ふたりの313番地|Kitchen313Kamiyuge
見出し画像

ふたりの313番地|Kitchen313Kamiyuge

graft_ehime

 お施主さまインタビュー、今回はgraftとしてスタッフ武田由梨が初めて関わった、思い出深い現場です。
 Kitchen313Kamiyugeの店主・宮畑真紀さんと、真紀さんの夫で瀬戸内編集デザイン研究所の宮畑周平さん、graft代表の酒井、graftスタッフ武田の4名で語り合う、これまで以上に和気藹々とした会となりました。

今回のお施主さま:宮畑真紀さん、周平さん(Kitchen313Kamiyuge/愛媛県上島町)
聞き手:酒井大輔・武田由梨(graft)
構成:千々木涼子

三つの工事と Kitchen313Kamiyuge 

 愛媛県上島町は、瀬戸内海に浮かぶ、25の離島からなる町だ。そのうち4つの有人島、生名島・佐島・弓削島・岩城島からなる「ゆめしま海道」は2022年春に生名島と岩城島を結ぶ岩城橋が完成し、いよいよ全線開通となる。
 Kitchen313Kamiyugeは弓削島の北側、上弓削に位置し、その名の通り313番地にある。

画像18
島の風景に溶けこむ、路地裏の工房

 営むのは、神戸から移住した宮畑真紀さん。手ごねのパンやベーグル、夫の周平さんが焙煎したコーヒーの販売などを行なっている。週3日の営業日には、真紀さんの焼くベーグルや真紀さんとの会話を求め、たくさんのお客さんが足を運ぶ。
 工房となっているのは、築およそ100年、登録有形文化財にも指定された蔵。元は真紀さんのお父さんの生家だという。2014年のオープンを挟み、第一期から第三期まで工事を経て、現在の姿へと変貌を遂げた。

画像18
手ごねでひとつひとつ丁寧に作られるベーグル

 graftが携わったのは、第三期工事となる、2018年から2019年にかけて行われた施工だ。武田がgraftに参画して、初めてとなる現場だった。
 酒井は、武田が産休に入るこの機会に、初めてともに携わった現場で話をすることで、ひとつの区切りとして送り出したいと考えていた。

画像15
早朝4時頃から仕込みをするという真紀さん

思いを受けとめる

 graftへ設計の依頼があった段階では、酒井と宮畑夫妻はまだお互いを深く知らなかったという。それにも関わらず、酒井へ依頼したわけはなんだったのか。そこにある思いを伺っていくと、改修工事を重ねて深まった、建物や暮らしに対する思いがあった。

周平さん:酒井さんは、こっちがなにか要望を伝える、それに対して、できないって言わずにどうすればできるか考えてくれる。たとえば、こういう形がいいって言った時に、「なんでこういうかたちがいいんですか」ってこっちのリクエストの根っこの部分をちゃんと理解しようとしてくれる。
 俺の言っている100%同じものはできなくても、違う形でもこれなら実現できるんじゃないっていうのを、ちゃんと考えてくれてたんだよね。

酒井:そうかもしれない。

周平さん:第一期、第二期の工事を経験して、できるだけフィーリングの合う人と仕事がしたいっていうのがあって。じゃあ酒井さんにしようって言って、ほかの人も検討せずに決めたよね。

酒井:ありがとうー。

真紀さん:第一期はね、工房だけやったんですよ。私たちは、自分たちでやりたかったんよね、解体とかも。わがまま聞いてくれる人がいいなぁみたいな感じで。
 第二期はこの母家の中よね。建築士さんと打ち合わせをしていたときに屋根がダメになって、屋根ありきでここは手付かずのまま、屋根とお風呂だけ変えてもらったんよね。お店のスペースは中庭を通すことで広がったっていう、ところまでで終わった。

