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アリュールオムとクロレッツ

香りと記憶の科学的な話は幾度となく記事にされているので、あえて説明しなくても良いと思う。

私の周りには香水を日常的に纏う人はほぼいない。
風の匂いや草木・森・海・街、そういった匂いは記憶と結びついているものの、香水に関してはほとんどが”香り”でしか記憶していない。
ここ半年くらいの間に嗅いだ香りを記録しておりその数は100作品を超えているのだが、その中に具体的な記憶と結びついているのはたった2作品だけである。

ずいぶんと前の話。
人と結びついている香水がひとつある。
かなり年上の人だった。
私はその人の少し長めの髪辺りから感じる匂いが好きだった。
その人はタバコを吸っていた。タバコ臭を消す為か、頻繁にクロレッツのキャンディを口にしていた。
纏っていた香りとクロレッツはけしてマッチするものではなかったが、私はその両方の香りにドキドキと安心感を感じていた。

纏っていた香りがアリュールオムだったのを知ったのは、別れてからずいぶんと経った日のことだった。
それとは知らずに買ったお試し香水のアリュールオム。
あっと思った瞬間、身体が過去に引きずり込まれる感じがした。それぞれ個別の記憶が想起されるのではなく、カメラが引いて画面が切り替わり、そこに少し若い私がいるようなそんな感覚だった。

あれから何年経ったかわからない。
元気でいてくれたらいいなぁと思うだけの若い頃の思い出である。
それでも、アリュールオムだけは香りを確かめに行くことができない。
クロレッツは何度か口にしたが最後まで食べきることが難しい。

そんなふうに強烈な記憶として残る香りとこれから出会う日がくるのだろうか。


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