
 graftとして、初めてキッチンだけに注力し設計を行ったむらい家。そこには、キッチンに対して、そして家や家族に対して、悩み、考え抜いたむらいさんの思いが詰まっていました。
 graft代表の酒井の強みのひとつ、話を聞き、その人がほんとうに実現したいことを叶える、それがまたひとつ、形になった現場です。
 お話を聞く中で、むらいさんの新たな挑戦についても伺うことができました。

今回のお施主さま:むらいあつこさん、一也さん(Mildego/広島県尾道市)
聞き手:酒井大輔(graft)
構成:千々木涼子

いつもはおうち、ときどきおみせ。

 広島県尾道市因島は、瀬戸内海のほぼ中央に位置し、温暖な気候に恵まれた美しい自然と豊かな伝統や文化が残る島だ。
 その島の片隅に「いつもはおうち、ときどきおみせ。」そんなキャッチコピーを掲げて開かれる場所がある。
 梅干しワークショップや柚子胡椒作りといった季節の手仕事から、ダーニング教室や鍋敷き作りなどのものづくり、発酵料理教室やナッツの量り売りなど食に関わること…。
 いつもは「おうち」、一般家庭の一角でありながら、月に何度か「おみせ」として開かれる日にはたくさんの人やものが集まり、交わる。それ以外にもお話会の場などとしても開かれ、人が集まり交流する場となっている。
 それを叶えるのは、引き戸を挟んで内と外をシームレスにつなぐ、土間。ガラス張りの引き戸をあけると、そこにはコンクリートブロックが積まれたキッチンがあり、キッチンに立つむらいさんが笑顔で迎えてくれる。
 カウンターを挟んで向かい合えば、馴染みの小料理屋のよう。誰かの家のキッチンにお邪魔する、という緊張感は皆無だ。

コンクリートブロックでできたカウンターを挟んで向かい合うふたり。

古民家を改修するという選択

 酒井とむらいさんをつないだのは、グラフトが上島町で設計と施工を行った、宮畑邸のお二人だ。
 それぞれが出店していたイベントなどを通し、お互いを知ったというむらいあつこさん宮畑真紀さん。むらいさんにとって、真紀さんは先輩ママでもあり、瀬戸内の島で精力的に活動する女性同士、一緒にできることを模索する関係でもあった。
 そんな宮畑夫妻との縁は、家を持ちたいと考えていたむらいさんと夫の一也さんを、古民家に暮らすという選択肢ともつないだ。新築や建売を考え、住宅展示場などを回った時、テンションが上がるむらいさんとは対照的に、スイッチが入らない様子だったという一也さん。そんな一也さんが見つけてきたのが、今の家だった。

酒井: そもそもグラフトを知ってくださったのは、弓削の宮畑夫妻のご紹介ですよね。

むらいさん:そうそう。

酒井:宮畑邸の工事をしている時に、一也さんが来たことがあって、真紀さんが古い建物を直すのもいいよ、みたいなことを一也さんに言っていたと思う。

むらいさん:古い家をリフォームするっていうのは、彼の案だったんですよ。こんな家があるよ、面白そうじゃない?って見つけてきて、一緒に見にきたら、彼が気に入って。彼が前向きに動くのは今までになかったから、そういうことなんだなと流れに任せた感じ。

酒井:受け入れた方だったんですね、あつこさんが。僕が関わり出したのは、ここの家が決まってからですよね。

むらいさん:そうですね。

酒井:全体の工事は、一也さんのつながりもある、因島の工務店さんで決まっていたので、よく一部だけを僕にやらせてくれたなと思ったんですよ。

むらいさん:まずは紹介してくれた宮畑ご夫妻への信頼もあったし、そこでお会いした酒井さんに対して、人としての信頼感もあったんだと思うんです。

酒井:ありがとうございます。

納得して使えるキッチンを目指して

酒井:キッチンの部分をお願いしますと言ってくださって。グラフトとしては、キッチンだけに向き合ってやったことが初めてだったんですよ。家全体の中の一部ではあったけど、キッチンだけにフォーカスしてやるっていうのはオーダーとしてはなかったから。
 だからね、ワクワクしたんですよ。

