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青い麦の思い出

高校三年生の卒業間際に、国語の先生が私たちに1冊ずつ、その子にあった本を贈ってくれた。
養護学校という小さな集団の、しかもグループ分けされたクラスで、せいぜい6~8人程度だが、それは先生の自腹で毎年そうしているらしい。

その先生は、国語年表のどの作品でもストーリーを説明できるという才女で、ずっと勉強していられるからという理由で教師になったと言っていた。

私がもらったのはコレットの『青い麦』だった。
当時、山田詠美だの村上龍だのを読んでいるのを知っていたかどうか、先生が生徒にプレゼントするには少し大人びてはいないかと、贈られた私は思ったものである。

実は、私は先生からはあまり好かれていないと当時感じていた。
生意気で、口が達者で、中途半端に外の世界を知っていて、おまけにマセたガキで、その上成績は良かったから、教師の立場としては扱いにくい生徒だったかもしれない。
実際、同級生の中でも、素直でピュアな子の方がより多くの先生たちに愛されていたように思う。
それでも、私のようなマセガキに青い麦を選んだ先生はやはり洞察力のある才女なのだなと思う。

私たちに本をプレゼントしてくれた先生は、噂によるとだいぶ前に亡くなったらしい。
先生は、天に昇る時に何の本を持って行っただろうか。
そういえば、先生の好きな作家や作品を聞いたことがない。
先生のお勧めの作品を片っ端から読んでみたい。

青い麦、買おうかな。

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