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「タンゴ・葉山・遊散歩」(7)

夢を見た。
タンゴが巨大な竜巻雲に乗って天に登ってゆく。
その後ろ姿をおろおろと私が追いかけようとしていた。
ハッと気づいた、私は空を飛べない。
どうする、このまま手をこまねいてタンゴが去るままにただ見送るのか?
胸が苦しい、心臓が口から飛び出てきそうだ。
何をやってるの!?
黄色い煙が立ち上り、煙の中からドルティが表れた
タンゴの前に飼っていたミニチュア・シュナウザーだ。
でも君は死んだんじゃあ・・・?
そう尋ねようとしたところで目が覚めた。

このところ夜遅くまで起きて古い資料整理をしていた。
断捨離を気取ったのだが、慣れないことはするものじゃない。
寝不足気味で、ソファでうたた寝をしていたら何だか妙な夢を見てしまった。
でも、久しぶりにドルティに会えて良かった。
タンゴと違って、私にあまり隙を見せない子だった。
私にというより、人間に隙を見せない子だったと言った方がいいのかもしれない。しっかり自分を持ち、すべてに自分流を通そうとした子だった。
いずれ、ドルティのことはじっくりと思い出して書いてみたい。

でも、いまはタンゴと遊散歩だ。
天空の大気は澄んでいるようで、連日富士山がよく見える。
朝の富士山は全身に薄青いベールを纏って、3合目あたりまで灰白色に冠雪した優美な姿を見せてくれる。
このところ急に冷えて、夕方の散歩の頃(ほぼ午後五時頃だが)は風も少し肌寒いが、夕暮れ時の富士山はぼんやりと暮色に染まっていく空から透明な灰色の山肌を浮かび上がらせてまるで幻のように美しい。

夕方の散歩の時、森戸神社にタンゴと一緒にお参りをした。
裕次郎灯台越しの江ノ島、江ノ島の灯台越しの富士山に見とれていると、タンゴがしきりにリードを引っ張る。全身の力で先ほどお参りをした神社本殿の方へ戻ろうとする。
タンゴが引っ張る方を見ると、案の定、白くて巨大なゴールデン・レトリバーがこちらへ向かって女性の飼い主さんを引っ張ってくるところだった。
双方に申し訳ないが、残念ながらこの接近遭遇はいただけない。タンゴの他犬アレルギーがどの程度改善しているのか否か、私には何の手がかりもないのだ。一定以上に近寄りすぎないようにリードを握りしめてすれ違った。相手の犬は切なそうな鳴き声をあげ、タンゴはそちらへ向かおうと足掻いた。
ロミオとジュリエットの逢瀬の邪魔をする悪役になった気分だが、仕方ない。
犬の社交会のマナーを学ぶ必要があるのは、タンゴではなく私だとよくわかっているのだが、すみません。いまだサボっております。


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