画像19
graftが手がけたカウンターテーブルを挟み、語り合う4人

真紀さん:じゃあ次はって、私の思いもすごいぎゅぎゅぎゅっとしてきたんよね。イメージが。ここの家は、古き良きを残したまま、大きな間取りを変える必要もないし、それでも、私がこの中でコミュニケーションできるものを作っていきたいって。

周平さん:
そこでいよいよ酒井さんにお願いしようとなったわけですよ。

真紀さん:
それまでにも会って喋ってたのかなぁ。この人やったら話聞いてくれるわがまま言えるって思って。
 ちょうど由梨ちゃんがおかっぱカフェしながら建築の仕事したいって言い始めたころで、じゃあちょうどいいねって。
 私の片付けられない悩みとか聞いてもらって、ていうのがスタート。由梨ちゃんもここが始まりだね、みたいな感じで始まった。みんなで図面見てああだこうだ言いながらね。

画像20
カウンター下の収納にも、こだわりが詰まっている

由梨:泊まらせてもらいましたもんね。

真紀さん:とにかく私を見てほしい
、私がどんなふうに動いているかとか、どんなふうな性格で、とか全部見てくださいって言って泊まってもらった。

酒井:
真紀さんを見る合宿(笑)。

真紀さん:
収納がすごく下手で片付けられない。でも思いついたところにはぽんぽん置く、みたいなのを全部見てもらって、形にしてもらったんです。

酒井:
思い出してきた。このキッチンやったの懐かしいもんねぇ。

画像3
真紀さんの使い勝手に合わせた、仕舞い込まない収納棚

大工さんと共有したリスペクト

周平さん:髙田くんが、すごくよかったよね。

真紀さん:現場の作業を、家と会話しながらやってくれたので。この下とかすごいんですよ。見えないけど、梁の部分とかを生かしながら、潰すこともなくやってくれたところがいっぱいあって、彼の施工もすごくよかった。

酒井:俺の設計以上のことをしてくれてるからね。仕上げもね。

由梨:古いものと新しいものをいいバランスで融合させるのが楽しい、って髙田さんが言ってた。難しいけど楽しいって。

酒井:彼の方向性のひとつのきっかけになった仕事でもあったんじゃないかな。

真紀さん:うれしいですねぇ。

画像19
庭先での墨つけ。この後はもちろん手刻み

由梨:今関わっているほかの現場でも、古いものや元あるものの、個性がより生きるようにって意識をしているみたい。

周平さん:それは俺らの意識と近いんじゃないかな。
 ここの家も、できるだけ元に戻すリノベをしようって言ってた。

酒井:最初からそう言ってたね。うちらもそれを聞いて、それやったらやれるかなと。このお家いいなぁと思ったから。建物へのリスペクトありきでやらないと、て言ってた。
 そこも含めて、ほんと楽しかったです。

画像17
カウンターテーブルの端に刻まれた、313の焼印

初めての現場監督

 graftの一員として、武田が初めて施工に関わったのが、Kitchen313Kamiyugeだった。弓削島の隣に位置する佐島で、古民家改修を経て、book café okappaをオープンさせた武田は、なんらかの形で建築に携わりたいと考えていたところ、現場監督として携わることとなった。
 離島ということもありなかなか現場に足を運べなかった酒井にかわり、武田が大工の髙田さんとともに作業を進め、現場で判断することもあった。学生時代に建築を学んではいたものの、現場監督は初めての経験だった武田にとって、学んだことは多い。

酒井:graft的には、由梨ちゃんを迎え入れて最初の現場だったから、それを受け入れてくれたのも嬉しかったな。ありがたかった。
 本人はどうやった?俺週一くらいしか来れへんかったけど。

由梨:私は、現場が始まってからはよくきてましたね。

酒井:俺より工事の途中の様子とか、知ってるんやないかな。俺が現場来んで良かったんも、オカッパで改修工事を経験してくれとったから。大工が髙田さんだったのもあって、任せられたかな。

