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生成 AI とどう付き合うか? けんすうさんに聞いてみた!

*本 note は、Google がけんすうさんにインタビューした内容を編集して掲載しています。けんすうさんには、Gemini の改善や活用のための知見をいただくため、アドバイザーに就任いただいています。また、Gemini を含む生成 AI の利用に関する説明は例示を目的としています。実際の回答結果については、ご自身で正確性をご確認いただくようお願いいたします。

こんにちは。Google の AI「Gemini(ジェミニ)」の公式 note 編集部です。

今回は、Gemini アドバイザーのおひとり、古川健介さんのインタビューをお届けします。今注目の IT 企業アル株式会社の代表取締役を務め、けんすうという愛称で知られる古川健介さん。

早稲田大学在学中に掲示板サイト「したらば」の運営に携わり、ハウツーサイト「nanapi」の生みの親でもあるけんすうさんは、現在、大手出版社とともに漫画制作をサポートする AI サービス「Comic-Copilot」を運営。ご自身も、日々の仕事はいまや生成 AI なしでは進まないといいます。

そんなけんすうさんに、生成 AI の未来、そして私たちは生成 AI にどう向き合えばいいのかをお聞きしました。


生成 AI で今関心があるのは「読書体験」「英会話」

-本日はお時間いただき、ありがとうございます。今日は生成 AI のことについて、いろいろとお話を聞かせてください。

古川健介(以下けんすう):こんにちは。アル株式会社の古川健介です。今日はよろしくお願いします。

-けんすうさんは、生成 AI を日々どんなふうに使っているのですか?

けんすう:昨日は、記事を書くために、15 分ほど生成 AI 相手に議論をしましたね。その記事のために「言葉を習得することで、ものの見方や認知のし方が変わると思うが、そういう実例を複数の言語の例で教えてほしい」と、生成 AI に聞いていました。

例えば中国語の「面子」という言葉に相当する言葉は英語にはないのですが、近い英語は何ですか? と聞いたら「Pride という言葉は近いかもしれません」とのことだったので、じゃあ「Pride」と「面子」はどういった違いがありますか? などと聞くと教えてくれたりしました。

他の言葉についても聞いてみると、フランス語やドイツ語にはこういう言葉がある、とか、フィンランド語にはこういう言葉があり、他の言語では近い言葉はない、などの情報がどんどん出てくるんです。こうした深掘りしていくやり取りは生成 AI でしかできないことですね。

-調べ物は、もっぱら生成 AI ですか?

けんすう:そうですね。それこそミーティング中でも何か実例を質問されたときに、その場ですぐ、生成 AI を使います。調べて、こういう事例がありますとか、どこどこの会社で売り上げがこのくらいありますとか、ペラペラ話したら「全部記憶しているスゴそうな人間」に見られていたみたいです。記憶していたわけじゃないんですけど(笑)。そもそも全く知らないことだったら間違っているかもしれないので使えないんですが、「大体こういう情報があったな」というときにはすぐに出せたりするので便利ですね。

-生成 AI 関連の話題で、いま関心をもっていることは何ですか?

けんすう:読書体験がすさまじく変化していくだろうということには、とても関心を持っています。例えば、著作権フリーの作品だけを集めた「青空文庫」には、紫式部『源氏物語』のような文学だけでなく、福沢諭吉の『学問のすすめ』とか、ニーチェの『ツァラトゥストラ』とか、人文書も収録されています。本をいきなり読むのではなく PDF にして、生成 AI に読み込ませて要約させて、それを動画化したものを見ながら対話して内容を理解していく。本の内容を動画にしている人の存在を初めて知ったときにはびっくりしましたけど、ある程度適当な動画だったとしても、背景に絵があって文章が流れるといった視覚情報があったほうが頭に入るんですよね。PDF で販売している電子書籍だとさらに高速でインプットができます。

こうした、いわば「AI 読書」は今後、多くの人の情報インプット体験を変えてしまうのではないかと思っています。

本を読むのが苦手だと、情報インプットのスピードの遅さがスキルアップのボトルネックになることがあるので、そこが解消されるのはすごいことです。

-けんすうさん自身は、ほかにどんな使い方をしていますか?

