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読書記録 vol.5 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

《本書の概要》
 これまで重視されてきたサイエンス偏重(分析・論理・理性に軸足を置いた)の意思決定から、個人の美意識(アート)を取り入れた経営に進化すべきことを示唆した一冊。

 論理的・理性的な情報処理スキルの限界、自己実現欲求の市場化、システムの変化にルールの整備が追いつかない、といった現代を取り巻く環境において、美意識に基づく思考や組織のあり方に言及している。

《本書で得られた気づき》
■論理・理性偏重の結果とアートのあり方
 コンサルタント業界で用いられる問題の「解決」法が世の中に波及され、ビジネスも科学するものだという認識が一般化された。しかし、誰しもがそれに頼ることで、経営における意思決定の膠着と、結果としてのビジネスの停滞が起こる。

 論理・理性偏重の結果、同じ「解決」手段を実行する集団が多数発生し、「解決」の結末がすべて同じものになりつつある。AとBの差別化はなくなり、正解がコモディティ化する。そうして現れる結論(プロダクト)には価値がなくなり、スピードとコストだけが目立つようになる。

 これでは新しいビジネス・思考は生まれない。今後のビジネスに重要なことは、美意識に基づくビジョンとストーリーを掲げられ、サイエンスやクラフト(実行力)でその思考を支えるという組織構造である、とする。

■モノ・サービスのファッション的思考
 自己実現欲求の市場が登場することで、消費ビジネルは(機能などではなく)ファッション的側面で競争せざるを得なくなる。ここで重要なのが、世界観やストーリーといった真似できない価値である。

 外観やテクノロジーは簡単にコピー可能である。しかし、プロダクトに込められた想いは決してコピーできるものではなく、そこに共感が生まれ、拡大していく、とする。

■メモ
 トップだけがビジョンを掲げればいいか、そんなことはない。美意識はエリートだけが持てばいいか、そんなことはない。命令される立場の人には関係のない話か、そんなことはない。

 組織全体がビジョン・ストーリーに共感し、高い美意識で組織自体を支えなければならない。「私の仕事はこの領域だから関係ないや…」とは言っていられない。

 組織も当然、個人を取り巻く環境もめくるめく変化していく。自身が組織の一個人でありながら、組織を体現するものとして自覚をもつ必要がある。そして、関わるプロダクトの将来を、自分の鍛えた美意識のモノサシで想像し、社会に貢献することが求められる。

 全員がそれをできた時、組織が最強だ!

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山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』光文社新書、2017年7月
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