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サッカーボールと身体で描くアート

2016年3月29日

福井県坂井市 春江中公民館に

子供のような大人が集まった。

ここは取り壊されることが決まったようだ。

ただ、他のそういった所とは何かが違う。

入り口には今にも飛び出してきそうな恐竜のトリックアート。

中に一歩踏み入れるとあたり一面いたるところに様々な絵が出迎えてくれる。

絵の種類は様々で、それぞれがそれぞれの表情をみせてくれる。

この様子だけをみれば廃墟となるところに落書きされた場所と思う人も多いだろう。

だが真相はこうだ。

長年愛された公民館をただ取り壊すのではなく、感謝の気持ちも込めて、どこに誰が何を描いても良いという‘‘粋’’な最後の挨拶の仕方が選ばれたのである。

幼稚園児から大人の方まで年齢層も性別、職業も多種多様の人たちがおもいおもいに筆をとり公民館に挨拶をした。

それを聞きつけた県外のアーティストも駆けつけたほど、この企画は子供や子供のような大人の心をくすぐった。

その噂を聞きつけ

「やってみたいことがある」

と横浜から福井まで、かけつけたこの男。

その「やってみたいこと」とは一体なんなのか。

「サッカーボールにペンキをつけて壁に蹴り込んで絵を創る。飛び散るペンキでTシャツ、ズボン、靴、身体中良い感じになる。その過程もアート。」

どうやら、少し変わり者のようだ。

そしてこう付け加えた

「絵は公民館ごと取り壊されてなくなってしまうけど、創ってる過程から撮影し、映像作品として残したい」

「壁もボールも身体中キャンパス」

そのアイディアにのった、あともう一人の男も一緒に横浜からやってきたそうだ。

どうやらこの二人

頭のネジが外れているようだ。

二人は「どこでやろうか」とすでに楽しそうな顔で公民館内を練り歩き始めた。

そして見つけた場所

それは屋上。

「まだ壁が真っさらで、今日は太陽も出てて気持ち良い。絶好のフリースタイル日和。最高や!」

そして音楽を流しながら早速、準備を始めた。

「やったことないで、わからんけど、まあ、こんな感じかな」

なぜか関西弁だ。

今は横浜に住んでいるが出身は
京都舞鶴だという。

そうこうしているうちに

「ペンキが乾いてしまう前にやっちゃうか。一発目ちょっと緊張するけど、やってしまえば大丈夫」

と豪快に蹴りこんだ。

「おっ良い感じ」

「予想外に壁より地面が良い感じになってきたな。」

「まっ、でも良い感じに綺麗やな。」

「おもしろい」

「手も服も良い感じになってきてるやん」

「めっちゃ楽しいな」

と言いながら

ボールとあそびつづけている。

とそこへ噂を聞きつけた
サッカー少年たちと坂井市の広報の方が集まってきた。

せっかくなので急遽パフォーマンスをみせてあげて技を教えてあげている二人。

「プライベートで遊びに来ただけやから軽くだけね」

と言いながらも見たことない動きをしている。

頭のネジが外れているだけかと思っていたが、どうやら

この男二人の正体はフリースタイルフットボール

デュオの世界チャンピオンのようだ。

ALEG-Re (アレッグ)というチームで活動しているようでニックネームはYOSSHI (よっしー) とYU-J (ゆうじ) と呼ばれているようだ。

※その時の交流の様子は後日、坂井市の広報に掲載されていた。

自由に流れる時間。

そんなゆったりとした交流の後は続きの絵の創作。ボールとペンキ、壁に向き合う二人。

気持ちの良い天気のもと

のびのびと自由に動き回る。

まっさらだった衣服やボール、身体中はまるで絵の一部のようになってきている。

ペンキまみれの二人。

子供のようだ。

そうこうしているうちに

ついに

完成したようだ。

太陽のもとビーチで友達とサッカーに夢中になっているような絵が完成した。

----本当にサッカーボールだけで描いたの!?----

実はこの絵にはコラボしている人がいる

その名も‘‘Ekusiad Daisuke’’

今回の「公民館をキャンパスに」の企画の発端とも言えるアーティスト。

以前からDaisukeさんと交流があるYOSSHIさんが今回の企画を知り

一緒にやりたいことがある!」と連絡したのだ。

YOSSHIさんによると

「フリースタイルフットボールをフリースタイルフットボールで終わらすのではなくジャンル、概念を超えてやってみたいことがあって、サッカーボールで絵を描くのは昔からやりたかったイメージの一つ」

「企画を見た瞬間、今回はそのイメージを形にするタイミングだ!」

となって横浜から駆けつけたと言っている。

そこで今回

YOSSHI & YU-J ft. Ekusiad Daisuke

が実現された。

実際にサッカーボールにペンキを塗りフリースタイルフットボールをしながら絵を描いていく。

その下地を生かしDaisukeさんが仕上げていく。コラボ作品。

Daisukeさんのアイデアでボールのようなドット絵で描いていく。

よくみると壁のほかに地面に影を描いていく。

しかも夕方になると実際に太陽が沈むところに重なるように描いていく。

アイデアに満ち溢れるアーティスト。


さらに遊び心でサッカーボールをトリックアートで立体に。

それを教えてもらい遊ばずにいられない二人。

トリックアートのサッカーボールとYOSSHI & YU-Jのセッション。

こういう時間はアートが与えてくれる

きっと‘‘何か’’なのだろう。

そして服も気づけば一つの作品に。

またサッカーボール達も様々な表情をみせてくれている。

絵は公民館ごと取り壊されて形には残らないけれど、この日のかけがいのない気持ちが‘‘何かの形’’で身体、心に染み込み、これからの自分を形成する何かになるだろう。

「でも、やっぱり壁ごと欲しいな」

と冗談なのかか本気なのかわからない顔で言うYOSSHIさん。

「石鹸で洗っても爪の中のペンキとれんわ」

と言いながらも、どこか嬉しそうな空気が流れていた。

いきなり遊びにいって、みなさんに良くしてもらえるほど温かい場。

良い場所、良い人たちの周りには良い空気が自然と流れている。

「Good Vibes.」

この日の様子はYOSSHIさんが創った

ショートムービー

「Good Vibes」に記録されている。


Tittle / タイトル

GOOD VIBES / YOSSHI & YU-J

Playlist / プレイリスト

1. Slay Well

[ 2. Disco Ball ft, EKUSIAD DAISUKE ]

3. Not For Nothing ft, EKUSIAD DAISUKE

4. Trancer

5. Rumba Sabor

6. Kickin it

7. Fingers

[ 8. Making of Disco Ball ft, EKUSIAD DISUSE ]


※今は取り壊され実物を見ることはできません



ありがとう。

フリースタイルフットボール
YOSSHI & YU-J

ペイントアーティスト
DAISUKE

写真アーティスト
八杉和加奈



おまけ


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