むらいさん:いいですね、ワクワク。

酒井:どうやら面白そうなご家族やし、宮畑夫妻からご紹介していただけたのもすごく嬉しくて、繋げてくれたっていうのがありがたい。ありがたいけどもご紹介だからこそのプレッシャーも同時にあったんですよ。
 しかも、できたキッチンの使われ方がいいわけですよ、これは後になって知るわけだけど。

カウンターの外側は、土間になっている。

酒井:それでね、話だして感じたのが、あつこさんの迷い。でも、真面目にちゃんと向き合ってるからこその悩みだなと。そこで僕は何をすべきかなと考えました。設計は、オーダーをポイントとしてまとめ直して、図面に起こして、それを編集すればできるんですよ。そこで何を目指してやるかといったら、形を納得して使ってもらえるところに持っていけるかというところ。あつこさんに納得して欲しいな、どうしたら納得してもらえるかな、というのをずっと思ってました。
 だから、会話をすることとか、もう少し深い対話をするのはいとわずしようと決めて、毎回来ていましたね。僕はあつこさんの納得を目指してやっているから、本音で話して欲しいと思っていたんですけど、あの短期間でよく見せてもらえたな、というくらいさらけ出してくれて、それがうれしかった。おかげで僕、楽しかったですよ。ちょっとずつ顔色が変わるし、思いが図面にのっていくところを確認してもらえている感触もあっしたし。
 よし、と思ったのが、一也さんがちょっとずつのってきたって言ってたこと。

むらいさん:楽しくなってきた、って言ってました。わたしもあの時印象的だったな。一也くんはキッチンの部分においては関わってないんだけど。

酒井:キッチンに関してはお任せなんだと思ってたら、アイデア出してきたり、面白いって言い始めたから、ものを作ったり、アイデアを形にするのが好きなんだっていう、それが見えてきた時はうれしかったですね。

お茶を淹れるむらいさんの姿が、絵になるキッチン。

家がもつ包容力

むらいさん:設計の時、わたしが好きって思うものを全部出したんですよ。こんなキッチンいいなって思った写真を画像保存しておいて、レンガがあったり、木だったりステンレスだったりタイルだったり、これが好きっていうのをいろいろ集めて、酒井さんに見せたら、酒井さんが全部入れましょうって言ったんですよ。全部入れるの?まとまるの?ってなった。
 最終的にまとまったのは、この家の包容力だなというのを感じていて。いろんな要素が雑多にあるけれど、それをいいよって言ってくれる。散らかったものを包んでくれる、包容力がこの家にはあったなと。

酒井:本当にそうかもしれない。バックカウンターのところのタイルは、知り合いの作家さん、惠谷さんの完全オリジナルなんですよね。

むらいさん:どの色が好きかっていうのと、どうしたいかっていうイメージを彼に伝えて、一緒に話して決めて、塗りにも行った。貼る時は、酒井さんご夫婦も来てくれて一緒にみんなで貼って、その作業からこの家をみんなで一緒に作り上げているっていう感じがしてうれしかった。

酒井:僕もそのプロセスがとってもいいなって思ってた。

むらいさん:ほんと楽しかったな。あの時からここで誰かがご飯を作ってくれて、みんなで食べてっていうのが始まっていて。

酒井:その時にここで会った職人さんに、今度また別な工事をお願いすることになって、ご縁がつながってるからありがたいですよ。人をつなげる力のある場ですよね。

子どもたちも一緒に行ったタイル貼り。

開かれたキッチン

 尾道市内で無添加食品の量り売りを行う、organic store ツチノコとの繋がりから始まったのが、出張ツチノコ@ミルドエゴという会だ。
 因島でも食品の量り売りをしたい、と考えたが、むらいさん自身が量り売りを行うのはハードルが高い。それならば、と始まったのが、月に一度、ツチノコが出張販売にくる、というお試しの形だった。
 量り売りを広めたい、というツチノコの方針とも合い、2022年にスタート。出張販売に合わせて、仲間たちでランチやドリンク、デザートやワークショップなどできることを持ち寄って集まり、定期的なホームパーティーのような会として続いてきた。

