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地伝#12 ■1996年 ハブさん
引っ越したばかりの頃、東京に友達は1人もいなかった。今みたいにSNSで知り合いを増やせる時代ではない。世間ではポケベルから携帯電話に移行している頃だった。
京都にゲストで招いていたのはヒップホップのスター達だ。面識はあっても気軽に連絡できるような関係性ではなかった。店がオープンするまでは1週間くらい誰とも会話をしなかった時もある。
そんな寂しいスタートだった東京での暮らしから一変して、沢山の友達と出会う機会を与えてくれたのがソウスクのハブさんである。いろいろと思い返してみたい。
東京でDJとして活躍すべくミックステープを作った。タイトルはマグマが京都でやっているイベントから取って地熱にした。イベントはノブとリュウゾウが仕切っていたので僕は一切運営には関わっていなかった。その分、イベント名やマグマの名前を広めたい気持ちからこのタイトルにした。
地熱VOL.1とVOL.2を100本づつ作って京都・大阪のお店と渋谷に新しくオープンするお店「ドクタージキルTOKYO」で発売する。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56062887/picture_pc_1e8f0c7bba245b500289f346e0626aa9.jpeg?width=800)
ドクタージキルのステッカー: 暴走族のステッカー風だが狙ったわけではなく会社の人が真面目に作った結果このようになった。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52590385/picture_pc_c470b3ebe37e2602cef9e63e95be7d0f.jpeg)
地熱 VOL.1 :ポーズとか、かなり恥ずかしい。ドクタージキルのトイレに座って撮った写真。ロゴは会社の人に作ってもらった。21歳。
自費で作らずに会社で発売した理由は、とにかく名前を売りたかったからだ。10店舗以上ある自社店舗に置くことが可能になる。業務として制作したのでギャラは発生していない。この時点では売れると思っていなかったし金銭的なことは気にしていなかった。
寂しかった僕はミックステープを何本かポケットに入れ、徒歩5分のクラブCAVEに1人で行って、テープを配ったり女の子に声をかけたりしていた。それなりに楽しかったのだけど、どこか虚しい気持ちにもなっていた。
この頃に大阪の山本さんがソウルスクリームのハブさんを紹介してくれた。ハブさんはアパレルブランドの立ち上げを考えていたので、話を聞いてみてはどうだという形で繋いでくれた。是非やりたいと思い、会社に相談して96年の夏頃にソウスクの「WORD」を発売した。ヒップホップのアーティストがロゴの入ったTシャツを販売したりするのではなく、「アパレルブランド」として手掛けるのは、まだ例がなかったと思う。
WORDの広告写真を渋谷の野外駐車場で撮影した。真ん中に写っているのはSHIKIだ。晴れた青空を背景に「SKY IS THE LIMIT」の文字を入れていた。「可能性は無限大って意味なんだ」と教えてくれたハブさん。考え方や言葉の選び方が深くて、気難しい感じもするけどそれがまた良いというか、一本筋の通ったセンスにトウキョウを感じていた。
ハブさんを通して同じ年のセロリや他のメンバーを紹介してもらったり、WORDの衣装提供で著名なラッパーが店に訪れてくれた。その中に紛れてジャッキーチェンが来たのはウケた。店の前にあった香港ラーメンを食べに来たが、客が多かったので時間を潰していたらしい。イチローと父ローも来た。父ローは店内には入らず入口から見守っていた。
店の場所は渋谷駅から公園通りの坂を登りNHKの手前で右に入ってすぐ。B-BOYが集まる宇田川町エリアからは少し離れているけど、公園に面していて落ち着いた良い場所だった。
ハブさんと一緒に過ごす時間が多くなり、地熱の3作目に収録するため自作のビートでハブさんにラップをしてもらった。これも100本ほどしか作っていない。
ハブさんの紹介でメリージョイの肥後ちゃんもここで出会った。こちらから話しかけてもあまりリアクションがなく間が掴みにくい。聞いてないわけではなく言葉をひとつひとつ丁寧に飲み込んでくれているような感じだった。ヒップホップの何がカッコイイのか自分の判断軸をしっかりと持っていて、僕にはない感性を持っていることは少ない会話から解った。会うたびに新しい価値観を気付かせてくれる尊敬すべき人だと思っている。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52709607/picture_pc_8c3bd5199211754671c24b1d6093051d.jpeg?width=800)
セロリは渋谷のクラブファミリーで桜井君やビートマスター、ヨンホ君を紹介してくれた。DJにも呼んでくれてファミリーにもよく行くようになる。Qや山田マンともファミリーではじめて会った。見た目が怖かったからその時はあまり話していない。Qの後ろポケットに何かのステッカーを貼ってイタズラするハブさんを見てヒヤヒヤする程、怖い人だと思っていた。
ハブさん、ハブさんと何度も名前が出ている通り、とにかく僕のトウキョウは間違いなくハブさんが沢山の人を繋いでくれたのだ。ここに名前を出していない人達もまだまだいる。こんな話はご本人にもしたことがないと思うけど、96年を振り返るとまずハブさんを思い出す。
※追記
久しぶりにハブさんと電話で話した。NGなしとの事なので思い出せばまたいろいろ書きます笑
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