アメリカの登録栄養士さんと日本の管理栄養士さんが一緒に学ぶ場を作ってみた話
アメリカと日本の栄養士さんが学ぶコミュニティができた経緯
一年前ほどにGlobal Nutrition Labというオンラインコミュニティを始めました。日本・アメリカ在住の栄養士や研究者らが参加しています。(ご興味ある方はぜひFBから申請ください!無料です!アメリカ在住の方も基本的に日本語が喋れる方です。)
少しずつメンバーが増えていって、アメリカで働く登録栄養士さんや研究者さん、僕のように栄養をアメリカで学んで帰国後日本で働かれている方、日本でずっとバリバリと臨床をされている方など40名ほどの方が所属されていて、2-3ヶ月に1回程度10-15名程度が集まるオンラインの研究会を開催しています。
アメリカだと登録栄養士として学ぶ機会が多いんです。
さまざまなセミナーが開催されていたり、病院内でも所属している登録栄養士が多く勉強会などもあり、最新情報を簡単にアクセスできる環境にあります。
僕もアメリカのそんな環境が大好きだったのですが、起業後に帰国し、パートタイムなどで食事カウンセリングなどに関わりながらも周りに管理栄養士さんがいない環境となってしまいました。
また日本にいる管理栄養士さんと話した時になかなか病院の中だけだと知識をアップデートする場が少ないという声も聞きました。
そこで、たとえ働いてる場所や専門領域が異なっていたとしても、色々な専門家から食事や栄養を学べる場があると良いかもしれないと思い、元々ネットワークのあった方やつながりのつながりの方にも入ってもらいコミュニティが立ち上がりました。
結果的に米国登録栄養士の資格を持たれている方も10名前後在籍されている唯一無二のコミュニティとなっています。
コミュニティでの研究会の内容
これまで開催してきた研究会のテーマはさまざまで、
・ベジタリアン・ビーガン食
・Intuitive Eating
・CKD
・妊婦糖尿病
・アメリカの急性期医療における臨床栄養ケア
などなどです。
毎回研究会でさまざまな領域の最新の研究やプラクティスを学べて大変勉強になってます。
日米双方の栄養士さんが学ぶ場となっている
興味深いのが、日本の管理栄養士さんがアメリカのエビデンスベースのプラクティスから学ぶこともある一方で、アメリカの登録栄養士さんも日本の文化的なことや食事療法の実践の知識が大変参考になるとコメントされている点です。
日本とアメリカでは食文化も医療制度も異なるため、管理栄養士さんの強みが異なるように思います。
アメリカの登録栄養士さんの強みはなんと言ってもエビデンスベースの食事療法の提供。
チーム医療の中で栄養の専門家として医師やコメディカルと渡り合っている方も多く、専門領域の知識量はすごいですし、常に最新の科学的エビデンスを追いかけてどう臨床に生かすかを考えています。
またカウンセリングの重要性が認識されているアメリカでは、カウンセリングスキルを学ぶ機会が多く、登録栄養士の方もカウンセリングレベルが高いのは強みだと思います。
一方日本の管理栄養士さんの強みは、患者さんの状況に合わせたレシピのアレンジや調理テクニックと思います。
日本食の特徴もあるかもしれませんが、患者さんの体調に配慮した細かなアレンジなどは秀逸だと思います。
アメリカと日本での共通の課題
またアメリカで大病院の栄養士ユニットのマネジメントを担っていたり、急性期病院でバリバリ働かれている登録栄養士の方でも課題感として持たれていることがあります。
それは、食事療法・カウンセリングが必要な患者さんがいるにも関わらず、多くの患者さんが登録栄養士さんにアクセスできていないという点です。
症状が悪化してから登録栄養士がサポートすることは多いのですが、その手前の未病や重症化予防の段階で患者さんが登録栄養士さんにアクセスできていないという状況とのことです。
これはアメリカの医療制度(保険制度)の影響によるところもあるのですが、大変興味深いことに、日本の管理栄養士さんからも同じ課題感を抱えているという声が多くありました。
日本でもやはり保険制度でカバーされている疾患もあればされていない疾患もあり、多くの患者さんが管理栄養士さんにアクセスできていない状況にあります。
ぜひこの課題をどう乗り越えていくのかもメンバーの皆さんとディスカッションしながら考えていければと思います。
まとめ
今回は、アメリカの登録栄養士さんと日本の管理栄養士さんが学ぶコミュニティの立ち上げ経緯やその内容について紹介しました。
まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、日本の管理栄養士さんもアメリカの登録栄養士さんもお互いが知識や経験を持ち寄ることで、スキルアップやより良い患者さんへの食事療法の提供につなげることができるのではと感じています。
また患者さんが適切なタイミングで適切な栄養の専門家にアクセスできる仕組みについても今後メンバーとディスカッションしながら模索していきたいと思います。
食事を楽しみにながらも健康増進ができる、また病気を抱えていたとしても、病気をしっかりコントロールしながらも、食を楽しめる。そんな社会を実現できればと思います。