本日の出展者。手書きのゆるさも魅力。

酒井:ここは土間対面のキッチンでしょ。工事の時からここが出入り口になるのは分かっていて、これがどう使われるのかなと思っていたら、あの集まりですよ。あれはなんて言ったらいいんですか。

むらいさん:出張ツチノコ@ミルドエゴですね。

酒井:それがまたすばらしい会なんですよね。ここにいる人たちがみんなあたたかい。なんだろう、自由な空気がありますよね。

むらいさん:そうですね、好きに過ごしていますよね。みんな勝手にそこかしこで居場所を見つけてくれて、居合わせた人たちと美味しいものを食べながら談笑していて。時には悩み相談して涙を流す、みたいな。自由なことをそれぞれがしている感じで、頑張らなくていいというのがすごく気に入っています。
 そういう時ってキッチンにいるのはわたしじゃないんですよ。わたしはほぼキッチンに立たない。ちゃんと誰かしら料理をしてくれる人がいて、わたしはうろうろ漂いながら話す、ということができる時間なんですよね。

思い思いの会話が弾む。

酒井:キッチンを半分開かれた場所にするというのは最初から考えてましたもんね。

むらいさん:住み開きみたいなのが自分の中でイメージにあって、完全には家族のこともあるし難しいけれど、セミオープン的な感じで人が集えるところになればいいっていうことは思っていましたね。

この日は手すき和紙体験も。
むらいさんもホストとしてだけではなく参加者として楽しむ。

酒井:最初の頃、ここの隣の納屋にちょっと面白い空間があるのを、すごくワクワクする感じで紹介してもらって、その時に自分の居場所を作るイメージを持っているなというのが分かって、最初から居場所をキーワードに話をしていた。そのイメージがあったから、ここが開かれたキッチンになる意味が自分なりには理解できてもいて、土間とのつながりが緩やかで、グレーゾーンにキッチンがあるのがとてもいいな。と。
 イベントの時、キッチンと土間があるからすごくいい感じになっているなと思う。出入りがしやすい。中に入ったり外に出たりっていうのをあんまり意識しないでできる。グレーゾーンならでは。

むらいさん:由梨ちゃんが、工事の時、コンクリートブロックが家と外の中間って感じがしてすごくいいですねって言ってくれて、意図したわけではなかったけど、たしかにな、と思って。だからしっくり来たのかなって。

酒井:土間の続きを連想させる。それもこのおうちの包容力ですよね。一也さんの見立てがよかったのかな。

新しいチャレンジ

 出張販売をしていたツチノコのえりさんが次のステップを模索するため、出張ツチノコ@ミルドエゴは12月で一区切りとなった。
 2年近く続いてきた集まりを絶やしたくないという思いもあり、この場での集まりを今後どうしていくか考える中で、むらいさんご自身も次のステップへ進む決断をしたという。

むらいさん:統一選にチャレンジしようと思っているんです。これまでも出たらって言ってくれる人はいたけど、背負えないなと思っていて。でもやっと最近、腹を括ったんですよ。

酒井:いよいよ時が来たんだなっていう思いです。
 公なエリア、そのエリアにあるさまざまな課題にとても関心が高いなっていうのは前から思ってたんですよ。それって、どう、いつくらいから、その関心って育まれていったんですか。

むらいさん:やっぱり子育てを始めてからですね。小さい子を育てることで、急に社会の歯車からドロップアウトした気分になったんですよ。働けるのに、一人の働き手としてカウントされていないのを感じて。子どもを抱えているだけでそう見られるっていう社会の目線みたいなものを、子育てしながら、生活しながら、感じたんですよね。

 子育てをする中で感じた閉塞感と疎外感。もどかしい思いをしながらも、ないものねだりをするのではなく、ないのであれば自分たちで作ろうと考えたむらいさん。
 同じ思い抱えながら子育てをするメンバーとともに始めたのが、ママ・フェスタin因島だ。
 自分たちで企画し、運営し、自分たちで楽しむ、それができる場を自分たちで作るというコンセプトでイベントから立ち上げ、サークル活動のような形で続けた。
 活動をする中で、自分たちの居場所政治に対する関心が高まっていったという。

