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元・味の素マーケティングマネージャー直伝の仕事術 著 中島広数

読了日:2024.5.26

感想

 日本の人口の出生率は低下し、国内の市場規模は縮小傾向にある。だからといって、日本に未来がない訳ではない。スイスの人口は870万人だが、アンリネスレ創業のネスレの売上高は、味の素の14倍。自国の人口や傾向では、企業の売上規模は測れない。その際大きな役割を果たすのがグローバルマーケティング。
 マーケティングというと個人的には市場分析な顧客調査というイメージが強い印象だったが、「新商品を作る時、失敗しない商品を作るためにはフロントエンドとバックエンドを常に同期させなければいけない。そのために何から考えればよいか。」と疑問を持って本屋で出会ったのがこの一冊。この本には商品のヒット率をあげるために必要な開発プロセスと、販売拡大するためのプロセスが集約されている。

要約:ヒットの法則15原則


1コンセプトが生活者に受け入れられる
1)ネーミングのキレと理解しやすさ
2)手にとってもいいと思える値ごろ感=コストパフォーマンス
3)中身・内容の良さが伝わる外見・デザイン
2アイデアを具現化できる仕掛けがある
4)戦略は細部に宿る=細部にまでコンセプトの良さが感じられる
5)頭を使って気を遣う
6)お客様の期待を裏切る驚きを込める
3その他大勢の中から選ばれるだけの魅力がある
7)唯一無二の独自のポジショニングを見出す
8)自分たちにしかできない、かつ、お客様のためになる独自価値がある
9)3本の矢の構造(いい商品、手に届く、伝わる価値)を築く
4儲かる仕組みが構造化されている
10)売上高を要素分解:客数×購入個数×購入単価
11)GP(Gross Proft:粗利益)構造を強固する
12)販売費・一般管理費を賄える単品PL構造をつくる
5社会全体に共感を生む価値がある
13)志が明確、かつそれを言えるだけの理由がある
14)事業がシンプルである(誰にでもわかりやすい)
15)不変の心理に沿っている


※以下内容

2050年はアジア時代

P33
スモールマスという花王が提供した考え方。
ライフスタイルや商品者の興味やニーズが多様化したことでたくさんの小さなマスが生まれた。

新事業・人バリューチェーンの想像

P36
今後も日本式グローバルマーケティングは続いていく。
①日本国内でまずヒットする
②海外に輸出される
③現地化する
④他国化する
⑤世界規模に広がっていく

P48
マーケティングの業務分担は大きく、「企画・開発マーケター」と「販売マーケター」に分かれ、業務の幅は広い。

「企画・開発マーケター」の役割
1市場・消費者分析
2STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)設定
3商品コンセプト企画
4製品開発マネジメント
5コミニュケーション戦略


「販売マーケター」の役割
1マーケティングプランニング
2採算管理
3需要マネジメント
4販売マーケティング(含む営業値引き)コントロール
5営業部門との連携(売り場管理・販促遂行)

マーケター力=思考力×対人力×人間力


P55
フィリップコトラー:「世界一優秀なマーケティング部門であっても、粗悪品うやニーズに合わない製品を売ることはできない、マーケティングは販売に注力するのではなく、むしろ販売が不要なほど未リュ億的な製品の過初に注力するべきだ。」

はじまりはいつも仮説


P60
正解がない課題を解決するためには、最初に「なんとなくこうではないか」という仮説を立て、その仮説を実践し、検証しながら正解を作り上げる。

P79
マーケティングが苦手な企業の課題
1ターゲットが不明確
2ユーザー理解が欠如
3バリューチェーンの混乱
4METOOのものづくり
5マーケティング機能の欠如

METOOのものづくり
「他社でこういう製品が売れているから同じようなものをつくろう」は価格で差別化するしかなくなり、利益があがらない

(参考:値付けの思考法)提供している商品・サービスの価値をしっかり価格へ転換するのが重要で、バリューベースプライシングという手法がある。顧客が知覚している価値を起点にして、価格を決めること。仮に原価率が低く、他社より高くても知覚価値の範囲内で価格を上げることはできる。ただし重要なことは誰かが「これ以上高いと買いたくない」と思っているかという観点。エリアや別の要素では支払い意欲に差が生まれることがあるため、希望する販売価格から逆算した支配い意欲をもっているターゲットを選定するという戦略もある。
「売上が最大化する価格」と「顧客数が最大化する価格」は「売上」と「顧客」のどちらかにプライオリティを置きたいかで変わる。

