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備忘録 | 24年6月

(できれば毎月)残していきたい備忘メモ。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。


劇場鑑賞 映画

『マッドマックス:フュリオサ』(2024)

監督:ジョージ・ミラー

正直、前作を上回る作品になっているとは言い難い。それでも、走るガスタンクを横からカメラがとらえたシーンはあまりにも素晴らしい。まるで『大列車強盗』のようなサイレント期のアクションシーンに仕上がっていた。そのシーンだけでも、十二分に本作を観る価値がある。若い時期のフュリオサが宙吊りになったトラックで作業を行うさまはハロルド・ロイドのようでもあり、今回はサイレント映画への憧憬がかなり濃厚に現れていたと思う。
またクレーンでバイクを釣り上げるウォーボーイズや、グラインダーで空を飛ぶ敵役たちなど、「どこかしらとつながっていること」が本シリーズの重要なモチーフになっていると感じる(『デスロード』でもウォーボーイズとマックスがつながっていた)。

『関心領域』(2024)

監督:ジョナサン・グレイザー

多くの批評・感想でも触れられている通り、「音」が凄まじい作品。基本、カメラが固定で監視カメラのようにヘス一家の生活を覗き見しているが、だからこそいくつのカメラが動く瞬間にはドキッとさせられる。
とりわけ誕生日プレゼントでもらったカヌーで幼い息子・娘を連れて川を下った場面。川の上流から、焼かれたユダヤ人の遺灰が流れてきたのを認めた瞬間、走って子どものもとに走るヘスを横移動で追いかけるカメラはその運動の滑らかさにヒヤリとさせられた。

『違国日記』(2024)

監督:瀬田なつき

いまいちピンと来なかった。原作は1巻くらいまでは読んだが、「言葉」「セリフ」に力がある作品という印象で、そうした強い言葉が魅力のマンガを映像としておもしろく見せるのが難しいのだろう。
最近、人気のあるマンガはエモーショナルな言葉が特徴になっている印象があり、そうしたものを現代の人々が欲しているのだろうとも理解する一方で、自分はあくまでそうしたものに抵抗していきたいと思っている。

『左手に気をつけろ』(2024)

監督:井口奈己

思わず「ご用だご用だ!」と口ずさみたくなる。監視社会を風刺しながらも、コミカルで、ファンタジックな作品。タイトルからしてゴダールの引用で、各場面にもそうした遊び心が溢れているが、それだけではない魅力に惹きつけられる。恐ろしい物語のはずなのに、映画に登場する子どもたちの楽しそうな姿に、頬もゆるんでしまうだろう。
エンドロールで流れる楽曲に関して、妙に今っぽいフロウのラップを子どもたちがしているなと思ったら、リリックとラップ指導がACE COOLだった。

『蛇の道』(2024)

監督:黒沢清

哀川翔×香川照之の1998年版ほどの不穏さ・不条理さは感じられないし、何よりコメットさんが登場しないのだが、それでもおもしろかった。オリジナル版でそうだったように、今作は高橋洋黒沢清による「呪いのビデオ映画」といえる。1998年版は「ビデオ」だったが、時代を経て動画はより簡易に拡散されるものになり、さらに「Zoom」というツールも加わった。Zoomの向こう側に得体の知れないやばいものを感じるという点では現代的だろう。

『クワイエット・プレイス DAY 1』(2024)

監督:マイケル・サルノスキ

モンスターパニックホラーの皮をかぶっているが、私が思い浮かべたのは三宅唱監督『夜明けのすべて』だった。サミラ(ルピタ・ニョンゴ)は身体的に、エリック(ジョセフ・クイン)はパニックになると制御ができなくなるメンタルに、問題を抱えている。そうした男女ペアが「性愛の関係に陥らず」に、「お互いをケアしあう」というのが物語の根本にあるドラマだった。
終盤、ハーレムのジャズバーでピザを食べながらショータイムごっこをするシーンは、『夜明けのすべて』のプラネタリウムシーンに相当する名場面だろう。

『パスト ライブス/再会』(2024)

監督:セリーヌ・ソン

フレームの収め方がスマートな作品。ファーストカットで、3人を正面から切り取り、「この3人はどんな関係性なのか?」と外野に予想させることから始まる物語。それが後半、3人でバーにいるシーンでは大きく変わる。ノラとヘソンの2人だけをフレームの内側に収め、その外側を排除するようなカットがあり、さらにそのあとにアーサーを1ショットで映し出す。このときのアーサー1人の横顔から受け取るものは、観客それぞれだろう。終盤でプレイバックされる、シンボリックな「わかれ道」のカットは、ちょっとシンボリックすぎて少し過剰だったか。

プレイリスト

6月は待ちに待ったTemsのアルバムがリリース。内容も期待通りに素晴らしかった。ヒップホップはHit-boyの父親Big Hitのアルバムが渋くて好きだった。またMustafaによるガザソングも記憶に残しておきたい。

仕事

NiEWで映画『あんのこと』に関する対談記事を企画・編集した。
取材執筆:松井友里さん 撮影:黒羽政士さん
映画『あんのこと』は「これは実際にどんな人だったのだろう」と、登場人物たちの背景についてもっと深く知りたいを感じさせてくれる作品だった。そうした自分の実感をもとに、この対談は企画した。

2024年 取り上げた映画作品

1月
『ショーイング・アップ』
『ファースト・カウ』
『トーク・トゥ・ミー』
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』
『彼方のうた』
『哀れなるものたち』
2月
『ゴースト・トロピック』(2019年)
『ブッシュマン あるナイジェリア人青年の冒険』(1971年)
『夜明けのすべて』
『カラーパープル』
『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
『梟―フクロウ―』
『瞳をとじて』
3月
『犯罪都市 NO WAY OUT』
『コヴェナント / 約束の救出』
『デューン 砂の惑星PART2』
『美しき仕事 4Kレストア』
ピエール・エテックス諸作品
4月
『コット、はじまりの夏』
『エル・スール』(1983)
『オッペンハイマー』
『アイアンクロー』
『Here』
『Oasis』
5月
『ラブレス』(1982)
『青春がいっぱい』(1966)
『猿の惑星 キングダム』
『ひかりの歌』
フランソワ・トリュフォー監督 12作



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