むらいさん:そういう活動をしていると、子どもたちがこれから生きていく社会、たとえば食の安全だったりだとか、気候変動のことだったりとかに目が向いていくんですよね。そこに付随してくるのは政治のこと。
 先に生きている大人の責務として後に生きる子どもたちの環境を整えるっていうことを、やらなきゃいけない。重大な責任みたいな感じで背負っているわけじゃなくて、先に生きるものが後に生きるもののために道筋を作る、環境を整える、よりよくする、ということを、あたりまえに大人としてやりたい。
 そういうことを考えた時に、目につく課題をちょっとでも駒を進められる可能性があるのは政治だ、と思うようになりました。

集まりごとのいろんな人が立ったキッチン。

次世代に最高のバトンタッチを

酒井:なるほどね。この機会がなかったら聞けなかったかも。
 グラフトって、「次世代に最高のバトンタッチをする」っていうのがコンセプトでやってるんですよ。だから近いエリアにいる人なんだと思った。

むらいさん:役割分担ですよね。おんなじような社会をみんな目指していて。ただ向き不向きもあるし得手不得手もあるし、持てる力でやっていくのでいい。

酒井:それぞれの居場所やできることを持った人たちが、横に並んで手を取り合うことはできるもんね。それはとっても共感できるね。

むらいさん:わたしが市議会議員になったとしても、すぐに何かを大きく変えていけるような力を持つわけではないんです。でも、みんなが手を取り合って、たとえば畑を耕すとか、生きる上で本質的なことをやる人がいて、それを整える人がいて、先を見る人がいる。みんなが同じ未来に向かって進んでいく中での役割分担として、行政側のことをやる人、そういう一員でありたい。
 わたしが選挙に出ることによって、あまり目を向けられていない市議会っていうものに、もう少し関心を持ってもらえるといい。みんなで作っていく暮らしとか、わたしたちの地域とか、そういうものを自分たちでもっと手繰り寄せるっていうことをみんなでしていく、ひとつのきっかけになればいいなと思います。
 わたしは、これといって突出した、誇れるような力はなにも持ってないけれど、いろんなことができる人をコーディネートするとか、人を集めて繋ぐとか、場を作るっていうことは少し長けているかもしれない。
 そういう、わたしが持てる力を最大限発揮できる可能性があるのが市議会議員っていう立場なんじゃないかというところに行き着いたので、チャレンジしようと思っているんです。

それぞれのできることを活かし持ち寄られたパンやケーキ。

未来への希望と価値観の広がり

 酒井は、一般社団法人の理事としてひとつの町の行政や議会と関わるようになり、政治に対して課題感を感じることも増えた。そんな中、どう希望や未来を描くべきか、考えるようになったという。
 酒井自身も小さな子どもを育てながら、子どもたちが生きていく未来や、伝統工法を未来に残していく形を模索していくと、むらいさんが描く未来と通じるものが見えてきた。

酒井:政治の場で未来を語ってほしいんですよね。人を育てる、子どもを育てるっていう意識を持って欲しい。

むらいさん:育むってことですよね。
 ぱっと見の議会の印象って男性ばっかりで、かたい頭で話しているんだろうなと思っている人もいるけれど、関わってみると、その中に心ある人たちがいることが見えてくるんです。それを見ようとしていないだけだったりもする。そういう存在もいると知ると未来は明るいな、希望はあるなと思うから、より明るくしていけるんじゃないいかなと思うんですよね。
 わたしが何かいい制度を作るとかそういうことではなくて、みんなで意見出し合って困りごと出しあって、じゃあどうしていこうかっていう話し合いをできればいい。そういう社会を作っていく、それが尾道市だけじゃなくて今までつながった全国の人たちにちょっとした希望を与えるような動きになればいいなって。

