Yoshiki Goto
認知科学に基づくコーチングとは
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認知科学に基づくコーチングとは

Yoshiki Goto

「コーチング」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
一般的には、スポーツ選手のメンタル・トレーナーや、企業が仕事の効率やパフォーマンスを上げるために行う社員への教育を思い浮かべる人が多いと思います。選手やクライアントの設定したゴールに向かって一緒に伴走し、彼らの悩みに対して共感、傾聴してサポートする。しかし、これはコーチングというよりも、本来はカウンセリングに近いものです。

認知科学に基づくコーチングとは

認知科学に基づいたコーチング(以下コーチング)とは、認知科学に基づいたマインド(脳/心)のカラクリを使って、クライアントのゴール設定を促し、ゴールを達成出来るマインドの構築をサポートします。

認知科学とは「人間の心の性質を理解すること」を研究するこを目的に1950年代に生まれた比較的新しい学問です。脳の情報処理プロセスに焦点をあて、「外部刺激(入力)」と「行動(出力)」の間にある内部モデル(ものの見方)を研究します。この内部モデルをブリーフシステムと呼び、これまでの経験や他人からの影響によって作り上げられたルールや常識、無意識のうちに出来上がった縛りなどによって影響を受けます。

認知科学コーチングおいては、このマインド(脳と心)のカラクリを上手に使い、ブリーフシステムを書き換えることで、クライアントのゴール達成へと導きます

ゴール設定について

コーチングにおいて、最も重要な概念は「ゴール設定」です
そしてゴール設定の重要なポイントは以下の3点です。

1. 現状の外側に設定
2. 「真のwant to」に基づく
3. オールライフでゴール設定(8つの領域)

1. 現状の外側に設定

「現状の外にゴールを設定する」は認知科学コーチングのコア・コンセプトであり、他のコーチングとの大きな違いでもあります。

現状とは、現在の状態ままいけば十分に起こりうると予測される未来のことです。スポーツ選手が金メダルを獲る、業界でNo.1になる、会社の社長になるなどは今の延長線上にあることなので、どれだけ高いゴールでもこれはは現状です。これを「理想の現状」と呼びます。

現状の外とは、今の延長線上にはなく、今の置かれている環境からは想像もつかない未来のことです。現状の外のゴールとは、これまで考えたこともなければ、やり方も全くわからないし、リソースなどあるわけがない。そんなことやれたら最高で、考えるだけでワクワクする。しかし、それを人に言ったら絶対に止められるし、行動に移すのは怖い。それこそが「現状の外側のゴール」です。

現状の外のゴールとは、国家であれば現行法を改正、企業であれば組織構造、事業ポートフォリオ、ビジネスモデルを変更しないと辿り着かない未来です。個人で言えば、日々の習慣やものごとの見方、態度、大切にしていることが変わらない辿り着かない未来と考えます。

2. 「真のwant to」に基づく

ゴール設定は本当に自分がやりたいこと「want to」であることが重要です。現状の中で自分がやりたいことではなく、禁止されてもやりたいこと、やってしまっていることです。「願望」というレベルではなく、「喪失感」というレベルで自分が心の底から欲しているものです。

現状に不満を持っている人にとって、本当にやりたいことというのは過去に禁止されたことによって抑圧されていたり、「have to」や思い込みによって見えなくなっていることが非常に多いです。コーチはこの本当の欲求を見つけ出し、現状の外に押し出してあげることも大事な仕事です。

3. ゴールはオールライフで設定する

ゴールは複数の領域で用意することが大切です。よくゴールを聞くと、「会社を上場させる」、「億万長者になる」、「世界一周旅行をする」などがありますが、これは一つの領域でのゴールに過ぎません。コーチングにおいては、仕事、趣味、人間関係、社会貢献、知性、家族、健康、ファイナンスと8つの領域において、それぞれゴールを設定します。

いくら仕事のゴールを達成したと言っても、それで健康を害したり、家族が崩壊しては意味がありません。いくらお金を稼いでも、趣味も知性も人間関係もない人が魅力的と言えるでしょうか?本当の意味で幸せになるためには、オールライフでゴールを設定して、その全てをバランス良く回すことが大切です。

マインドのからくり

認知科学コーチングの特徴は、人がこれまでの経験や他人からの影響によって作り上げられてきたルールや常識、無意識のうちに出来上がった縛りであるブリーフシステムを変えることで、未来を変えることです。
そのための、いくつか用語を説明します。

1. エフィカシー

ゴールを達成するために最も必要なものが「エフィカシー」です。
これは、ゴールを達成する自己能力の自己評価のことであり、言い換えれば、自分のゴール達成を信じる力です。

自分がゴールを達成出来ると信じている人は、自ら行動をし、外部からの刺激を必要としません。重要なことは、自分が出来ると自ら信じていることであり、実際にその能力があるかどうかは関係ありません。そういう意味では、謎の自信とも言えるパワーです。

起業家や有名スポーツ選手などはエフィカシーが高いと言われています。バブルの時代は日本国民全体のエフィカシーが高かったし、スポーツの名門校や急成長企業なども集団でのエフィカシーが高いです。これをコレクティブ・エフィカシーと言います。

多くの人は自分でエフィカシーを上げるのは難しいと考えていますが、マインドの使い方を変えることで自然とエフィカシーが高まるようになります。コーチの仕事は、クライアントのエフィカシーを上げることとも言えます。

