見出し画像

【エッセイ】紙か電子か:書籍選択のためのガイド

「紙の本は持ち運ぶにも保管するにも、とにかく場所を取る。しかも珈琲でもこぼして、頁に染みができてた日には一気に見すぼらしく感じられてしまう。今どき本を買うなら電子でしょ。」

「いやいや、読書というのは本来非常に身体的な体験であって、頁を開いた時に立ち上る紙の匂いに、手にずっしりとのしかかるあの重量感を欠いては別物になってしまう。私は電子書籍は好きになれないよ。」

これらの主張は電子書籍を支持する人々と、紙書籍を愛して止まない人々、それぞれからよく聞くものです。当然、紙と電子のどちらが書籍の在り方としてより優れているのか、という話ではありません。

電子書籍にも紙書籍にもそれぞれ一長一短、メリット・デメリットが存在しており、一概に優劣を付けることなどできるわけがないのです。

しかし実際には、私を含め皆さんも、(電子書籍のセール時を除きなぜか同じ価格となっている)紙書籍と電子書籍のいずれか一方を選んで購入する日々を送っているのではないでしょうか。

今ではKindleのヘビーユーザーの私ですが、元々はアンチ電子書籍を謳っていました。日々、書店やAmazonで気になった本を買い漁る生活を送っていたのですが、ある日気付いてしまったのです。そう、本棚にこれ以上本を差し込む余白が無いことに…

そこで仕方なく電子書籍を購入するという選択肢と向き合わざるを得なったのが、私の電子書籍歴の始まりです。ここでは現在私が設けている電子書籍を買う基準を紹介しようと思います。

基本的な考え方

私が電子書籍の購入を考え始めたきっかけは、本を保管する場所がないという状況でした。そこで最初に思いついたのは、辞書のように場所を取る書籍は電子版で購入すれば良いということです。

一方、同じような場所を取る書籍でも事典のように美麗な図解が豊富にある書籍は、電子インクで見るよりも、丁寧に印刷されたページを見たいと思うこともありますよね。

こうした考えを巡らせるうちに、機能主義的なアプローチが有効かもしれないと思い始めました。つまり、本に求める機能性を出発点として考えることで、本のジャンルや読書の目的によって、電子での読書が適していそうか、紙での読書が適していそうか、ということを整理することができそうだと考えたわけです。

紙書籍と電子書籍の特徴

まず紙書籍と電子書籍それぞれの特徴を整理してみました。ここで整理した特徴を、自分の読む本のジャンルや、読書の目的に照らし合わせることで紙で買うべきか、電子で買うべきか整理できるのではないか、というのが今回の趣旨です。

表1:紙書籍と電子書籍の特徴

書き込みや切り抜きは電子書籍でも可能な時代

自由に書き込みを行うことは、少し前までは紙書籍だけが提供できる特権でした。しかし、最近ではKindleアプリがタブレット向けにリリースされており、GoodNotesと組み合わせて切り抜きや書き込みを実現する方法もあります。また、Kindle Scribeのようなデバイスも登場しており、この特徴は紙書籍だけのものではなくなってきているのが実情だと思われます。

ただ、私自身がまだKindle Scribeを持っていないため実際のところはなんとも言えないのですが、紙書籍と真に同等の書き込み体験が可能になっているかということについては疑問に感じているのが本当のところです。

紙にペンを走らせる感触の満足感や、書き込み位置をピクセル単位以上に微細に調整できるのがアナログの強みです。物理的な体験をデジタルデバイスが完全に再現することはまだ難しいのではないでしょうか。これらの体験を大切にする人にとっては、紙書籍が持つ特徴は依然として価値あるものだと思われます。

私が紙で購入すべきと考えている3種類の書籍

紙・電子の特徴を整理した結果、私は次の3種類の本については必ず紙書籍で買うことにし、逆にここに当てはまらない書籍は全て電子書籍で買うことに決めています。

  1. スキルアップ・学習などを目的として購入する図書

  2. トレンド性の高いトピックが主なテーマとなっている図書(例:コロナ禍における感染症関連の雑誌や「◯◯思考」系のビジネス書など)

  3. 装丁のデザインや著者など個人的に強いこだわりがあり、手元に置いておきたいと思う特別な図書

スキルアップ・学習などを目的として購入する図書

電子書籍と紙書籍の選択が文章理解に与える影響については、利用者の各形式への慣れが重要な要素となる、という研究結果があります。この説は私自身の経験とも一致しているため、支持しているものです。加えて、私は書籍への直接的な書き込みを通して学習効果を高められると考えており、現時点では、この観点でデジタルデバイスは紙書籍に及ばないと感じています。

トレンド性の高いトピックが主なテーマとなっている図書

コロナウイルスの影響による感染症の進行や、特定の思考法を解説したビジネス書など、現在のトレンドに強く関連した書籍は、最新の情報を整理された形で提供してくれる点にその価値があります。しかし、そのようなトレンドに即した話題の本は、情報の鮮度が落ちるスピードがとても早い。そのため、私は基本的にこれらの書籍は購入後に即買即読即売したいと考えています。紙の書籍は中古として売買することが可能なので、私はこれらの書籍はメルカリで購入し、読み終わったらメルカリで売る、というサイクルを繰り返しています。

手元に置いておきたいと思う特別な図書

ある種トートロジー的な物言いになってしまいますが、私が身近に置いておきたいと思う書籍は、紙の書籍を購入しています。例えば、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」のハードカバー版はその良い例で、このような紙の形式だからこそ感じられる特別な体験がある本はなるべく五感で味わい尽くせるように紙書籍を購入するようにしているのです。


以上、私個人の設けている基準について簡単に紹介してみました。書籍の購入形式に迷っている人が考える参考になれば嬉しいです。家の中に書籍を保管するスペースが有り余っている人や、学習の際に書き込み等を必要としない人などにはここで書いた内容はあまり参考にならないかもしれませんが。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?