見出し画像

何でも自分の嫌いな事を月並と云うんでしょう

仕事でとあるイベントに参加する。イベント運営者曰く、参加者用のまい泉かつサンドが大量に余って困っているらしく、遠慮なくたくさん持ち帰る。

帰りにKindleで夏目漱石『吾輩は猫である』。苦沙弥(くしゃみ)先生の奥さん、つまり漱石の奥さんらしき人がちらほら会話に加わり始める。漱石の奥さんがモデルの人物と言えば、『道草』にも登場する。(当時の主流な価値観に照らしあわせても)男尊女卑の過ぎる漱石の横着に、『道草』の奥さんは面従腹背を貫く。その只では転ばない、彼女のしたたかさがとても好きで、その面影が苦沙弥先生の奥さんにもある。訪問中の迷亭君をほっといて突然部屋を飛び出す苦沙弥先生。残された迷亭君と奥さんの会話がまた。不在の苦沙弥先生を評しあう二人。

「偏屈は少々偏屈ですね、学問をするものはどうせあんなですよ」と調子を合わせるような弁護をするような不即不離の妙答をする。「せんだってなどは学校から帰ってすぐわきへ出るのに着物を着換えるのが面倒だものですから、あなた外套も脱がないで、机へ腰を掛けて御飯を食べるのです。御膳を火燵櫓の上へ乗せまして――私は御櫃を抱えて坐っておりましたがおかしくって……」「何だかハイカラの首実検のようですな。しかしそんなところが苦沙弥君の苦沙弥君たるところで――とにかく月並でない」と切ない褒め方をする。「月並か月並でないか女には分りませんが、なんぼ何でも、あまり乱暴ですわ」「しかし月並より好いですよ」と無暗に加勢すると細君は不満な様子で「一体、月並月並と皆さんが、よくおっしゃいますが、どんなのが月並なんです」と開き直って月並の定義を質問する、「月並ですか、月並と云うと――さようちと説明しにくいのですが……」「そんな曖昧なものなら月並だって好さそうなものじゃありませんか」と細君は女人一流の論理法で詰め寄せる。「曖昧じゃありませんよ、ちゃんと分っています、ただ説明しにくいだけの事でさあ」「何でも自分の嫌いな事を月並と云うんでしょう」と細君は我知らず穿った事を 云う。

夏目漱石『吾輩は猫である』[Kindle版]青空文庫,Kindleの位置No.1602

最近は本を開くたび、本の中の人々に会いに行くような感覚。最近読んだ本の中では、トルストイの『アンナ・カレーニナ』ぶり。

帰宅して、奥さんと夕食に例のかつサンドを山分けしようとするが、豚肉のかつサンドだと思っていたそのほとんどが、エビかつサンドだった。私はアレルギーのためエビを食べることができない。山のように持ち帰ってきた自分が空しい。大量で申し訳ないがと断って、大量のエビかつサンドを奥さんに差し出す。

食後に散歩がてらドラッグストアに行き、トイレットペーパーなどの日用品をまとめ買い。なんとなしにペットフードのコーナーを眺めると、猫の餌が人間の食べ物より高価なものばかりで少しひく。帰り道は、両腕にぶらさがる買い物袋が重すぎて、重心が偏ったままよろよろ歩く。

そのあとジム。『植物は〈未来〉を知っている―9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』を読む。第一回ロンドン万博(1851年)、ハイドパークに設営された水晶宮の構造は、オオオニバス(大鬼蓮)の茎構造をヒントに設計されたそう。この巨大な睡蓮は、当時の女王に因み、別名ヴィクトリア・レギアと呼ばれた。葉の上に子どもを載せても平気らしい。しかしこの本は、随所に挿入された植物の写真の発色が見事で、印刷刷りが素晴らしい、、

Amazonが9/2まで、3冊以上本を買うと10%ポイント還元のキャンペーン中であることを知り、買い物カートに放り込んだままの本から、電子書籍化しておらず、かつ中古市場で値崩れしていない本をいくつか注文する。そうこうするうちに夜が更ける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?