(参考:「価格上昇」時代のマーケティング)原価から決めるという価格の決め方は時代にそぐわない。つまり、値付けにおいて、原価から考える必要はない。原価がものすごく安くても、お客さんにとって価値があれば、常識外れな売価をつけてもかまわない。同業他社と比べ、それと揃えようとしないこと。つまり大事なことは「顧客の価値から価格を考える」ということ。マーケットを見ずに人を見る。
内向参考価格とは、消費者が価格の妥当性や魅力度を判断する基準として、記憶から想起する価格のこと。価格には①公正価格②最高受容価格③最低受容価格④期待価格⑤最高観察価格⑥最低観察価格⑦平均観察価格⑧通常価格⑨購入価格があるが、①~④は願望で、⑤~⑨は過去の経験と市場価格がベースとなる。つまり、お客さんは勝手に過去の経験と比較して価格の妥当性を決める。その比較対象をどうするか。実店舗の味を再現したインスタントラーメンの味は、ラーメン店に行くより安いと考えられる。売り手が「何と比較してほしいか」と自分で設定することが大事。値付けで大事なことは実験。収益化の最大化のポイントを探し、試す。ビジネスにおける持続性とは、十分な顧客が、買い続けてくれること。顧客が価値と感じるものをキャッチし、それに適切な値を付け、その価値をお客さんに伝えられる力のこと。「お客さんを育てる」という視点を持つ。

ヒットの法則15原則

1コンセプトが生活者に受け入れられる


1)ネーミングのキレと理解しやすさ
2)手にとってもいいと思える値ごろ感=コストパフォーマンス
3)中身・内容の良さが伝わる外見・デザイン

千三つといわれるほど商品のヒット率は低いが、確率を上げるにはコンセプトづくりから。商品コンセプトを構造化(提供価値を概念的に定義)する。

1商品コンセプト
(1)基本商品コンセプト
(2)商品ポジショニング
2商品詳細仕様
ブランド名、カテゴリ名、バラエティ名、ターゲット顧客、利用シーン、デザイントーン、伝達価値(コアベネフィット)、小売価格、包装容器・中身容量、使われ方、シェアソース、賞味期限
3目標品質と目標コスト

2アイデアを具現化できる仕掛けがある


4)戦略は細部に宿る=細部にまでコンセプトの良さが感じられる
5)頭を使って気を遣う
6)お客様の期待を裏切る驚きを込める

消費者の知覚・行動ファネルを構造的に把握する。
知覚・認知(認知の壁)
理解・共感(理解・共感・自分ごとの差)
購入・試す(トライアルの壁)
実感・継続(リピート・習慣化)
ファン(結晶)

コンセプト・プロダクト・ギャップに落とし穴
商品コンセプトは良いか、実際に使用するとそうでもないことがあるが、「期待を裏切る驚き」があることは不可欠である。

3その他大勢の中から選ばれるだけの魅力がある


7)唯一無二の独自のポジショニングを見出す
8)自分たちにしかできない、かつ、お客様のためになる独自価値がある
9)3本の矢の構造(いい商品、手に届く、伝わる価値)を築く

①いい商品を作り②ちゃんと幅広いところで売られて、③それが伝わるコミュニーションをしっかりやる。

4儲かる仕組みが構造化されている


10)売上高を要素分解:客数×購入個数×購入単価
11)GP(Gross Proft:粗利益)構造を強固する
12)販売費・一般管理費を賄える単品PL構造をつくる

事業計画の構造
・既存計画↔︎新規事業、売上拡大↔︎利益改善、単年度予算↔︎中長期ゴール、商品力強化↔︎マーケティング投資強化。いくつもの判断の積み重ね。
・すべてのマーケティング活動の「ゴールの明示」「配分」「決断」をリードする