2. スコトーマとRAS

「スコトーマ」とは、心理的盲点のこと。人は自分が重要だと思っていることしか見えていません。自分達の評価基準によって、無意識のうちに見えるものと見えないものに分けています。

例えば、毎日通っている通勤路でも海外旅行に行くために大きなスーツケースを持って歩けば、道路のガタガタや段差、坂道、駅のエレベーターの有無などこれまで気にしなかったことに気づくでしょう。これらは今までと何ら変わりありませんが、我々の日頃の生活にとって重要でなかったから見えてなかっただけです。

「RAS」 (Reticular Activating System/網様体賦活系)とは脳を活性化させるシステムです。実は人間は全てのものは見えていて、RASが重要なものだけを意識に上げ、重要でないものを無意識下にして活性させていないのです。

例えば、ベンツを買うと決めると、やたらと道端を走っているベンツが目に入るようになったり、赤色の服を着た日には、赤を着た他人や赤色の物が急に目につくようになります。

このように「スコトーマ」と「RAS」はコインの裏表のような関係であり、人間は重要度によってものが見えなくなっていたり、急に見えたりするようになります。そして、その重要度は外部からの情報や指摘によって比較的簡単に変わる特性もあります。

コーチングにおいては、スコトーマを外すことで、現状の外に行くことが容易になります。そして、現状の外に本当にやりたいゴールを設定することで、RASが発火する様になります。

ゴールを設定する時は、「What(何が)」が重要であって、「How(どうやって)」は考えなくて良いです。現状の外にゴールを設定すれば無意識下でRASが働き、自然とゴールへの道が拓けてきます。

3. コンフォートゾーン

コンフォートゾーン(CZ)とは、自分にとっての居心地の良い空間のことです。人間にはCZに居続けようとする機能が備わっており、これをホメオスタシス(恒常性維持機能)と言います。CZから抜け出そうと思っても、ホメオスタシスによってCZに戻ろうとする力が働くので、抜け出すことは出来ません。この力は意識ではなく、無意識の力なのでコントロールすることが出来ませんし、その力も超強力です。

例えば、人間の体温は36度台をキープしており、これが人間にとってのコンフォートゾーンです。気温が変化しても体温は変化することはありません。運動したり、サウナに入っても人間の体は汗をかくことで体温をキープしようとします。また、寒くなっても、体が震えたりすることで体温の低下を防ぎます。体温のように人間はCZを一つしか持つことは出来ません。

コーチングにおいては、このCZの概念とホメオスタシスの働きをゴール達成に利用します。現在のCZとゴール側のCZは離れており、ゴール側に向かっ頑張ろうとしても、現状のCZにすぐに引き戻されてしまいます。そこで、CZは2つ取ることは出来ない、臨場感の高い方のゴールを採用するという脳の仕組みを利用します。つまり、現状のCZから抜け出すのではなく、ゴールに対する臨場感を高めることでCZをゴール側にズラします。ゴールを達成した自分から現状の自分を見たら、今のCZの方が居心地が悪くなります。

ダイエットの例で言えば、体重を10kg減らすなどの数値目標をゴールにするのではなく、痩せた後に想像出来る新しいライフスタイルをイメージします。素敵な洋服を着て、颯爽と生活したり、雑誌にインタビューされたり、新しい人との出会いなど。ゴールの世界の解像度が上がり、その臨場感が上がると、脳はそのゴール側の世界こそが本当のコンフォートゾーンと判断します。そうすると、今の状態の方が居心地が悪くなり、自然と行動が変わりリバウンドすることもなくなります。

このゴールへの臨場感を上げ、CZをゴール側に動かすために必要なことが「セルフトーク」です。

4. セルフトーク

「セルフトーク」とは、無意識に自分自身に話しかけている言葉で、パフォーマンスを決定付けるものです。人間は1日に3万~5万回も自分に語りかけていると言われています。

この「セルフトーク」を変えることが、ゴール達成の鍵になります。
セルフトークによって自分が成功している映像をつくり、その映像が感情を想起させます。それによって自己イメージが形成され、これが新しいコンフォートゾーンを作ります。

いくら高いゴールを設定しても、毎日自分には出来ない、無理だと自らに語り掛けていたら、ゴールを達成出来る訳ありません。これらをネガティブ・セルフトークと言って、これをポジティブに書き換えていきます。例え失敗しても、「しまった」ではなく、「自分らしくない」で良いのです。

まとめ

以上が認知科学に基づくコーチングのベースとなるコンセプトです。
このコーチングの最大の特徴は、「ゴールを現状の外側」に設定すること。

それによって、ストコーマが外れ、RASが発火し、エネルギーと創造性が生まれる。ゴール側にコンフォートゾーンをずらすことで、現状の自分の状態の居心地が悪くなり、自然と行動が変わる。高いエフィカシーを持って、自分がゴールを達成出来ると信じ、日々のセルフトークを変えていく。そして、一つの領域でなく、8つの領域にバランスよくゴールを設定し、人生を豊かにすることが大切です。

コーチの仕事は、そのゴール達成に向けて、上手なマインドの使い方を教えて、クライアントのゴール達成を全力で信じ、サポートしていくことです。一緒に人生を劇的に変化させていきましょう。


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Yoshiki Goto

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Yoshiki Goto
NYワインプロデューサー/ 認知科学コーチ修行中/『GO-TO WINE(ゴートゥーワイン)』代表 NYと日本を繋ぐ人。そのツールがワイン、空手、日本文化だったりします。現在、これからの人生を劇的に変化させるために、コーチング勉強中。「読者は自分」のつもりで書いてます。