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レジリエンスと俊敏性の関係

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは、近年は2年に一度時代に合わせて改訂されていますが、2021-2022年版として出されて版では、新たに「レジリエンス」が注目しています。

 レジリエンスに関して理解を深めるため、ハーバード・ビジネス・レビュー誌掲載されたレジリエンスに関する論文や記事を集めたハーバード・ビジネス・レビュー編集部編「レジリエンス」(Diamondハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳、2019年、ダイヤモンド社刊)を手に取りました。

 ここに集められた論文や記事は、人間、個人のレジリエンスに関するものでした。それでもいくつか拾ってみると、ボルドリッジで、その核となる価値観と概念のひとつに、レジリエンスと俊敏性を関連付けて「俊敏性とレジリエンス」という価値観を設けていることの意味を理解するのに役立つ記述がいくつかありました。

 ここでは冒頭の論文、「レジリエンス(再起力)とは何か」(ダイアン・L・クーツ、2002年、HBR)から学びます。

 クーツは、環境変化力の高い人の共通点として、次の3つを挙げています。

 レジリエンスの高い人は三つの能力を宿している、という仮説が成り立つ。それらは、次のようなものである。
①現実をしっかり受け止める力
②「人生には何らかの意味がある」という強い価値観によって支えられた、確固たる信念
③超人的な即興力(プリコラージュ)
(ダイアン・L・クーツ著「レジリエンス(再起力)とは何か」より)

 ①と②は関連もしていて、現実を直視する能力は、大事に遭遇した時にでも何らかの意味「前向きな意味」を見出せる気質による、という。
 組織においても、強い価値体系を持っている組織は、その強い価値観が、出来事を解釈し、それを概念化することで何らかの意味を与えることができる。それがレジリエンスにつながる。レジリエンスの高い企業の価値体系は、長く不変であり、大事の際の拠り所となる。
 「強い価値体系」は、例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の「クレド」や、UPS社の「高潔なる目的」などである。

 ③は、手近なものを即興で間に合わせる「プリコラージュ」の能力。必要なツールや素材が手元になくても、問題解決策を即興的に作り出せる能力である。
 個人の場合は、家財道具からラジオを組み立てたり、車を直したりする。本来の使用方法にはとらわれず、あるもので何とかしようとする。
 組織の場合に当てはめれば、すべての期待される条件が揃っていなくても、なんとか、前に進もうとする。大事の際には特に有効な能力となる。

 これが、即興、時間を待たない、という意味で「俊敏性」につながると見ました。



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