文章組手16回「インターネット」2000字

　初めてのインターネットは携帯電話からだった。それもガラケー。確かシャープの携帯。Twitterもねえ！ブログもねえ！クラウドいったい何者だ！正直やることが無かったし、今以上にパケ死しやすい状況だったので活用していなかった。そんな私がインターネットを意識したのは19歳、声優専門学校二年生の時だ。日にちは覚えている。9月11日。

　学校近くの居酒屋で未成年飲酒をしていたのだが多めに見てほしい。壁に張り付いたヤニと脂、鳥の焼ける匂い、安い焼酎瓶が並ぶカウンター。私は年上の後輩と飲んでおり、夜も遅くなってきたので帰ろうかと思っていた時だ、一人のサラリーマンが居酒屋に駆け込んできた。常連なのか大将は軽い挨拶を返す。しかしサラリーマンはそれを無視してテレビのリモコンをいじりニュース番組にチャンネルを合わせる。そこには高層ビルの上層階から煙がモクモク出ている映像だった。

「アメリカで飛行機事故があったらしい」

　アメリカ同時多発テロ事件。世界のバランスが崩れ、今なお続くテロとの戦いを認識した初戦。テロリストが旅客機をハイジャックしワールドトレードセンター、ペンタゴンに突っ込んだあの事件。
　ニュースではまだテロと報道されていなかったと記憶している。飛行機事故にしてもビルに突っ込んでいるなんて信じられなかった。店にいた人間が全員テレビに釘付けになり、しばらく後には焼きすぎて臭みが出てしまったレバー串が大将からサーブされた。

　その後の行動は早かった。なぜなら後輩は高専卒業生。ITや機械に明るく梅酒ソーダをガッと飲んだ後にこう口を開いた。

「テレビじゃわかんないですね。ネットで調べましょう」

　人に引かれて崇禅寺参り。いつもなら新大阪からダラダラと歩き、コンビニに寄ったりして宅飲み材料を揃えるがその日は直行だ。こころなしか歩みが早い。6畳程度のワンルームの割にオートロック。家賃は親持ち。来るたびに思うが実家が太いって最強やな。部屋に入ると後輩は椅子に座りパソコンに電源を入れる。パソコンなんて高校の時に選択していた情報の授業でしか使ったことがない。計算をしたり絵を書いたりする箱という認識だ。

「ここを見れば世の中のどんなことも書いているんですよ」

　W e l c o m e　T o　U N D E R G R O U N D…

　大量の文字がPCモニター（ブラウン管）に映し出される。

　2ちゃんねる

　これが、長きに渡るインターネットとのキャッキャウフフふれあい劇場の幕開けだった。即ちテロリストが暴れなきゃ私はこんなところでこんな文章を書いていない。ふざけないでくれたまえ。帰らせてもらうよ！

　同時多発テロを朝まで追いかけていた。そしてそれと同時にインターネットについての知見を得た。私が学んだことを以下にまとめる。
・えちえちオリンピック開催中
・インターネットは超でかい図書館
・善悪入り乱れサンダーボルト

　概ねその3つだったがこれは今思っても間違っていないと思う。教えてくれた出口くんありがとう。

　インターネットを意識しはじめたのが2chだと言うのは若干恥ずかしいことだが事実である。ってか38歳の人間はそうだって。そして次のインターネット革命はmixiだ。mixiは革命だった。今のTwitterにもある「ゆるく薄い付き合い」をはじめて意識した場だった。
　インターネットの利点はなんだろうかと考えると「知らない事を知ることができる」に尽きる。今、あなたが私の文章を見てくれているように、実在しているのかもわからない存在に寄り添うことができる。
　しかし、その寄り添い方は依存ではダメだ。インターネットでは孤高の狼たれ。不確かだからこそ、信頼しすぎないである程度の距離感を持って接するべきである。座間の事件とかあるしね…

　インターネットには感謝しかない。私の父親は70歳も近いのだが、友達はいるのかと疑ってしまうほど一人でいる。学生時代を終えてしまうと友達なんて作れる方が珍しい。なぜなら出会いがないからだ。インターネットはそこを埋めてくれる。危険はたしかにあるが、上手く使うことができるなら孤独は那由他の遥かに飛んでいく。那由多遥ってグラドルいたよね。
　インターネットが紡ぐ繋がりにもたれ掛かることは今後も続く。何をやるにもインターネットが必要だ。ただ、依存ではなく自存の態度でコントロールしていきたい。そんなインターネットのゆるい出会いを思い切り体感できるイベントが12/14土曜に中野区の「しょぼい喫茶店」で行われる。「声優専門学校卒業生バー」というイベントだ。
　インターネットがなければ知ることができなかった生活や生き方を楽しみに来ませんか？こんなニッチなイベントで多くの人と繋がることができる。なんとありがたいことか。