見出し画像

内なる力① 生命は機械ではなく、流れである

健康でいるため、病気から回復できるするために体が持っている「内なる力」を高めよう。というのがオステオパシーの基本的な考え方であった。


今回は生命の内なる力であるターンオーバー(代謝回転)という働きを見ていこう。

破壊と新生

生物と機械の違いのひとつとして、自己修復できるかどうかがある。機械は自己修復できない。各部品は必ず消耗するが、その消耗をリカバリーするメカニズムを持っていないからだ。

スマホが壊れてしまっても自己修理する力はないため、一晩充電したところで翌日になって改善しているということはない。

だからこそ私たちはスマホを2~3年で買い換え、冷蔵庫なら10年経てばそろそろ買い換えようと思う。


一方、生命は消耗した部品を自動で新品に取り替えるメカニズムを持っている。このような力が働いているため、寝ているだけでアザが治ってしまう。

これは消耗した細胞を壊し、新たに新品の細胞を補充しているからだ。人間の細胞は(諸説あるが)約60兆個といわれている。

この60兆個の細胞は常に古い細胞を壊し、新品の細胞と取り替える作業を行っているのである。これをターンオーバー、または代謝回転と言っている。


先日私はある友人に1年ぶりに会って「変わらないね!」と言い合った。

しかし屁理屈を言うと変わらないということは間違いである。

私の体は毎日のターンオーバーにより1年前の細胞はほとんどなくなっている。私は材料だけで言えばほとんど別の物質なのだ。テセウスの船※のような話である。

※テセウスの船 
テセウスパラドックスとも言う。ある物体(オブジェクト)の全ての構成要素(部品)が置き換えられたとき、基本的に同じであると言える(同一性=アイデンティティ)のか、という問題である。

ターンオーバーの発見

このターンオーバーを最初に観察した人物がユダヤ系ドイツ人のルドルフ・シェーンハイマーだ。

第二次世界大戦のユダヤ人迫害の逃れて米国へ渡った研究者である。彼の実験ではネズミを使い肉体を作っている分子が入れ替わっていることを確認した。

実験したネズミではたった3日で半分ほどの分子が入れ替わっている。3日で半分は別のネズミになっていたということである。

つまり日々古い分子が老いて朽ちていくが、新しい分子を常に生み出して補完する。

住宅で言えば、毎日5枚ずつ古い瓦を外す。そこに5枚新品の瓦を補充する。これを毎日繰り返すと半年ほどですべての瓦は交換される。

しかし住宅の屋根をそのようにメンテナンスする人を見たことがあるだろうか。

バカげているとしか思えない。

なぜなら瓦は50~100年の耐久年数があるからだ。

毎日やるよりも50年に一度まとめて交換すればよい。ただ生命は限りある貴重なエネルギーを使ってでも、毎日少しずつ細胞の入れ替えをしている。

なぜこのような非効率的なことをしているのだろうか。もっと丈夫に100年くらい持つように進化してもよかったのではいだろうか。

ターンオーバーの利点

実際、頑丈な細胞も存在している。神経細胞はずっと入れ替わらないし、心筋細胞もほとんど入れ替わらず、生まれた時に存在した細胞を高齢になるまで保有している。

しかし多くの細胞は、頑丈でいることよりも頻繁に新品になることを選んだ。その選択にはメリットがあるからだ。


細胞が何らかの理由で破壊されたときにも、少し辛抱すれば新しい細胞が生まれてきてくれる。わざと壊れやすく作ることで、交換しやすくなるのだ。

それがもし頑丈な細胞であればそうはいかなくなる。例えば神経細胞は壊れにくく頑丈だが、一度壊れてしまうと新しい細胞は生まれてこない。したがって脳梗塞になると障害を受けた神経細胞は2度と治ることはない。

心筋も心筋梗塞などで壊死すると、その細胞はもう新品との交換はできない。欠損したまま一生を過ごさなくてはいけないのだ。


だからこそダメージを受けやすい部品はわざと壊れやすくしておき、新品と交換しやすくしておく。皮膚、腸、肝臓など多くの細胞は壊れやすく、新品も生まれやすい。

つまりターンオーバーによって簡単に再生できる器官である。アザができたら放っておけばターンオーバーによって細胞が新品になる。献血をして失った血液も新しく補充される。

ありとあらゆる傷を癒す「内なる力」はターンオーバーによって支えられているのだ。


「生命は機械ではなく、流れである」


ルドルフ・シェーンハイマーはこのように語っている。すべての生命は流れていると言える。

花は枯れ、腐り、虫が食べ、糞をし、根が吸収し、花は咲き、また枯れる。

私たち生命は永遠の流れのなかにいる。流れこそが生命の力なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?