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AR時代のプラットフォームのARクラウド(ARCloud)とは何か?

※こちらの弊社テックブログより移行しております。
https://tech.graffity.jp/entry/arcloud

はじめに

AppleがARKit、GoogleがARCoreを2017年に発表し、徐々に普及しているモバイルAR。2019年〜2020年にかけて普及すると見ております。普及した際の一つのプラットフォームになるのが、「ARCloud」。世界で広がるAR時代においてかなり重要な概念になるので、まとめておきたいと思います。

1. ARCloudとは?

AR Cloudとは、 「クラウド」に保存された、現実から抽出した「点群の集合」です。 想像が難しいと思うので、Graffityで研究開発している、AR Cloudの一部お見せします。

Graffity 会議室のAR Cloud

上記の青色は全て点であり、現実から取得しています。点は特徴点と呼び、P(x,y,z)という3次元情報を持った点です。現実からこのような特徴点を抽出し、集めたものを点群 or point cloudと呼んでおり、それをクラウドに保存したものをAR Cloudというのです。

2. なぜ今ARCloudが注目されているのか?

理由は大きく分けて2つあります。

2–1 大手IT企業が投資が加速
2017年は、モバイルAR元年とも言える年でした。AppleがARKitを発表し、GoogleがARCoreを発表、FacebookはARStudio、SnapchatはLensStudioという誰もが簡単にFacebook/Snapchatカメラ向けに、ARのコンテンツを作成できるプラットフォームを発表。さらに、Snapchatは新しくBitomojiを立体にしたコンテンツを提供開始し始めました。

実際に、数値としては以下。 

Digi-Capitalの2018年第1四半期に関するレポートによれば、過去12ヶ月で総額36億ドル(約3800億円)の投資が行われたとのことです。第1四半期自体の数字がありませんが、グラフを見る限りでは堅調な数字なようにも思えます。 by Komori

2–2 データをたくさん集めることができるようになった
ARへ投資は、ARの体験を作りやすくするToolレイヤーから行われます。ARKitやARCoreのSDKが代表的な例です。ARKit、ARCoreによりARの技術障壁が下がり、iOS、Android、Unityエンジニアであれば簡単に作れるようになりました。

大量のARのアプリが誕生して、2017年9月からARKitを利用したアプリのダウンロード数はなんと、1300万ダウンロードを超えました。 ARKit-only apps top 13 million installs, nearly half from games上記の変化がAR Cloudにどのような影響を与えるかはシンプルです。

「ARCloudを作るのに必要なデータが取得できるようになった」ということです。

具体的には、ARを使うということは、カメラを使うと同義です。つまり、カメラの滞在時間が増えているということをさします。 カメラの滞在時間が増えると、現実を画像として収集できる機会が増えることに値します。 このように、ARCloudが実現するためのデータが取得できるようになったことはARCloudが注目される大きなきっかけとなっています。

2–3 買収事例
そして、買収事例1号が誕生しました。ARリーディングカンパニーとも言える、Niantic Inc. が Escher RealityというAR企業を買収しました。そして、買収事例1号が誕生しました。ARリーディングカンパニーとも言える、Niantic Inc. が Escher RealityというAR企業を買収しました。

Pokemon Go開発元のNiantic、ARスタートアップのEscher Realityを買収し開発強化へ

Escher Realityは、ARCloudを作るカンパニーであり、複数の大手IT企業からオファーがありつつも、Niantic Inc.がもつ膨大なデータに価値を感じ、買収オファーを受け入れたそうです。 買収事例が出たことにより、投資も加速していく。そのような正のサイクルに入っています。

実際に、Nianticは、ARのプラットフォームを発表しました。 ここでは、Occlusionという技術を発表し、物体の裏にピカチュウが隠れることができております。