由梨:何をしたらいいんだろう、っていうのをすごく模索しながらやっていて。髙田さんとのコミュニケーションも、ちゃんと現場で仕事するのが初めてだったから緊張して。現場監督ってどうしたらいいんだろうって、どきどきしてました。髙田さんのペースを崩さないように自分ができることを探したりして。

酒井:ここはお施主さんも頑張る人たちだったしね。

画像5
book café okappaでの経験を活かし、現場監督を務めた武田

真紀さん:すごい大変な現場やったでしょう。ふたつのビー玉が、あっちからコロコロ、こっちからもコロコロ、それぞれ好き勝手なこと言って。

由梨:ああ(笑)。

酒井:面白かったなと思うのは、お施主さんって普通ひとりだけど、ふたりやったわ、ここは。

真紀さん:あーそうかも。

酒井:でもただ、アドレスはあるから。真紀さんはここ、周平くんはここ、っていう住所があったからやれたと思う。

由梨:
さっきからお二人のやりとりを聞いていて、当時の工事の時の打ち合わせを思い出してました。やりとりを包み隠さず見せてくれるから、それは個性を知るいい情報源だった。

周平さん:第一期、二期の工事を経て、自分たちのことをしっかり分かってもらわないと、いいものはできないっていうのがあったからやと思う。

真紀さん:本質ね、自分たちの本質。だから完全にさらけ出したよね。自分の得意なところも不得意なところも、こういう性格やとかっていうのも。だからすごく気を使わない。いい意味でね。

周平さん:建築って生活を設計するわけだから、そういう本質を見てつくるようなことってあって然るべきなんやと思う。建築家はだれしも。

真紀さん:表面だけ見てたら、きっと2、3年後とかに、ここにこれは必要なかったなーとかあるよね。

周平さん:そういう意味でも、施主側のやるべきことっていうのは、自分たちをちゃんと理解してもらうっていうことなんじゃないかなと思うね。
 それは自分の仕事にも当てはまっていて、クライアントがいて僕らはものを作ってるわけだけど、一回の取材だけでは全然わからないことってたくさんあるよね。

真紀さん:だからぜひみなさん合宿を(笑)。

由梨:緊張がほぐれてきたころに素が出てきたり。こういう関係をまざまざと見てたから、次の現場は今治でご夫婦、その次の現場も中島でご夫婦だったんですけど、このご夫婦の関係性はどうなのか、奥さんは主張が少ないけど旦那さんの前だから気を使って言っていないだけなのかな、とかそういうところを時間をかけて見るようにしていたのかなって今振り返って思う。
 313での学びですかね。

酒井:うれしいー。

真紀さん:よかった。何か意味があったんだったらうれしいね。

酒井:確かにずっとご夫婦だもんね。人間関係に対して線をひかないっていうことが大事だなっていう自分の中で答えがあったから、それを由梨ちゃんが自らの口で言ったのが、めっちゃ嬉しかったわ。
 ほかの人と関わって、その人が成長しているのってうれしいね。自分の子どももうれしいけど、そうじゃない、また別の関わりの中で濃く関わった人がそうなっているのもうれしいね。
 そのきっかけの場です。それはほんとに感謝ですね。ありがとうございます。

画像20
通り土間に凛とした檜の床板。奥にいるのがスタッフの武田

根底にあるもの

由梨:改修工事3回目だったから、いい具合にできたんでしょうね。

酒井:このお二人がでしょ、経験値があったから。

真紀さん:まぁ彼(周平さん)がしっかりとね、真ん中にいてくれたからね。私は感性で生きているけど、建築っていうものに対する知識は彼が持っているからさ。
 こういうイメージだとか、言葉にしにくい、酒井さんに伝えたいことを二人でぐるぐるぐる話し合ってたよね。

周平さん:この家の全体的な構想っていうか、意識をどんな風にもっていきたいかっていうのは、ここにきた当初から、第一期、第二期の間に、もう相当話し合ってきてるから、そこは共有できてる感じあるよね。

