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『音楽』

   東京事変のニューアルバム『音楽』を聴いた。

   私はオタクなので6月9日発売の時点でニヤニヤだしジャケ写とアー写だけで2000字は書けまっせって感じだったけど、なんせ10年ぶり、このバンドのフルアルバムを世に出ると同時に聴けることなんて、後にも先にもないかもしれないので、記念に書き残しておく。まとまるかな。いざ。

   まあ感想というとやっっば!ありがとう!!しかないんだけど、ひとまず音の話を。私は音楽理論なんて詳しくは分からないけど、音の畳み掛けだったり交差が美しくって、こんなに色んな音が一枚のアルバムに詰め込まれていて、そしてそれを五人の奏者で作り上げていることに、感激した。東京事変然としていてもしていなくても、くっきりと後ろに五人の姿が浮かんでくるところが本当に好きだなあと。なんせ、音が楽しい。本当に。音楽だなあとぽけーっと思ってしまうほどに。雨迩さんのお力も私には計り知れない程なのだろうけど。そして今回特に、いつにも増して椎名林檎の歌声が楽器の一部であるってことを感じた。歌詞を辿るとかそんなもんじゃなくて、ただただ音の一つとして在るべきところに在って、だから声質も含めて喉を楽器として扱っているっていうような。ご本人が、長らく仰っていたことなどが、感覚的に理解できた。なんでだろう。とにかく今作は全曲気持ちがいい。カタルシスを感じる。内田さんがこれまでのチャンネルのすべての要素が入っている、というようなことを仰っていたけれど、まさに私はそう感じた。だって音楽だもんね。何周回っての話だよってなるけど、お母さんに「椎名林檎って歌上手いよね……」って言ったら、え???という顔をしたあと「それ江國香織って文章上手いよねって言ってるようなもんやで」と笑われてしまった。わかってるよ。

   そして次に詞の話。これはほんとにね…。私はネットであるような歌詞の考察って好きじゃないというか、どうでもいいんだけど、この『音楽』って最早そんなの無意味なものにまでなってる気がする。もうラジオやインタビューで語って下さっていたことが全てだし、聞きたいことは聞けたとまで思ったけど、だから、一言でいうのなら、嬉しい。いやあ嬉しいな〜〜〜。それは勿論内容も含めてだけど、私が特に感じるのはこのタイミングで、ということ。これまで全ての東京事変なり椎名林檎なりのアルバムを一つのそれとして聴いてきたが、今回ほど真に迫ってというか、ひしひしと感銘を受けたのには、やっぱり時期や年齢、タイミングが大きく、これがもし中学生高校生の時の私だったらここまでではなかったかもと思う。私が初めて、こんなのがあったら、知っていたら、 めちゃくちゃ強いじゃんと思わせられたものが『三毒史』だったので、今回さらに踏み込んでずどーんと入ってきて、そりゃ感動するし、ハタチで出会えて良かった。だからこそだろうな、前半の曲や詞がとりわけナチュラルに吸収できるのは。

   そもそも4月にアルバムのタイトルと曲目が発表された時からやばいな〜とドキドキしていたよ。赤と青の位置づけは予想通りにしても「緑酒」の対に「紫電」がきている時点でもうノックアウトだし、「闇なる白」が中心なのもやばかった。常に先をいってくれているのは、いつものことなのだけど、若い世代にこうあってほしい姿を描いた上で色々な世代の立場、それこそ市井の民として投げかけてくれる所が本当に有難い。声出してこうぜ、考えようぜ、の姿勢を一緒くたになって、世の中の変化を望むのでなく笑えることを提示してくれるの、最高。だってもうなんか意味ねえなって感じることはあるし、きっとこれからもっとあるんだろうし。大人はどうすべきか、こうあるべきだというのを体現してくれているそれが、綺麗事ではなくて、だから椎名林檎の説得力ってなんかもう問答無用なんだよな、私にとって。

   盲目的になってはいけないと思っているし、色眼鏡も出来るだけなくしたいと思っている。でも椎名林檎ってこの方、真理じゃん…みたいなことさらっと言ってのけるし、その言葉のチョイスも好きで、なんていうか、本当に好き。本能、野生、自然、下半身後半のこの辺のワードも分かるよすごく、となる。いつだって色んなものかっさらっていっちゃうんだから堪んないな。今回のアルバムのテーマに、現代社会を生きる人の一生、人生的なものがやはり含まれている考えると、たとえチャンネル縛りの生き残りだからだとしても、『音楽』というチャンネルのアルバムにこの内容を持ってきてくれたことに、私が持ち得る最大限の感謝と敬意を捧げたい。  

   あ〜でもやっぱり一曲ずつ書きたいな。一言だけ。なんか椎名林檎と東京事変のことになると、途端にここもTwitter化してしまう。遡るの面倒だしいいんだけど。

   「孔雀」はティザー映像で初めて聴いたあのラップの衝撃がいつまで経っても忘れられん。「毒味」めっっちゃくちゃ好き。もう羽生善治の話聞いてから一サビで毎度滾る。あとドーパミント!。「紫電」はこの図太さふてぶてしさが、緑酒とセットなのが最高だな。「命の帳」いつもあのハーモニクスを待ってしまう自分がいる。タイミングが神。「黄金比」これ大好き。後半全然そんな曲じゃないのに初めて聞いた時うるっときた。「青のID」先に発表された時期的に、生についてこの活力溢れる方向性でもってきくれたの本当に有難かったな。「闇なる白」結構この高低差でぞくっとする。"いいね!"の皮肉っぽさが好きです。「赤の同盟」これ唯一アルバムの中でなんか浮きでてるんよな、個人的に。早くから聴いてたからかな。浴衣のイメージしかない。「銀河民」師匠〜。民シリーズもれなくベースが至高。ハイフレットいくあたり「某都民」を特に感じた。「獣の理」こんのイントロと冒頭の林檎さんの声よ!!歌詞もめちゃくちゃ好き。"初心に帰る術さえ得られりゃもう実質天下無双"分かる……。「緑酒」あんたは優勝!「薬漬」は、ここにきて薬漬っていうのがいい。すごい。「一服」これほんまに、エンドロールでこの優しさと楽しさは反則よな。オタク冥利に尽きる。

   とりあえず椎名林檎は本当に東京に大人用のお店だしておくれ〜。その頃には私は立派な大人だから。たとえ予約が五十年先まで埋まっても待つから。






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