3. ARCloudの価値
では、ARCloudの本質的な価値はなんなのでしょうか? 答えはシンプルで、「人々が空間を共有できるようになる」ということです。以下は、USで10M以上も調達した、AR CloudカンパニーのPVです。

このように今まで、共有できなかった「空間」を共有できるようになります。

4. AR Cloud の仕組み

では、AR Cloudはどのようにして作られるのか?ここでは簡単な触り部分をお伝えします。 AR Cloudは、研究領域でいうと、SLAM ( Simultaneous Localization and Mapping )という、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う領域に属します。

重要なのは、MappingとLocalizationです。

こちらのMappingとLocalizationは、ブログで書くと長くなるので、別記事にしたいと思います。

5. 競合

AR Cloudの戦いは始まったばかりで、勝者はまだ決まっていません。 勝負はデータにあるからです。どこも技術を確立しましたが、NianticとSnap以外にカメラの滞在時間がしっかりとあるプロダクトを作ることができていないからです。逆にいうと、NianticとSnapは貴重なデータを取れているので一歩リードといったところでしょうか。

現在のARCloudスタートアップは以下になります。

5-1 ARCloudスタートアップ
※2018年7月時点

Blue Vision Lab
・HP : https://www.bluevisionlabs.com/
・API公開 : クローズド公開
・資金調達額 $14.5M from GV

Sturfee
・HP : https://sturfee.com/
・API公開 : クローズド公開
・資金調達額 : $2.7M

6D.ai
・HP : https://www.6d.ai/
・API公開 : β版公開
・資金調達額 : 非公開

Ubiquity6
・HP : https://ubiquity6.com/
・API公開 : 未公開
・資金調達額 : $10.5M from Google

Escher Reality
・HP : http://www.escherreality.com/
・API公開 : 未公開
・資金調達額 : Niantic 買収

vertical
・HP : https://vertical.ai/
・API公開 : for unity and swift
・資金調達額 : 非公開

YouAR
・HP : https://www.youar.io/
・API公開 : 未公開
・資金調達額 : 非公開

また、大企業ももちろん参入しており、AppleはARKit2.0にて、GoogleはARKit、ARCore向けにCloudAnchorというARCloudのSDKを発表しております。

5-2 ARCloudスタートアップの勝ち筋
まず、前提として、多くのARCloudスタートアップのExitストーリーは売却です。 売却先はシンプルで、データをもつカンパニーになり、Niantic、Facebook、SnapChat、Google、Apple 、Microsoftなどになると考えている。

このような企業に売却すると大量なデータが手に入ります。よって、売却する際に、重要なのは「精度と速さ」です。 つまり、精度と速さある地域においてベストな結果を出すこと がExitに置いてポイントとなります。

ここで大切なのは、世界中のデータ収集に重きをおかず、ある地域のデータ収集に重きをおくところです。 しかし、ここでの課題が登場します。

データ収集するためのアプリケーションがない

完全に鶏卵問題に直面して、多くのARCloudスタートアップは死んでいくと考えます。

これを解決するためのソリューションは2つ

データを提供するアプリにお金を出す ... ヒットするであろうアプリとパートナーシップを組む。
データを提供するアプリにtokenを出す ... ICOを行い、データを提供してくれた人にtokenを発行する。すでにGoogleMapのストリートビューでは類似のことが行われており、ポイントをもらうことができます。
よって、以下の勝ち筋にまとまってくると個人的に考えております。

Niantic or Snap がそれぞれ買収したカンパニーと一緒に開発したARCloud
Nianticは買収済み。Snapは今年後半か来年中には買収するだろう。
ヒットするアプリと組んで、開発したARCloud
ICOをうまく成功させて、ユーザーがtokenを取得するためにデータを提供する形で開発するARCloud
MAPがそれに当たる

6 最後に
2019〜2020年は、ARCloudの勝者が決まって来る年になると思います。 Nianticが現在は先行していますが、ぜひその他のベンチャーにも期待! もちろんGraffityも来たるべくARCloud競争に着実に準備を進めていきたいと思います。

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