【選択的夫婦別姓】家族の絆に関する調査・世論調査のまとめ
選択的夫婦別姓に対する反対意見で「名字が同じでないと家族の絆が薄れる」や「家族の一体感が薄れる」といった趣旨の主張があります。
「絆」というものはどういったものかは、人それぞれだとは思いますが、各人が思う「絆」というものは、何から生まれるものなのかは調査することができます。「絆」が何から生まれてくるものか調査した世論調査を2つ、未成年を対象にした調査を1つ見つけたので紹介します。
朝日総研リポート138号(1999年3月実施)
まずは、朝日総研リポート138号に掲載されている、1999年3月に実施された調査結果を紹介します。質問5の「家族のきずなは主に何から生まれると思いますか」に対して、以下の6つの選択肢から1つを選んで回答させています。カッコの中は回答結果の割合を示しています。
一緒に暮らすこと(40%)
血がつながっていること(12%)
扶養したり扶養されたりすること(5%)
名字や戸籍が同じであること(1%)
家族一人ひとりの努力(39%)
その他・答えない(3%)
結果をグラフにしたものは次のようになります。調査の詳細は画像内に記載しています。
調査結果を見ると、「一緒に暮らすこと」が40%で、「家族1人ひとりの努力」が39%で、これらで回答の約8割を占めています。一方で「名字や戸籍が同じであること」は1%でした。
質問文は「家族の絆は主に何から生まれると思うか」なので、「名字や戸籍が同じであること」が家族の絆にとって役に立たないということを意味するわけではありません。絆が生まれる要素は複数あるのは当然なので、複数回答にすると、この選択肢を選ぶ人は一定数はいると思います。
定期国民意識調査(2009年12月、朝日新聞社)
次に、朝日新聞社が2009年12月に行った、定期国民意識調査の問9「あなたは、家族を結びつけているものは,何だと思いますか」の結果を示します。カッコの中は回答結果の割合を示しています。「家族を結びつけているもの」は、絆と同じような意味と考えてもよいでしょう。
名字や戸籍(2%)
血のつながり(29%)
一緒に暮らすこと(30%)
経済的なもの(4%)
精神的なもの(33%)
そのた・答えない(2%)
この調査でも「名字や戸籍」と回答した人は2%であり、家族を結びつけるものとして一番重要だと考えている人は少数派ということが言えそうです。
子どもから見た絆を強めた体験
次に紹介するのは、(財)ひょうご震災記念 21 世紀研究機構による『青少年の生き方を支える「家族の絆」の構築戦略』の研究調査報告書です。調査方法は次のようになります。
調査方法:質問紙調査
調査対象者:兵庫県の中学校および高校に通う生徒、3513人
調査体調者の選定:学校単位で選出。詳細は報告書を参照
調査時期:2009年9月中旬から10月下旬まで
回収状況:配布票数3513、有効回収票数2558(有効回収率72.8%)
青少年の生き方を支える「家族の絆」の構築戦略 研究調査報告書 2010年3月
https://www.hemri21.jp/contents/images/2019/06/kazokunokizuna_5040.pdf
調査票の問14で、以下のように家族のきずなについての質問があります。
13の選択肢の中から、父親・母親・きょうだい・祖父母のそれぞれに対して、きずなが強まった経験を3つまで答えさせています。最大3つなのでそれ以下の回答も可能です。
回答結果は次のようになりました。
同じ姓を名乗ることで絆が強まったと回答した割合は、父親に対して23.3%、母親に対して20.1%、きょうだいに対して19%となっています。回答の上位3位までを示した表は次のようになります。「同じ姓を名乗ること」は父親・母親・きょうだいで5位でした。
この表から平均回答数(1人あたり何個の選択肢に回答したか)を計算すると、父親との絆は2.40個、母親との絆は2.53個、きょうだいとの絆は2.23個、祖父母との絆は2.23個となりました。
この表をグラフにしたものを次に示します。
中学生・高校生を対象にした調査でも、「一緒に住むこと」が家族の絆が強まった経験と考えている人が一番多いことが分かりました。
配布した質問表では自由記述欄で「あなたにとって理想の『家族のきずな』とは、どんなものですか」と「いままでに、家族のきずなが強まったと感じた思い出を書いてください 」という設問があり、報告書p.52では自由回答欄の回答を紹介しています。報告書の第6章の「まとめ」では、これらの結果をまとめて次のような3つ知見として整理しています。
まとめ
成人を対象にした世論調査では、名字や戸籍が同じことが、絆を生む主な要素だと考えている人は1~2%であるという調査を紹介しました。中学生・高校生を対象とした調査では「同じ姓を名乗ること」を絆を強めた経験と回答した人は約20%で、「一緒に住むこと」が父親と母親に対しては50%を超えていました(3つまで選択可能な回答方式)。
これらの結果から、絆というものが名字・姓が同じであることのみから生じると考えている人は少数であり、日々の行動の結果として生まれるものだと考えている人が多いことがわかりました。
おまけ:親子別姓の子どもはどう思っているのか
「すすめよう! 民法改正ネットワーク(38 団体)」が2000年9月から行った調査の報告「『子どもがかわいそう』って、ほんとなの?~別姓夫婦の子どもたちのアンケート調査結果概要~」では、親子別姓の子どもたちに「名字がいっしょでないと家族のつながりがなくなるという意見がありますがどう思いますか」と質問した回答を掲載しています。
世論調査などでは、実際に親子別姓の子どもが親と名字が違うことについて、どう思っているかは調査されていません。なので、実際に親子別姓の子どもが、どう思っているかを調査することが実態を把握するために重要だと思います。
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