酒井:その感じはあったね、最初から。何か蓄積あるなっていうのは感じた。

真紀さん:移住してくるときに、ここで地に足をつけて自分たちが生きていく。そして子どもたちがここから自立していくっていうのが私たちがここにきた意味でもあったので。
 ここのお家をどう活かしていくかということは、それありきだったので、そういう部分では、私たちの根底のブレがなかった分、伝えたいことも明確だったのかな。
 それを気持ちよく受け止めて形にしてくれたので、完璧です。

酒井:ありがとうございます。

画像4
数年経ち、使い勝手の良さを感じているという

313とセトヘン

 始終掛け合いのようにテンポよく話す真紀さんと周平さん。最近は、自転車に乗ったり、登山をしたり、一緒に体を動かすこともしているそう。
 周平さんは、Kitchen313Kamiyugeにおいてはコーヒーロースターとしての顔を持つ。メインの生業は、瀬戸内編集デザイン研究所(通称セトヘン)として、編集から執筆、撮影まで幅広い形で伝える仕事をしている。建築専門の編集プロダクションにいたこともあり、編集や撮影の対象として「建築」はキーワードのひとつとなっている。

画像18
思い入れのつまった工房の前で笑顔を見せるふたり

酒井:周平さんはどういう関わりなんですか。

真紀さん:313の人としてはいないんですよ、周平くん。焙煎はするけど。

周平さん:そうやね。外注されてる感じ。

真紀さん:だからその後のことは周平くんは携わらないし、ブランディングは、313にいるからしてもらうんじゃなくて、あくまでセトヘンとしてなんです。
 ブランディングしてもらうとすれば、313はどう生きるか、私はどう生きるかになるんですけど、それは整理してもらうということですよね。それをしてもらえたら、私もより生きやすい

周平さん:俺はあえて313のPRになるような写真は撮らないし、テキスト書いたりもしない。自分の店なんだからやれる範囲でやったらいいと思う。

真紀さん:写真撮影や発信も、誰かが担ってくれたら見栄えが良くなったり、集客にはつながるかも知れないけど、私の鈍臭い部分、苦手なこと、それもわかった上で来てくれるお客さんがお互いに心地いいと思っていて。
 だから、頑張ってきれいに見せる必要も背伸びする必要もなく、ほんとにシンプルにやれたらいい

画像7
島で採れる季節の野菜や果物が使われたベーグルも人気

それぞれのアドレ ス

 Kitchen313Kamiyugeとセトヘン、それぞれが個人事業主として独立しているからこそ、お互いへのリスペクトと、それにより成り立つ関係があるというのが、おふたりを見ていると感じられる。それはお互いにとっても、仕事と暮らしをともにしていく上で大切にしていることだという。

真紀さん:うちの場合は、313番地の中に313とセトヘンがあって、違う仕事はしているけど、日々これってどう思うとか話ができるんですよ。生きているベースが一緒なので、事柄は違うけれど、共有はしやすいかな。いろんな話をすることができる人がそばにいるので、解決方法を一人だけで考えることが少ない。
 工事の時もそうなんですけど、今でも自分の生き方とか子どものこととかの話は、車輪を回すように、思っていることを話し合ってる。お互いに、これどう思う、とか言って、それに対して、こうなんじゃないとかああなんじゃないっていうアドバイスをもらいながら、生きている感じ。

周平さん:そうな。それはお互い自立した立場だからやと思う。

酒井:どちらかが寄り掛かったらそうはならないよね。

周平さん:真紀は真紀で日々仕事の判断をしながらやってきてるし、俺も同じ。そういう判断って正しいんかなって思う時はあって、そういう時は聞くよね。

真紀さん:全部が全部この人の意見っていうわけではないけど、自分がジャッジする方向性を確認する。気心知れているので聞きやすいし、的確なアドバイスをくれるだろうって思うので、間違いがないですよね。問いかけする相手として。