けんすう:英語の勉強のときに生成 AI と会話するというのをやったりもします。

AI 相手だと、どれだけ間違えても恥ずかしくないし、後から何を話したかも見返すことができます。何度繰り返しても全く嫌な顔をされないし、怒ったりもしない。

AI が先生になるというのはこれから強いニーズがあるのではないかと思っています。人間の先生だと子ども一人ひとりにたくさん時間をかけることはできなくても、AI だったら理解できるまで寄り添うことができます。

それから、生成 AI に Podcast の案を出してもらって、それを基に議論して、その議事録をまた生成 AI に入れてそこから案を 10 個に絞ってもらうとか、その Podcast のキャッチフレーズを追加で考えてもらうとか、バナーのデザインをするためのイメージ共有資料を作ってもらうとか、全部を生成 AI にやってもらっています。

生成 AI が作ったものをイメージとしてデザイナーさんに見せてお願いするといった使い方もしています。通常の検索では出てこないあいまいなイメージも、生成 AI を使うと、望みのものがサッと出てくるんです。

生成 AI によっても個性があるようなので AI ごとに回答を比べることも多いですね。

僕たちの「できない」が「できる」になる未来が来るはず

-AI を使い分けているけんすうさんからみて、Gemini に対して、これが得意そうだという感覚はありますか?

けんすう:スマートフォンだと、Google Pixel とのシームレスな連動ができつつあるので便利です。もし今、600 ポンドが日本円でいくらなのか知りたかったら、手元ですぐに Gemini を呼び出してパッと聞いてパッと答えてもらえる。その延長で、ほかの Google のツールとのシームレスさが増えるといいんだろうなと思っています。

最近若い世代の人に聞くと、仕事でネックになっていることのひとつは敬語だというんですね。敬語がわからない。敬語をミスすると𠮟られる。でもメールを打ちながら敬語を調べるのは効率が悪いので、Gmail に Gemini が入り込んで自然と敬語を正してくれたら、とてもインパクトがあると思います。

もし Gmail で日程調整の連絡が来たときに、それを読み込んで Google カレンダーをチェックして返信内容まで考えてくれたりしたら、みんな使い始めるのではと思います。

こんなふうに「普段でやっている業務だけど、なんか面倒なこと」とかをいい感じに統合してやってくれたら、Google ドライブや Gmail を使っている人は、AI を利用していることを意識せず生産性がグッと上がる。

そのときに、 Gemini はとても重要な位置を占めていくようになるんじゃないでしょうか。

-今後、AI を意識しなくても「できる」ことは増えていくけれど、その上でもっと「使いこなしたい」と思ったら、どんなことが必要だとお考えですか?

けんすう:生成 AI の登場によって、今後は、むしろ人間の能力のほうが問われてくると思います。これは生成 AI をチャットで使いこなして仕事を進められる能力、つまり人間が生成 AI に対して何を聞くか、生成 AI の出力をどういう角度で受け止めて、どう深掘りしていくかが重要ということです。

そうなってくると、自分の中に、いくつ視点があるのか? というのが大事になってきます。ある程度の教養や知識がないと、そもそも AI に質問することすら難しくなります。

それを助けてくれるのが、リベラルアーツ、人文知ですよね。これからはきっとその辺りが重要になってくるんだろうなと思っています。

…と言いつつも、僕も詳しくないこと…例えばコロンブスについて知りたいとして、「コロンブスについて知りたいんですが、私は質問力がありません。あなたの能力を引き出せる上に、私の学習効率が一番上がる、コロンブスに関しての最高の質問を 30 個考えてください!」などといって、質問も生成 AI に考えてもらう、ということはよくしています(笑)。

ビジネスや社会はこんなふうに変わる

-ビジネス環境や社会に対しては、どんな影響を及ぼすでしょうか?

