指示1

コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/12/12)

求む、ソフトバンク分割に立ち上がるアクティビスト

【注目ポイント】ウォールストリートジャーナルは、11日同紙のコラムにて、ソフトバンクグループの株価が、各事業の価値の合計よりも大幅に低く評価されているとし、アクティビスト(物言う投資家)の攻撃対象として魅力的ではないかと述べている。同社では、創業者で最高経営責任者(CEO)の孫正義氏に、経営の重要決定事項が集中する体制が取られており、WeWorkのような巨額の損失を発生させるなど、コーポレートガバナンス面での不備を指摘。また、ソフトバンクグループが保有するアリババ株が資産として有効に機能されるていないなど、資本効率性への疑問も投げかけている。

【コメント】こうした記事は良くも悪くも海外メディアの方が積極的に書いてくるが、概ね記事に書かれていることには一理ある。アクティビストにとってソフトバンクが魅力的というのもその通りだろう。一方で、孫正義という経営者とまともに今後のビジネス展開について議論できるアクティビストがどの程度いるかは疑問だ。確かにコーポレートガバナンスの不備や資本効率性の改善、兆円単位の巨額借入など、ケチをつけようと思えばどれだけでもつけられるが、それに対して今後の経営を考えた上で、一つひとつ合理的な説明を行われたら、どうするのだろうか?孫さんほどの経営者であれば、当然様々なリスクを考えた上で、現在の体制になっているはずなので、孫さんと同レベルで経営や事業の方向性を正確に捉えた上で、経営改善提案を行うことができる人物はそうそういないのではないか。


株主総会、賛否理由も開示 機関投資家向け指針改訂案―金融庁

【注目ポイント】金融庁は11日、機関投資家と投資先企業の対話を通じて企業価値を向上させる「機関投資家向け行動指針(スチュワードシップ・コード)」の改訂案を提示。投資家に対して現在求めている株主総会での議決権行使結果の個別議案公表に加え、その理由も開示することを要請する。議決権行使の透明性を一段と高めるのが狙いとみられる。既に生命保険会社や信託銀行などの機関投資家が株主総会で、業績不振や不祥事企業の経営トップ選任などについて、個別議案ごとに賛否を開示するようになり、コーポレートガバナンスをめぐり一定の緊張感が生まれている。ただ、反対理由まで開示する機関投資家は一部にとどまっており、その効果は現段階では限定的だ。コードの改訂によって、個別賛否の理由の開示も促すことで、透明性をさらに高めて企業価値の向上を図りたい考えだ。

【コメント】スチュワードシップコード(SSコード)の改訂案として、昨日取り上げたニュースでは、ESG投資の要素を重視する内容が反映される見込みであることを伝えたが、株主総会で各個別の議案への賛否の理由についても開示することを求めることで、より合理的な意思決定が機関投資家には求められる。もはや、「これまでの付き合い」や「親密な関係性」などは関係なく、投資対象として魅力的かどうかを基準に合理的な判断をすることが機関投資家にはより一層求められ、企業側はその合理性に耐えうる説明責任を果たしていかなければならない。


海外投資家が日本株を売る日 安倍内閣の改革姿勢変化 疑問視

【注目ポイント】日本の株式市場では売買の多くが海外投資家で、株価の動向は彼らが握っていると言っても過言ではない。海外投資家は2017年は7500億円の買い越し、18年は5兆7000億円を売り越したが、19年が年間で2年連続の売り越しになるのか、買い越しになるのか、現段階では微妙な情勢である。安倍政権発足以降で、急速に進めてきたコーポレートガバナンス改革は依然勢いを失っていないが、ここ10年間の間でもオリンパスや東芝などの巨額粉飾問題だけでなく、現在においても日産自動車、関西電力と相次いでコーポレートガバナンスの不備が明らかになるなど、企業不祥事は止む気配がない。より実効性があり、企業の成長につながる改革が今後も続くかどうかが問われている。

【コメント】先日安倍晋三首相が、日本の総理大臣として在任期間が最長となったと報じられた。いずれにしても歴史期に残る総理となったわけだが、その実績面で、恐らく後世で評価されるのは一連のコーポレートガバナンス改革を推進した点だろう。もちろん、民主党政権での経済運営がダメダメだったということはあるだろうが、ガバナンスを基点に日本企業の改革を推進したことは非常に大きな意義がある。


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