周平さん:俺も一緒やね。これがいいと思うけどどう?って。自分はこう思ってるけど、それ客観的にみたらどうなのかなっていう確認。

由梨:独立してて、信頼しあってる感じ。

画像19
手際よく仕込みをしていく真紀さん

313番地のこれから

 通算で5年以上かけ、三期に渡る工事を経て建物は完成形になった。それでも、その中で行われることの進化に終わりはない。
 どう暮らしていきたいのか、どんな仕事をしていきたいのか。それは改修工事のときにも考え、話し合い続けてきたことだったという。
 313番地で生きる、Kitchen313Kamiyugeの真紀さんとセトヘンの周平さん、それぞれが考える今後の暮らしと生業について、伺った。

画像13
料理をしながらでもカウンターに座る人と会話できる台所

真紀さん:子どもたちが巣立ったあとは、もう私はこんな感じで、ここ(313)を開いて、おいしいものを人と囲んで、人と繋がれる場所が作れたらいいなと思いますね。誰か作ってくれてもいいし。

酒井:自分がしないといけないってわけじゃないんや。

真紀さん:そうじゃないね。だから、誰が使ってもわかるようにもっと整理整頓したい。

酒井:ずっと一人でやるん?

真紀さん:そこは課題ですよね。同じ思いを持ってる人がそばにいてくれて、一緒にできたらいいかもしれない。でも、そんなに大きく広げたいとは思ってないし、できることをできる限りでいいかなとも思ってる。
 広げるよりも、今ここにあることをずっとやっていける方がいいし、流行には乗らない方がいいと思ってて。ベースをコツコツやっていくことが、私の生きる道かな。
 ベーグルやパンはあちこちにあるけど、それはツールであって、お客さんは私に会いに来てくれるから、その人たちに喜んでもらうのがいい。

酒井:なるほどな。

真紀さん:何度も言うけど、シンプルに生きていきたい

酒井:シンプルにっていうのが自分らしくって聞こえる。

真紀さん:じゃあ私の自分らしさっていうのは、自問自答しながら探すのかなって思うけど、一人で生きているわけじゃないので、周平くんがいて子どもたちもいて、彼らの価値観もどんどん更新されていて、彼らから教えてもらうことで、自分の生き方や価値観が更新されていく。
 もう満足してるんですよ、今の生活。夫がいて子どもたちがいて、自分のお店を持てて、好きやって言ってくれるお客さんがいて、毎日ご飯作って食べれて食べてくれる人がいて。目に見えない裕福さはもう持っているなって思っていて。明日死んでもいいような生き方を常にしたいなと思ってる。だからおいしいものはまだ食べたいんですけど(笑)。
 このお家を父から譲り受けたこと、第三期工事まで携わってくれた人によって、後世に残せることで、最大のミッションはクリアしてるかなと思うので、生きた価値はあったなと思っている。あとは周りの人が幸せに暮らせるような生き方を私がしていけたらいいなと。

周平さん:それに比べたら、俺はまだ欲深い。何がほしいとかじゃなくて、もっとこう仕事こういうふうにできるんじゃないかとか、まだできるようなことがたくさんあるんじゃないかなって。
 この間それがモヤモヤして、考えを整理するのに山登りに行ったら、でも俺って別になんか満ち足りてることは満ち足りてるんやなと思って。子どもも元気やし、家も問題はないし、素敵な空間もある中で生きてるから、幸せなんやなって思ってん。
 でも、自分にできる可能性みたいなのはまだ残ってる気はするから、それは追求していきたい。

酒井:そう思ってることも幸せなのかもね。

graftのこれから

 武田が産休に入るにあたり、酒井はgraftとしてどうこれからを見据えていくのか、考えている。現状を振り返ると、女性たちのしなやかな力に支えられていること気づく。そのことを掘り下げていくと、周平さんとの共通点や酒井に依頼をするほど共感し合えた理由が見えてきた。

