イノベーションを支援する環境づくりもリーダーの役割
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークあるいはその要約版、ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーの質問から、経営幹部のリーダーシップについて見ていきます。
ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーでは、「1.1経営幹部」(p7)で、経営幹部がどのように組織を導いているかについて、質問します。
質問の4番目「(4)経営幹部は、現在および将来の成功のための環境をどのように創っていますか?」で,は、「現在」の成功、現在の事業における成功に加えて、「将来」の成功について、その環境を創ることをもとめています。
コロナは大変革を組織に促しますが、それでなくても大小さまざまな変化が、あらゆるところで日常茶飯事のように起こる時代です。
環境の変化に合わせて組織の事業や運営のあり方を変えていくのが、経営の原理原則です。したがって「将来の」成功のカギはイノベーションです。
組織をイノベーションに導くことは、明確な方向性を設定することから始まります。リーダーは、環境の変化から組織が対処すべき問題または機会をとらえ、それを伝え、インテリジェントリスクをとることを促進する支援的な環境を構築することが必要です。
しかし、イノベーションがなかなかできない組織もあります。
その理由のひとつに挙げられるのが、「計画のグレシャムの法則」です。「悪化は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則を組織論に応用して、日常のルーチン業務が、イノベーションのための計画業務を駆逐する傾向にあることを示しています。
これは、日常業務の方が、イノベーションのための計画業務に比べて、①納期がはっきりしており、②評価との結びつきが直接的で明確であり、③何をやったらよいか明確であれこれ迷わずにすぐに仕事に着手できるからです。
これに対抗するには、①いつまでにやらなければいけないという納期や〆切を明確にする、②その〆切に間に合わなかったときの評価をあらかじめ決めておく、③どういう点に注視して業務を進めるかを明らかにしておく、ということが必要とわかります。
これがイノベーションを支援する環境づくりの一つになります。
①および③について、ボルドリッジでは、戦略の策定の段階(2.1戦略の策定の質問)で、イノベーションをどのように進めるかを戦略計画で明確にすることを重要としています。
②について、ボルドリッジでは、インテリジェントリスクをとることを促進しています。そのベースには失敗を許容する組織文化をつくることがありますが、それは大いに評価に関係します。
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ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーは日本語で読むことができます。
「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトから無償でダウンロードできます。
ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。
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