5社会全体に共感を生む価値がある


13)志が明確、かつそれを言えるだけの理由がある
14)事業がシンプルである(誰にでもわかりやすい)
15)不変の心理に沿っている

「誰が聞いても当たり前に正しいと思えること」は多くの人が共感してくれる。

製品発売前に再チェック

受容生(コンセプトが生活者に受け入れられるか)
実現可能性(アイデアを具現化できているか)
選好優位性(その他大勢の中から選べあれるだけの魅力があるか)
採算性(儲かる仕組みが構造化されているか):損益分岐点から商品開発時のGP管理を徹底し、原資から広告投資を捻出し、黒字化までの売り上げ慎重の道筋・事業採算構造を発売計画書に記載する
社会共有価値(社会全体に共感を生む価値がある)

海外マーケティングの成功のヒント

フィリップコトラー「顧客が目にするものは、すべてローカルに。顧客が目にしないものは、すべてをグローバルに。」

仮説アイデアリストの活用

100個のアイデアを考え、チームに共有し、他人のアイデアで参考になるものを取り入れ、アイデアを融合し、チーム全体の周知として結集していく。その後、「ヒットの法則15原則」にそって設定されたスクリーニング項目を使用してアイデアの絞り込みを図る。

ブランディングの羅針盤
1何のために活動するブランドか
2大切にしたいお客様はだれか
3お客様の心の声、ニーズは何か
4あなたなら(このブランド)なら何ができるか
5なぜそれができるのか、理由を教えて

愛され続ける商品づくり

・世の中は自社製品・サービスだけで形成されない。「受け入れられ→実感され→選ばれ続ける」という価値構造を作り出すことがマーケターの役目。
・企業の成長の南とである新事業・新製品開発の結果として、対価をいただける採算を作り出すこと。両立するのは至難のチャレンジ

プロのマーケターになるために必要な時間は1万時間かかるといわれ、高速CAPDをしていると「完璧な計画づくりに長い時間をかける」ことよりも「まず仮説を立てて、何が効果的かを実験的に検証していく」というやり方がはるかに有効である。データ分析、市場調査、消費者調査は仮説を仮説のまま終わらせないために、定性調査(エスノグラフィック調査、グループインタビュー、デプスインタビューなど)や定量調査(ブランドトラッキング調査、コンセプト調査、プロダクト調査、クリエイティブ効果測定など)を駆使して日々のマーケティングを行う。

マーケティング活動における仮説検証の流れ


●発売前

①市場の把握及び理解

→新製品・事業展開のために現地の習慣および市場・消費者のunemtneedsの発掘は優先的な課題
→市場把握に注いで、新製品のポジショニング予測を図ることで、直接競合と関節競合の両面から今後のビジネスの展開の方向性を決定
調査のアプローチ
カテゴリー・・ブランド・・購買行動→認識把握
どのように買ってどのように使用してどのように買っているかを知る。U&A Traking・BVCを活用。

②アイデアスクリーニング&製品ポテンシャルの仮説検証

→市場理解の結果をもとに、仮説アイデアを出し、スクリーニング調査を行うとともに、「既存・新市場」でのマーケットポテンシャルを予測し、カテゴリーおよびターゲットセブメントを特定
調査のアプローチ
仮説検証:アイデア出しスクリーニング、ターゲット市場・カテゴリー把握、ポジショニング

③、④製品受容生の診断_コンセプト/プロダクトの方向性

→消費者のニーズを満たす製品コンセプトは何か。
→コンセプトにマッチする製品の開発
→市場でのポテンシャルが高い製品のローンチ
調査のアプローチ
調査内容:コンセプトテイスト、プロダクトテスト

●発売後

⑤発売後のブランドテスト・ブランドトラッキング(BVC)

→発売後の新製品の市場パフォーマンスを定期的に測定することで製品やサービス改善のポイントを把握し、顧客満足度を最大化する
→製品とともにブランドエクイティをトラッキングし、中長期的な利益を創出
調査のアプローチ
短期的なプロダクトパワーと長期的なブランドエクイティ:製品のブラッシュアップ

⑥コミュニケーション効果測定

→効果的なクリエイティブの測定・事前検証
→より強いストッピングパワーの広告開発のためのコミュニケーション効果測定測定をおこなう
調査のアプローチ
ブランドの純粋想起・認知チルト購入思考の相関が高い

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