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最期を共に過ごさせていただく。

以前のMMVCでもご紹介したパライソサンクスに入所されているF様。いよいよ最期の時を迎えられました。今回はその時間をお伝えします。

6月に誕生日会を行ったF様でした。それまで元気がなかったのですが、ほんの少し、心なしか元気になったかな?と感じていました。

ただその後8月に入り、食事をするも嘔吐や吐き気があり、食べる量も減っていきました。
スタッフ間でどうしたら食べてくれるかと考え、食事の時間を変えてみたり、声掛けをこまめにして様子を伺いつつ少しでも食べてもらえるようにしたり、食形態を食べやすい形に変更したり、アイスやゼリーなど食べやすいものに変えたりと工夫をしましたが、食べる量はどんどん減って、8月30日、看取り指示が出ました。

看取り
無理な延命治療などは行わず、その方が自然に亡くなられるまでの過程を見守ること、サポートする事。

F様が最期を迎えるにあたり、どのような環境がベストか改めて考える中で、テレビをつけるとじっとテレビに目を向ける様子がありました。このことをご家族様に伝えると「テレビが好きでよく情報バラエティーやサスペンスを見ていたんです。」と教えていただきました。
そこから、出来るだけ好きな番組を見ながらF様と会話をする。とはいってもずっと部屋にこもっていても気持ちはふさぎ込んでしまいますので、散歩の時間を作るなど、F様の生命力のレベルに合わせて今出来ることを実施するようにしました。この時もF様は、ケアをする度に「どうもね。」「ありがとうね。」とお声をかけてくれました。

その中で9月17日、F様は逝去されました。ご家族様が来設してF様の顔を見た際、「お母さん、何もできなくてごめんね。今まで、ありがとう。」と言って泣かれていました。
その後、私たち職員に対して「母は、自分に厳しくいつも凛とした表情で過ごす人でしたが、サンクスに入所してから穏やかな表情で安心していました。家では、こんな穏やかな表情でいることは私も母も出来なかったと思います。本当に感謝しています。」というお言葉を頂きました。

F様の担当介護士の横田さんは、今まで関わる中で撮ってきたF様の写真をアルバムに残し、最期まで関わらせ頂いたことへの感謝の気持ちとしてご家族様にお渡しさせて頂きました。

その後サンクスでは、職員間でグリーフケアを行いました。

グリーフケア
死別を経験しますと、しらずしらずに亡くなった人を思い慕う気持ちを中心に湧き起こる感情・情緒に心が占有されそうな自分に気づきます(喪失に関係するさまざま思い:「喪失」としてまとめます)。また一方では死別という現実に対応して、この窮地をなんとかしようと努力を試みています(現実に対応しようとする思い:「立ち直りの思い」としてまとめます)。この共存する二つの間で揺れ動き、なんとも不安定な状態となります。同時に身体上にも不愉快な反応・違和感を経験します。これらを「グリーフ」と言います。グリーフの時期には「自分とは何か」「死とは…」「死者とは…」など実存への問いかけをも行っています。
このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。(参照元:一般社団法人日本グリーフケア協会)

五彩会では社内チャットにLINEWORKSを導入していますが、それを活用して、サンクス全職員でF様との思い出、印象に残っている出来事を共有し合いました。

「F様は、入所されてから利用者様にもスタッフにも優しく、特に誕生日のイベントでは着物を着られていつもと違う表情や仕草を見せてくれたことが印象的でした。お祝いをして涙を流して喜んでくれたことが印象的でした。これからも沢山の笑顔が観れればと思います。」
「F様との関わりの中で、会話や動作が1つ1つ丁寧な印象がありました。看取りになり、残りの時間を少しでも穏やかに過ごしていただけるよう、昔の話をすると、どこか懐かしむ様子がありました。今後も入居者様の人生に関われる時間を大切にしていきたいです。」
「F様は、1つの事をする度に「ありがとうね。」とお礼の言葉を言ってくださったことが、印象に残っています。部屋で過ごすことが多くなった際、手にハンドクリームをつけるとうれしそうにしてくれたのを覚えています。これからも少しでも出来ることを実現していこうと思います。」
こんな感じで続くみんなからの言葉を見て、横田さんも「自分のやったことが、こんなにみんなに印象に残ってビックリした。やってよかった。」と自分自身の振返りと自信にもつながっています。

F様に限らず全ての利用者様が、自らの人生を通して生きることの凄さを我々に教えてくれます。我々はこれを一つの出来事として消化するのではなく、必ず次に生かす責務があります。今回のF様の様に出来て良かったこと、一方で出来なかったこと、本当はこうすればよかったという反省点もみんなで共有する中で、ケアの方向性を統一していきます。そしてよりよいその人の暮らし、最期をデザインしていくのが我々の仕事です。

今回のF様から頂いた学びも次に繋げていきます。

まだまだ我々のケアも道半ばですが、引き続き精進してまいります。


(地域密着型特別養護老人ホーム パライソサンクス)


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