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ワシントンDCのバス旅行

私の博士研究の資料が、アメリカのワシントンDCにあるホロコースト記念博物館にあると分かっていたので、5日間ばかり、ワシントンDCに滞在していたことがある。


お金を節約するために、市の中心から離れたホステルに宿を取っていたので、博物館のある中心まではバスで40分くらいかかった。そのバスに乗っていると、どんな都市なのかが掴めるようになっていて、中心から乗ると、最初は白人も乗っているのだが、最後の方になると、黒人やヒスパニック系だけになる。私の宿も終点間近だったので、マイノリティらしく最後までバスに乗っていたことになる。

それでも、東アジア系の人がそのバスに乗っているのは珍しいのか、ある日、宿から中心に向かうバスに乗ったら、アフリカ系アメリカンの運転手が話しかけてきた。自分が、ユダヤ人の歴史を研究していると言うと、「知ってるか?最初のユダヤ教徒は黒人なんだよ。」と教え諭すように言うのだった。

運転手は私が乗っている間、ずっと、アメリカにおける黒人の歴史等を語ってくれた。(実はワシントンの黒人の歴史は特に有名である。)「我々は奴隷だったんじゃない。奴隷にされたんだよ。(We weren't slaves. We were enslaved.)」という言葉は特に覚えている。

正規のバスルートが終わってからも、「いいから乗ってろ」と言うので、空のバスの中で色々話した。

最後、バスを降りるとき、「まあ、暇だったらうちに遊びに来なよ」と名刺をもらった。結局、連絡はしなかったが、たまに思い返して遊びに行けばよかったなあと残念に思うのである。

Photo by Unseen Histories on Unsplash

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