酒井:希望を知りたいですね。これからの若い世代に希望を伝えていくっていうのは、大事なミッションですよね。
 グラフトとしては、伝統工法を未来に残そうなんて、そんなニッチなエリアに希望はどこにあるのかっていう話なんですけど、地方に行くと空き家がいっぱいあって、それを直す時に、いにしえの技術がないと直せない。
 一つの価値観で世界はくくれない。全部正解で、ハズレはない。そう考えたら実は仲間であって、敵じゃない。伝統工法がすばらしいって言いたい時に、石膏ボードやビニールクロスはダメって否定しちゃいけないんですよ。ただ僕はこれだ、と言っているだけで、そうじゃない方を選んでいる人を否定する必要はない。こっちを成り立たせるためにそうじゃないものを否定しなきゃいけないわけじゃない。そう考えたら、もっと気軽に伝統工法を語れるようになったんです。このまま石膏ボード使い続けたら未来は真っ暗だと、怖がらせるところから伝統工法を語りたくない。もっと違う論法や戦略があるべきで、その方が面白いんですよね。

何気なく置かれたものや飾られたものが映える。

 違う考えややり方の相手を許して認めること、それは尊重するということで、尊重するためには知らないといけない。そのためにつながる、助け合う、ということが必要で、それは、つながり合う場をつくれる人がますます大事ってことなんじゃないですか。それが大きいものである必要はないし、小さいところから始めて小さい単位でつながっていく方がとっても自然ですよね。
 それができる人なんだと思うから、あつこさんが手探りして苦しみながら見えてきた、誰のものでもない、新しいあつこさんのステージですね。

自信をくれる場所

むらいさん:この場所は、やりたいことがやれる場所です。これまでいろんな活動をしたり、講演会をしたり、イベントは数知れずやってきたけれど、全部借りた場所でやってきたので、自分に誇れるものがないっていう焦燥感があって…。だから、わたしの居場所、拠点が欲しかったんです。今は、ここをベースにわたしはいろんなところに行って、また戻って来れる。わたしにはここ、ミルドエゴがあるって思える。そんな風にわたしに自信を与えてくれたんです、ここが。

酒井:すごいことですね。そう言っていただけてうれしい。ありがとうございます。
 僕は、迷いの中のあつこさんとの出会いだったから、今のあつこさんを見た時、何が違うかっていうと、自分の取り扱い説明書をちゃんと自分で語れてるってことなんですよ。それが一番の違い。それは多分、自分が幸せに一番近い状態だし、その状態なら人を幸せにできる可能性が高い。

むらいさん:ほんとそうなんですよ。わたしは、ちゃんと動ける、自由に生きられる。選択を自分でして、臆せず表現することができる、という満足をしたんだと思うんです。じゃあ次は、って思った時に、行政側に入ることで窮屈な思いをすることもあるかもしれないけれど、その中で同時に面白さややりがいを見出せるって思ったんですよ。だから今、めちゃくちゃワクワクしてるんです。

酒井:ご自身の役割が変わった時のここの居場所のあり方が、またちょっと楽しみですね。その時はその時にあった形で。

むらいさん:そうなんだろうなと思っています。その時その時のタイミングや状況に合う形で、また新しい形を模索していけたらと。
 市議会議員になって楽しく生きていけるイメージができたのには、これまで知り合った女性市議会議員さんの影響があります。生き生きとしている姿がとてもいいなと思って。彼女たちが、〇〇カフェという、市民が誰でも気軽に参加できる座談会や相談会を開催しているんですね。市議会議員になったらわたしも公の場所でそういう場を作りたいと思うんですが、その時にここでの経験が生きるのではないかと考えています。
 集まってきた人が、ふつうに喋るだけでもいいけれど、なにか困ったことをぽろっと出せる場所がつくれたらいいな。

むらいさんの居場所となったキッチン。

 話を聞かせていただいている間も、ただの聞き手と話し手という関係ではなく、同じ空間を共有する不思議な空気がただよう。
 このキッチンに、これからどんな人たちが集まり、どんな話が広がるのか。むらいさんご自身のことも、この場も、どう進んでいくかはまだまだ未知数だが、楽しいことが起きていく予感がいっぱいで、話を聞いているこちらまでワクワクが伝わってくる。
 これからも、むらいさんは自信を持てるこの場所から、誰かがちょっと息をしやすくなるような、みんなの居場所をつくっていくのではないだろうか。

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