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アンチ・ヒーロー

「自分の身ぃくらい自分で守れや」

上品そうな親子と煌びやかなマダムが行き交う街で、除け者のゲテモノたちが集う激安丼ぶり屋。
牛丼に紅しょうがをこんもり乗せて始まった、ヤマトのお説教タイムにモモは思わず耳を塞いだ。

「何でそんなヒドイこと言えるの」

「当たり前のことやんか。一体今まで何人が警察に見殺しにされてきたと思う?」

「ハ? どういう意味?」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンの俺じゃないってこと。ピンチは1人の時に来るの、対岸の人間は簡単に裏切るの、分かる?」

「分かんない。あのさあ、どうでもいいけどさあ、ちょっとは助けようっていう意思を見せてよ」

「今夜ハゲがモモを仕留めに来る、とか何とか」

「今夜かどうかは分かんないけど……とにかく! 何かあってからでは遅いわけ。あいつ頭おかしいから」

「何なん。恨み買うようなことしたん?」

「ホ別3で募集してハゲがシャワーいってる間にイチゴ抜いた」

「イチゴ……」

「1万5千円ってことなの。3万プラスそれってことなの、分かる?」

「言い方真似すんな、売女」

「おーーーい、言葉に気をつけろー。ハゲより先にいったんど」

「いつからやモモちゃん」

「アン?」

「俺という男が横にいながらなぜそうなる?」

「さっき自分が言ったんじゃん。自分の身くらい自分で守れって。そういうことでしょ。この男根主義社会に銃弾ぶち込んでやんだよ」

「俺っちよく分かんねえ。しかしまあ、朝のニュースで君の訃報見るんは胸糞悪いわなあ」

「勝手にころすな」

「いやほんまに、ほんまに。生き急ぐなよ」

突然真顔になるヤマト。
モモは怯みかけたが、ヤマトの汚いゲップによって現実に引き戻された。

「くさいよ、ヤマト。下水のニオイするもん」

「くさいゲップはなあ、相手威嚇できんねんで。モモ、截拳道ちゃんとやってるか?」

「もうやってないよ、さすがに」

「俺がせっっっっっかく教えたったのに」

「いつの話よ」

「もうええ、もうええ。ええか、とりあえずなあ、困ったら相手の足の小指とおねえさん指の間踏むんやで。これだけ覚えとき」

「やっぱりヤマトは助けに来てくれないの?」

「モモはお姫様ちゃうやろ?」

「汚いから?」

「そう思うんやったら、まともになれよ」

正論を言うヤマトは嫌いだ。つまらない。黙れ糞醜男。モモは捨て台詞を吐いて今すぐこの場を立ち去りたかった。

しかしそうしなかったのは、怒気を孕んだヤマトの眼が、モモの軀を貫いた先のもっと巨大な何かを見ている気がしたからだ。







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【補足画像】

②(①に反する)

③(①②に反する)

ハマショーの『MONEY』がすきです。