酒井:結果的にgraftって女性の力をとても借りてるやん。それって俺からすると不思議ではあるし新鮮だけど、わかる気もする。感性的にゴリゴリの男の人やと絶対合わないし、やわらかさを持ってるくらいの人が合う。

由梨:酒井さんも周平さんもやわらかい男性ですよね、同じ匂いがする。

周平さん:俺も主張が強い人よりもやわらかい人が合うっていうのはあるなぁ。だから酒井くんは波長が合うのか。

酒井:今気づいたん(笑)。

周平さん:男って競争の中で生きてるからさ、勝ち負けがあるんよね。それがなんかしんどい。助け合って生かしあってなんぼやろ。

由梨:それは女性の得意分野かもしれないですね。

酒井:そっちの方がいいよね。

周平さん:そうやなあ。

酒井:だから髙田さんもそういう部分持ってて、大工さんの中でもゴリゴリではない。男気あるけどね。

画像8
同世代の個人事業主同士、同じような課題を感じることも多い

人と一緒にはたらくことと、人を信頼するということ

酒井:graftのことは、由梨ちゃんがいないとひとりではようできんなって感じなんよ。由梨ちゃんが現場も知り出したとこやったけん。誰かほかに一緒にできる人がいるかって言っても、人ってすぐ会えんやん。
真紀さん:なかなか信頼できる人っておらんよね。

酒井:それも壁なんよね。信頼するっていうことをどういう風に捉えるかだなと。若者に会いに行ったりもしているけど、出会った相手が自分より仕事ができるか、求める技術を持っているかっていう基準で考えてると、その基準はなかなか満たせなくて、出会ってるようで出会いになってないこともある。そういう基準で見るのをやめてみると、若い人に頼めることっていっぱいあるんやな、って気づいたんよね。
 それで、最近は仕事を勝手に作って勝手に配る、みたいなことを始めてる。なにか、由梨ちゃんに伝えたかったこと、託したかったことを、別なかたちで別な人にも託せたらいいな、と。

 そうすると、自分はもういいんだよね。そうすることができる自分って、もう満たされているなって思いだしたんだよね。それもあって、新しく工場を借りたりしていて、人から何してるんって言われるようなことかも知れないけど、未来が見えてるから、できる感じ。そんな感じよ。これからも新しい予期せぬ出会いがあるんやろうな。
 由梨ちゃんは由梨ちゃんで子育てをしながら、なにかに出会ったり始めたりするかもしれんしね。

由梨:今はまだ子育てが未知数すぎて、来年は来たものをこなすことにしています。ひとまず。

真紀さん:
産後はゆっくりしてください。

由梨:はい。

画像14
出産を控え、この取材を最後に産休に入る武田

 真紀さんお手製のベーグルサンドを昼食にいただきつつ、始終笑いの絶えない時間となった。

画像18
ベーグルやコーヒーを味わうこともできる前庭には、これから育つハーブが植えられている

 三期に渡る工事を経て見えてきたもの。
 第三期工事に関わって見えてきたもの、これから見据えるもの。
 宮畑夫妻にとっても、工事に関わったgraftのふたりにとっても、大きな転機となった出会い、そして施工だった。
 真紀さん周平さんそれぞれの未来は付かず離れず、これからも313番地で紡がれていく。

画像10
313の看板が訪れる人を出迎える

Kitchen 313 Kamiyuge
営業時間 11:00〜15:30
定休日  月曜日・水曜日・金曜日・日曜日
住所   〒794-2503 愛媛県越智郡上島町弓削上弓削313
TEL 0897-72-9075
E-mail kamiyuge313@gmail.com
アクセス 上弓削港から徒歩3分









この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
graft_ehime
時代に沿う伝統構法の家づくりや 古民家のリノベーションを提案したり、 企画やデザインをしたり。 愛媛県の北から南まで、旅のように活動をしています。 https://graft.life/