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備忘録 | 24年3月

(できれば毎月)残していきたい備忘メモ。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。


劇場鑑賞 映画

『犯罪都市 NO WAY OUT』

監督:イ・サンヨン

『犯罪都市』シリーズ第3作目。今作でとにかく驚いたのは、マ・ドンソクの運動能力。パッと見でパワーがあるのは理解できる。しかし本作の注目すべき点は、身のこなしの速さだ。パンチの繰り出すスピードも、相手の攻撃を避けるスピードも、とにかく早い! スピーディーというより、「クイック」という印象を受けるが、その身体能力を眺めるだけで、感動させられる。
どうやら今作に向けてボクシングの動きを取り入れた練習を行っていたようで、それがクイックネス向上の要因として大きそうだ。現在、最強のアクションスターはもしかしたらマ・ドンソクかもしれない。

『コヴェナント / 約束の救出』

監督:ガイ・リッチー

アフガン戦争時、アメリカのビザと交換を条件に、現地の人々に通訳を依頼していたというアメリカ軍。今作はアメリカ軍に協力した通訳と、アメリカ軍兵士の物語で、3部構成になっている。アルカイダの武器を見つけ出すミッションものとしての1部、通訳が兵士を救出するロードムービーとなる2部、そして兵士の苦悩が描かれる3部。そうした変化する展開がまずおもしろい。
途中途中で挟まれるドローン撮影や、空気の読めていないスローモーションは効果的と言えないが、全体としてはガイ・リッチーの妙なケレン味を抑えた誠実な作風になっていて好感を抱いた。アルカイダを裏切って通訳をしてくれたアフガニスタン市民に対するアメリカの不義理・罪を告発するような内容で、これはアメリカとの適度な距離感のあるイギリス人のガイ・リッチーだからこそ描ける作品だと感じる。おそらくアメリカ人監督ではこうは描けない。

『デューン 砂の惑星PART2』

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

SF小説の金字塔になった『デューン』という作品の物語、そして世界観や設定のおもしろさがPart 2まで来ると、よく理解ができる。特にサンドワームに乗るフレメンの設定は視覚的にも楽しい。
「英雄」がどう祭り上げられ、生まれていくのか? 単純な英雄譚にならないのはユニークだろう。ゼンデイヤとのタッグによる戦闘場面もスリリングだ。しかし、それにしても(特にシャラメの)顔面のアップが多すぎる。顔のアップをもう少し削るだけでも、メリハリがついてさらにおもしろい作品になったんじゃないかと思う。

『美しき仕事 4Kレストア』

監督:クレール・ドゥニ

不勉強で1999年のバージョンを見ていないから、4Kになってどのくらい印象に変化があるかわからないが、まずなんといっても鮮烈な「緑色」が印象に残った。回想するドニ・ラヴァンが住む家の門や、兵士たちの帽子、そしてサンタンを覆う布などがどれも鮮やかな緑色をしている。ドニ・ラヴァンの緑色といえば、レオス・カラックスのメルド役を思い浮かべる人も多いだろう。もしかしたらカラックスは『美しき仕事』を見て、メルド役の衣装を緑色にしたのではないかと妄想した。
またドニ・ラヴァンの身体性をこれでもか!と刻みつけたフィルムとしても面白い。変則的な腕立て伏せをなんなく行う場面から、終盤のダンスシーンまで、見せ場は盛りだくさんだ。ベッドに横たわったドニ・ラヴァンのピクピクと動く血管を映す場面は、カメラが「これを撮らないではいられない!」と言わんばかりの動きを見せていた。

ピエール・エテックス諸作品

U-NEXTで、ピエール・エテックスの短編『破局』(1961)『幸福な結婚記念日』(1961)『絶好調』(1965)と、長編作品『恋する男』(1962)『ヨーヨー』(1965)『大恋愛』(1969)を鑑賞。ジャック・タチ『ぼくの伯父さん』で助監督をしていたというエテックス。もちろんジャック・タチもおもしろいのだが、私はエテックス作品のほうがより惹かれた。顔立ちもバスター・キートンに似たものを感じる。
特に『ヨーヨー』は、主人公であるヨーヨー親子の物語を通じて、ヨーロッパの歴史(大恐慌や世界大戦など)と映画史を同時に描き出した真の傑作だと思う。

プレイリスト

ScHoolboy Qの新作は前評判の通り、自分も素晴らしいと感じた。一方で自分の現在のモードとして、GermJoyner Lucasのようなサウンドにこそ耳を奪われたのも事実。Kenny MasonのEPはこれまでの作品ほどよいとは思わなかった。

仕事

佐藤可士和×GLP帖佐義之 対談 - TECTURE MAG

執筆:浅井 剛志  撮影:tohaさん

ファティ・アキン監督 インタビュー記事 - NiEW

取材執筆:木津毅さん 編集:浅井 剛志

取材に向けて『RHEINGOLD ラインゴールド』を試写で拝見した。最初の感想が「ドイツで移民が有名になりたきゃ、金盗むかラッパーになるか」とT-Pablowのラインを引用したくなるくらい、BAD HOPみたいだと思った。しかしよく考えるとこれは逆で、BAD HOPが登場したときにこそ「海外のラッパーみたいだな」と感じたはずだった。つまりBAD HOPの登場が日本人の感覚を書き換えてしまったという証だろう。

Big Thief(Adrianne Lenker, Max Oleartchik)インタビュー動画 - TURN TV

撮影・編集:浅井 剛志

この取材は1年以上前に実施したものだが、マックスとエイドリアンがあまりに仲良さそうで微笑ましくなった。2人でずっとふざけている姿に、海外の視聴者にも受けているようでうれしい。

その他

ジョナス・メカス展 「われわれは理想主義者でなければならない – Be idealistic -」

パレスチナの人々が虐殺され、故郷を失っていく現在の状況は、同じく故郷を追われたジョナス・メカスの境遇にも似たものを感じる。メカスを通じて、現在の社会で起きていることにまざなしを向ける。企画者側のそうしたメッセージが少しずつ散りばめられていたような展示だった。
会場となったグラフィックデザイナー粟津潔の邸宅(原広司設計)もすごかった。2つに分かれた子ども部屋が印象的だった。
また資料の中に栞代わりとして、鍋の具を決めるあみだくじが挟まっていて、とてもいい気分になった。ピザ鍋とはなんなのか気になる。
3月16日、粟津潔邸にて。

GIFT

濱口竜介が監督した映像作品と、石橋英子の演奏によるセッション。本作を見ることで、すでに試写で拝見した『悪は存在しない』がどんな作品だったか、その解像度が高まった。これほど煙や水蒸気が映し出された作品だったとは…。サイレントになることで、映像の中で起きる微細なアクションにより目が向くようになり、「映画」と新しく出会い直すような体験になった。
次は実際にサイレント映画を作って、石橋さんの演奏で各地を巡業する上映会を開くような、濱口監督の新作が見たいと思うのは、贅沢だろうか。なんなら、弁士もつけて。
3月19日、渋谷のPARCO劇場にて。

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