けんすう:当然ながら、ある種の仕事は AI でもできるようになっていくでしょうね。

でも、それは悪いことばかりではないと思っています。それだけ人がモノを創る時間や好きなことをやる時間が増えていくので。その結果、さまざまなエンターテインメントが増えていったらいいなあ、と思っています。

アメリカでは 2 ~ 3 時間もの長さの Podcast が人気になっているそうです。生成 AI で要約は可能な時代だったとしても、やはり、間(ま)とか、コンテキストとか、ここでクスッと笑うとか、そういうものが重要だよね、みたいな話になっているとも聞きました。

その結果、2 人で 3 時間も話すといったコンテンツのニーズが高まっているというのは、新しい仕事が生まれているということでもあるのかなと思いました。

それから僕自身の例でいえば、最近歴史を勉強してて、ふと「英仏百年戦争にシャルルって名前の人は何人出てくるの」と聞いたら、まさかの 7 人もいたんですね! 驚きじゃないですか。

でもこれをまとめたサイトも動画も存在しないんです。

「英仏百年戦争、シャルル多すぎ?まとめてみた」って動画があったら面白いのにというときに、生成AI が動画作りを助けてくれる、みたいなことが将来起きたらすごいことになりそうだなと思っています。

生成 AI ができること、人間がやるべきこと

-クリエイティブな領域での生成 AI の可能性についてはどうお考えですか?

けんすう:やはり、クリエイティブでも、生成 AI はとてもインパクトが大きいと思っています。

僕自身、大手出版社と一緒に、生成 AI を使った漫画制作サポート「Comic-Copilot」というサービスを提供していて、多くの漫画家さんに利用してもらっています。漫画の場合、セリフを 1 文字でも短くしなければいけないのでその言い換えを考えてくれたり、登場人物の名前の候補をたくさん出したりなど、さまざまな使い方をしてもらっているようです。

これってまさに生成 AI が得意なことで、それを生成 AI にやってもらうと人間は自分が集中したいコアなところに集中できる良い事例かなと。

漫画家さんに聞くと「描きたいものがたくさんあるのだけど、時間がとれない。だから制作作業のプロセスを少しでも短縮したい」という声はよく聞きます。

セリフの言い回しのパターンを大量に出して、漫画家さんが良いものを選ぶとか、編集の人へのメール文面が失礼のないように、勝手に考えてくれるとか…そういう作業を生成 AI を使って短縮できたらめちゃくちゃいいよねと思っているんですね。

一方で、漫画に関わる方々からはストーリーや構想の面ではニーズはありませんよと、漫画制作の AI サービスを作り始めたときに言われました。人間がやるべきだし、ここができる人が強いなと思います。

漫画と AI では、どの漫画には 1 ページに何文字あったか、というような漫画のデータベースを使ってそれを基に、 あなたのページちょっと文字数多いから読者を選んじゃうかもね、というようなアドバイスまで実現できるといいなと思っています。

まずはとにかく試してみよう

-生成 AI と私たちは、どう付き合うことが大切なのでしょうか?

けんすう:僕自身は、生成 AI を作った人が意図しなかったものはどうすれば出てくるのかということに興味がありますね。『使い方を間違っていく』というほうが楽しいと思っているんです。

生成 AI には人間ができない大量の生成ができるからこそ、その『使い方を間違う』使い方ができるという気がするんです。

私の知り合いが、ひたすら、ありもしない架空の世界の地図を作ったり、存在しない世界の言語を生成 AI で創ったりしていて、これはとても面白いなと思いました。言語は人間の手で創るのはものすごく大変ですが、生成 AI によって「文法体系までしっかりある言語」みたいなのを作るのが可能になるわけです。

まだあまり触っていないよ、という方はまずは、生成 AI に向かっていろいろ試してみてはどうでしょうか。これを聞いたら、こう返ってきた、という試行錯誤をとにかくいろいろやることが大事かなと思います。

別に間違っても AI は怒ったりしないので、とにかく会話をして遊んでみる、くらいの感じがいいんじゃないでしょうか。そうすると「これを聞くとこうなるな」とか「これは苦手だな、間違えるな」というのがわかってくると思います。

「上手な質問の仕方を覚える」というのに目がいきがちな人が多いですが、テクニック的なものを覚えるよりも、AI を 1 人のパートナーとして、コミュニケーションをたくさんとって、人となりを知る、みたいなイメージのほうが合うと思います!

ーけんすうさん、今日はありがとうございました。

パソコンやスマートフォン、タブレットから Google アカウントでログインすれば、誰でも無料で利用できる Google の生成AI、 Gemini(gemini.google.com)。これを機会にぜひ話しかけてみてくださいね!

note ではこれからも、さまざまな人に活用法を聞いたり、使い方のコツを紹介したりしていきますので、楽しみにしていただけるとうれしいです。


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