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コロナとダイバーシティ&インクルージョン

コロナの影響によって半ば強制的なデジタル化が進んでいます。
この変化をダイバーシティ&インクルージョンの観点で捉えるととても大きなチャンスに思ったのですが、自分の世界にはこの観点で話している人を見ないので素人ながら論点を提起する目的で記事にしていみます。

補足)過去の職場で社内外のダイバーシティ推進に取り組む立場にいたことはあります 

コミュニケーションのマイノリティ

コミュニケーションがメールやチャット、ビデオ会議に集約されることで音声の字幕化、文字の読み上げ、翻訳できるデータが爆発的に増えています。これによって視覚や聴覚に障がいのある方や日本語を母語としないスタッフの能力を今まで以上に引き出して活躍の場を整えられる土台が急速に整いつつあります。

たとえば、Chromeからアクセスするだけで音声認識からWebカメラ映像への字幕合成までをワンストップにやってくれるページも登場しています。この速さ、本当にインターネットって素晴らしい

FacebookがOculus social VRのデモしたときに同様の可能性を感じましたが、今回のコロナはこの世界観を社会実装する第一歩になると期待してます

従来型オフィスでは生産性が下がる注意力・多動性

従来型のオフィスでは生産性がなかなか上がらない注意欠如・多動性傾向の人にとっても自分にとって最適な環境を設計できる機会ではないでしょうか

実は自分も音の刺激に注意力が奪われやすい傾向があります。内線が席に備え付けられていて「4コール以内に出ろ」といった慣習がある環境は自分のような人間にとってはかなりきつかった記憶があります。「なぜ集中することさえできないのか?」なんて平気で言われたりしますがそれはマッチョの論理なのです。

こういった分野に関連する知見は海外では多く共有されているようなので、ここでどんどん輸入したいところ。

一例として、Work Design Magazineが昨年の12月に発表している"Designing For Neurodiversity And Inclusion"から少しだけ抜粋して紹介。

ニューロダイバージェントと呼ばれる特性には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ディスレクシアなどがあります。人口の最大17%が神経発散性疾患と診断されていることが報告されています。
・4パーセントはADD/ADHD
・1パーセントは自閉症
・10%がディスクレシア(読み書き困難)
・1%がディスプラキシア(協調運動障がい)
・1%がトゥレット症候群
多くの条件が未診断であることを考慮すると、17%は保守的な予測である可能性があります。

Ref)https://www.workdesign.com/2019/12/designing-for-neurodiversity-and-inclusion/
様々なワークスタイルや性格、能力に合わせて空間をデザインすることで、誰もが自分のニーズに合ったセッティングを見つけることができ、目の前のタスクを成功させることができます。環境要因とそれが人々に与える影響にもっと焦点を当てれば、人々が体験したいと思うようなタイプのスペースを創造することができ、包括的で、私たちの人生の追求をより成功に導くことができるのです。

私たちの最高の資産である「人」を、彼ら全員が成長できるスペースに確実に配置する必要があります。

Ref)https://www.workdesign.com/2019/12/designing-for-neurodiversity-and-inclusion/

障がいの社会モデル:社会や環境のあり方・仕組みが作り出す

そもそもマイノリティはどう生み出されるのかという考え方に少しだけ触れておきたいと思います。

障がいの社会モデルという考え方があります。マイノリティ=障がいを抱えている人というわけではないが、生きづらさを感じる人に広く適用できます。

ある人が車いすを利用していました。
そのことだけをイメージしてみてください。
何が障害でしょうか?
“立って歩けない”と答える人がいるかもしれません。
しかし車いすで移動できます。
“高いところにある物に手が届かない”と答える人がいるかもしれません。
しかし物が手の届く高さにあれば届きます。

イメージしている車いす利用者の“障害”の中には、実は、その人の身体的な障害だけで起こっているのではなく、何らかのシチュエーションが合わさって発生しているものがあるのではないでしょうか。

車いす利用者は、例えば、階段など立って歩いて移動することが求められる状況で“障害”が発生したり、“高いところに物が置かれている”という環境の時に“障害”にぶつかることになります。

このように考えると、一般的に“立って歩けない” “目が見えない“ “耳が聞こえない”などの心身機能の制約が“障害”と捉えられがちですが、“階段しかない施設”や“高いところに物をおいた陳列”など、社会や環境のあり方・仕組みが“障害”を作り出しているということが分かります。
この障害の捉え方が“障害の社会モデル”という考え方です。

(出所:日本ケアフィット共育機構ウェブサイト https://www.carefit.org/social_model/ )

反脆さを

働き方の大きな変化の機会。どう頑張ってもみんなでオフィスにいた頃の働き方をリモートの環境で再現することなど不可能なのだから、業務プロセスやコミュニケーションのあり方をゼロベースで再設計していく必要がある組織が多いはずです。

設計のプロセスにおいて従来のオフィスでは能力を出しきれなかったマイノリティのパワーを爆発的に引き出せるような設計に取り組もうとする組織がひとつでも増えればいいなと心から思っています。

きっとそれがこうした逆境を好機への変える反脆さというやつなんじゃないでしょうか。


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