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Well-being Make〜「メイクアップ」というボーダレスなコミュニケーションツールを通じて〜

「カルチャーを通して異文化理解を深める」ウェブメディアGradeco.

第二回目の取材では、一般社団法人Well-being Makeの尾崎さんにお話をお伺いした。
「メイクアップ」を通して「多文化共生」を目指すという尾崎さんの活動の裏にはどんな思いがあるのか___

「メイクアップ」というツールの可能性とは___

双方への深い知識を持つ尾崎さんにしか語り得ないお話をお聞きすることができた。

まずは一般社団法人Well-being Makeを設立されたご経緯をお伺いした。
2013年に、尾崎様が個人的に社会福祉法人さぽうと21様にてミャンマーから来た方へのメイクボランティアサポートをされたところから2016年、Well-being Makeを始める。月に1回、どんなルーツを持つ人でも参加できるおしゃべり交流会を開催する。

一般社団法人となったのは2019年のこと。Well-being Makeは新しい道を歩み始めたばかりだ。昨年には、中国語、英語、タガログ語、やさしい日本語の計4カ国語での防災マップの作成にも携わった。

・やさしい日本語とは?
やさしい日本語とは普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすく配慮した日本語のこと。 1995年1月の阪神・淡路大震災では、日本人だけでなく日本にいた多くの外国人も被害を受けた。 その中には、日本語も英語も十分に理解できず必要な情報を受け取ることができない人もいたのだ。やさしい日本語は日本人も学んでいかなければならない、と尾崎さんは教えてくださった。

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(やさしい日本語、英語、中国語、タガログ語によって制作された防災マップ)

そもそも、尾崎さんが異文化理解とメイクを関連付けられたきっかけはなんだったのか。
もともと尾崎さんがメイクアップを習っていらっしゃった時、自分の技術を誰の為に役立てたいかを考えた時に日本に住む外国人の方(日本語を母語としない方)だったという。

そんな尾崎さんが今までの活動においてご苦労されたこともお聞することができた。

一番にはやはり、活動の認知度を上げることだであるという。月1のおしゃべり交流会の新規参加者を集めることは特に難しく、参加者はいつも約5〜6人。参加者を集めるために常にチラシをカバンに忍ばせ道端で出会う外国人の方に手渡ししていた、というエピソードからも尾崎さんの熱意が伝わってくる。

「心が繋がった」瞬間

では実際にメイクアップによって「異文化を持つ人と心が繋がった」と感じる時はどんな時なのだろうか。

尾崎さんは、施術後にはほぼ全ての方との心の距離が近づくとおっしゃる。誰でもメイクアップを通して綺麗になると気分が明るくなるのだ。また、施術では肌も触れ合うため物理的な距離も近いところから、心の距離も縮まる気がするという。もしかしたら「会話」というツールよりも相手のことをよく知るためには有効であるのかもしれない。

そんな、人々の心を近づける魅力的なツール「メイクアップ」を通じたWell-being Makeの活動では毎回やりがいを得られるそう。

特に、日本人とのコミュニケーションに悩んでたアフリカから来た女性との出会いが印象的だと尾崎さんは語ってくださった。その女性は、お子さんが保育園に入園することができなかった原因が「自分が黒人である」ということだと思い込み、悩んでいた。実際にはそんなことはなくただ定員の問題だったのだが周りに相談できる人もいない。そんな時に尾崎さんが仲介に入り、一緒に誤解を解いたのだ。その後彼女が自分のメイク道具を持って尾崎さんのところを訪ねてくださり、「私たちがするメイクはこうなのよ〜」などとメイクアップを通じた交流をすることができた。それにより一層心の距離が縮まったという。またその後、彼女が定期的に子供を通わせていた託児所の先生から「お母さんとても明るくなりましたね!」と言われたそうだ。

まさに「メイクアップ」というボーダレスなツールを通じて双方の文化理解が実現した瞬間だったのであろう。「メイクアップ」は一見「異文化理解」とはかけ離れたジャンルであるが、実は国境を超えたコミュニケーションツールなのだ。


メイクアップ×コミュニケーション=異文化理解

前回の取材で「食文化」は異文理解の達成に有効であるとお伺いしたが、異文化理解において「メイクアップ」はどのような可能性を秘めているのだろうか。

尾崎さんは、ご自身の経験からも「メイクアップは異文化理解に有効」だとおっしゃる。例えば、先ほどのアフリカの女性が「自分は黒人だから保育園への入園を断られてしまったのではないか」と感じてしまったように、日本社会には黒人の方を怖いと感じる人々も存在する。どうして肌の色が違うだけで「怖い」と感じてしまうのか。それは、ただただ自分と見た目が違うから、逆にいうと見た目が違うだけだからだ。

しかし、そんな「見た目」から訴えるツールがメイクアップなのだ。メイクアップは多文化共生、異文化理解という枠組みには直接繋がらないかもしれないが、メイクアップというボーダレスなツールで人と人が繋がったその先で、異文化理解が達成できるのではないかと尾崎さんは語ってくださった。

最後に、5年後、10年後に向けて挑戦したいことをお伺いした。

「自分がメイクをしてあげた方が今度は先生になって自分の国でメイクを発信してくれたりしたら面白い!」と尾崎さんはおっしゃる。今は受け身の人が発信する側になってくれたら文化理解の連鎖が生まれる。そんな「異文化理解の連鎖」の先には差別や偏見の無い、国籍関係なく誰もが「Well-being」で過ごすことのできる社会が待っているのかもしれない。

今回はWell-being Make代表 尾崎のりこさんにお話をお伺いすることによって「異文化理解」においての「メイクアップ」というツールの可能性を明らかにすることができた。

「メイクアップ」は一見「異文化理解」とは関係の無さそうなツールであるが、そんな意外なもの・ことに関心を向けることで達成可能な目標もあるのかもしれない。

「メイクアップ」は国境や性別を超えたコミュニケーションツールであり、人々の心をハッピーに変えていく無限のポテンシャルを含んでいるのだ。

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一般社団法人Well-being Make
代表 尾崎のりこ さん
公式HP:https://well-being-make.amebaownd.com/
Instagram:https://www.instagram.com/wellbeingmake/ 
Facebook:https://www.facebook.com/wellbeingmake/