連載小説「和人と天音」(8)
「いらっしゃいませ」店頭で元気の良い声が響いた。先輩アルバイトの響の声だった。音域が広くてどの声の時ものびやかに響く。「響」と書いて「ひびき」と読ませる名前も歌手みたいだと、初対面の挨拶で天音は思った。でも、響は外科医志望で私立の医大受験を目指す高校三年生だ。
天音は先客のカップルの注文を聞いていた。アルバイトを始めて三ヶ月が過ぎ、「接客のセンスはわたしよりあるよ」と、響は言ってくれていた。
「かしこまりました。海の幸のサラダとパスタのセットをお二つ、パスタはタコのリングイ