最近発見したこと

ずっと気になってた。ハリウッドセレブが明らかに人種的に違う養子をもらっていること。確かに人道的である。社会貢献である。1人の人生のあり方を支えることである。

私がアメリカに住んでいた時に身近な友人、知人にも何人も養子をもらっている家族がいた。自分の子供がいない家族もあれば、何人も実子がいて新たに養子をもらう家族もいた。そしてそれをオープンにする。見た目で明らかに養子と分かる子の方が大半だ。白人✖️有色人種の組み合わせが多かった。親たちは口にする。この子は養子なの。〇〇から来たのよ。そう話す彼らはとても誇らしげだった。

3人娘のいる韓国系アメリカ人の友人は、ゆくゆくは新しく養子を迎えるのが私たちにとっての目標であると私に話してくれた。それはじつの子がいるかどうかでなく、それができる自分たちを誇らしく思うと何の気負いもなく微笑んだ。

ある日プリスクールに通う娘のクラスでは中国系の養子アンジーのお母さんが(娘のベストフレンドだった)学校で彼女のバックグラウンドについて話に来てくれた。何歳にどこからきたのか?どんな手続きがあったのか。どんなにアンジーを心待ちにしていたのか。それを聞いているアンジーは照れ臭そうでいながらとても嬉しそうだった。最後にお母さんは「アンジー、あなたを迎えることができて嬉しい。あなたは私たちの誇りであり、最愛の娘よ」と言って彼女を抱きしめた。とても感動的なシーンで私は涙ぐんでしまった。

けれども私はいつもこんなシーンを見るたび心の中でこう思っていた。

「養子である子供本人はどう感じているのだろう」

勇気のなかった私は、そしてそこまで子供達と親しくならなかった私は踏み込めずに聴けずじまいで日本に戻ってきた。そんな私が出会った本が西加奈子「AI」である。日本人の書いた本。もしかして真実じゃないかもしれない。でも私が長年感じていた疑問に一つの解を出してくれた本である。

「この世界にアイは存在しません」そんな文章でこの本は始まる。

主人公の名前はアイ。日本人とアメリカン人の両親の間に養子としてきたシリア系の女の子である。とても思慮深く美しいアイ。恵まれた家庭で愛情いっぱい受けて育つアイ。そしてご多聞に漏れず彼女は自分の出自を知っている。大きくなるにつれて、彼女はシリア難民の子供として生まれた同郷の他の子供たちの過酷な現実を知り、自分の恵まれた環境を罪と感じるようになる。ファミリーツリーのどこにも属さない私。不当な幸せ。911。生き残ってしまっった私。世界の天災や人災での死者の数を数えるようになる私。そして起こった東日本大震災。アメリカに住む両親や親友に何度も日本を離れるように説得されても日本に残ることを選択するアイ。アイは初めて危機に接する機会を得た。恐怖を語る健莉を得たいと思ったのだ。そして初めての恋愛。結婚。自分の血を分けた子供がほしいと切実に願うが流産してしまう。親友が望まぬ妊娠をして堕胎すると聞き、心の友を喪う。そんな時に起きたシリアの内戦、難民。カメラマンの夫になぜシリアを撮りに行かないか聞くアイ。伝える気持ちより撮りたい気持ちを優先させるという彼。シリアは撮りたいと思わない。では私は?ルーツだから撮る権利がある?翌朝恋人は彼女に言う「愛があるかだ」許せなかった親友に逢いたいと思う。理解できなくても愛があるかが大事。血が繋がっていなくても夫を家族と認識できる。いろんな愛のカタチ。親友を赦すことでアイは自分を赦すことができた。アイは存在すると心から感じることができた。

私の疑問に対する解ではないかもしれない。でも長年の疑問が少し晴れたような発見を私に与えてくれた本である。養子もいつか子供ではなく大人になる。陳腐な解釈になるが、人生は人それぞれ。理解できないことは世の中にたくさんある。でも繋がることはできる。そう言ったことを発見できた本である。

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