しき　第2回【マンガと小説の物語】【今回も小説のみ】

　気が付くと夜のとばりが降りています。そろそろ宿題をせねばなりません。４年後の夢の実現のために、現実を生きねばなりません。でも。
「・・・私、１８歳で結婚するんだ。そんなの考えたことなかったな。１８で結婚したら進路はどうなるの？大学は・・・行けない？専門学校は？就職した方がいい？ていうか出会いって…高校だよね。まさか就職先とか進学先じゃないよね。あまりにも時間が無さすぎる」
　今のところ教会の完成は４年後の４月予定。娘は今、中学３年生です。
「だって入社入学後すぐ出会って０日婚とか有り得ない。私が嫌だ。高校生で婚約っていうのも…ああ～相手の年齢次第？う～１８で結婚だと１８の男はガキ過ぎる。社会人はいいけどロリコン男は絶対嫌だ～！２０歳位の公務員が丁度イイのかな・・・」
　宿題なんてしていられません。
「でも出会わないと、私からも出会いに行かないと…バイト先、習い事、塾、家庭教師…どうしよう、女子高生に手を出す社会人ってやっぱりキモいしな。でも高校生に結婚しようって言われたら、よっぽどのバックのある生徒じゃないと」
　宿題と将来。どっちが大事？
「死にそうな莫大財産ジジィと出会って結婚して式挙げて死んで・・・なんて有り得ないし。莫大財産ジジィってどこにいるか知らないし、そもそも莫大財産ジジィと手なんて繋ぎたくないし、誓いのキスなんてまっぴらだし。ラップ越しでも嫌だ」
　娘は将来の方が大事なようです。
「でもさ、結婚して大学行ってもイイんだよね。でもな・・・そこでイイ男と出会ったらメッチャ後悔しそうだし。即離婚したら縁起悪いって色々と怒られそう・・・」
　娘は将来を選んだようですが、受験という将来は忘れているようです。
　ホーホーちゃんは教会を熱心に眺めています。目力で教会が一日でも早く完成しないか試しているようです。
「専業主婦は嫌だな。後妻も嫌だ。連れ子がいるのも嫌。だって私１８だよ！ああそうか、遊びも１８までにしておかなきゃいけないんだ・・・４年で足りる？」
　ホーホーちゃんはサンバのダンサーのように羽を広げて教会へやっぱり念を送っています。
「そうか、親は反対しないんだ。１８で娘が結婚って、親は少しは考えそうなもんだけど。それに結婚式なんてたったの一日のことなんだから、結婚後の生活もちゃんと考えないと。結婚後の生活を考えるのは結婚前、つまり高校生のうちに決めなきゃいけないのか。勉強に忙しくない高校にしよう」
　ホーホーちゃんの目の色が変わりました。教会の何かが反応しています。教会は何かを理解したようです。
「勉強あんまし好きじゃないから、大学は行かなくてもまぁいいか。挙式代どれくらいかかるんだろう。塾代勿体ないから、挙式代に貯めといて欲しい！って言えるわけがない。私も貯めないといけないんだ。お年玉貯金だけではどうにもならない。中学生だからな…あれ、株って中学生もしていいんだっけ。それとも会社立ちあげて１８歳には敏腕社長になっとくとか」
　娘は自分がユーチューバーやeスポーツ、SNSのポップスターになる素質が無いことを自覚しています。
「少しは楽しいことも考えよう。ドレスはどうする？なんたって１８歳のプルプルピチピチ女子が結婚するんだからさぁ☆今から体型も肌もドレスのために気にしとこうかな。ニキビは大敵。髪も伸ばすか。４年あればだいぶイケる。あとは…出るとこ早く出て欲しい！身長もやっぱ平均以上は欲しいよなぁ」
　まだ中学３年生の娘には神頼みと素質と努力の境界線が分かりません。
「私の夫ってどんな人なんだろう☆☆☆☆さっきの彼位イケメンなら嬉しいけど！初めての彼氏が夫なのかなぁ。なんか勿体ないから、３人目ぐらいがイイかなぁ。絶対不倫は嫌！ずっと年上も嫌！ロリコンキモいし！それからタバコは絶対に吸わない人。お父さんに似てない人。昭和と平成バブルを引きずる義両親・義祖父母は絶対嫌～。同居も無理！」
　ホーホーちゃんの目が左右交代で点滅しています。
「・・・いかんいかん。ちゃんと現実を生きながら夢を実現しよう」
　娘は仕方なく宿題に取り掛かりました。あれ、どうしてでしょう。分からない問題があっても気になりません。娘は案外勉強好きに変わるかもしれません。
　どか―――――――――――――――――――――――――ん！！
　工事現場で音がしました。何かが崩れ落ちたようです。警察のサイレンが鳴り響きます。人々が教会へ集まり騒がしくなりました。
　ホーホーちゃんは悔しくてたくさんたくさん鳴きました。だって工期が２カ月伸びてしまったから。

～続～お読みいただきありがとうございました(*^-^*)