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#25_「人は愛されることによってのみ、愛することを学ぶ」

辻信一さんの著書『弱虫でいいんだよ』のなかで出会いました。

「人は愛されることによってのみ、愛することを学ぶ」

これは、アシュレー・モンタギューの言葉です。

私はこの言葉と出会って、なんだか、とてもいい気持ちになりました。そしてこの「形式」は、教育を考える上で大切な意味をもっているような予感がしました。

「人は愛されることによってのみ、愛することを学ぶ」

この言葉を形式化してみると、次のようになります。

「人はXされることによってのみ、Xすることを学ぶ」

ここには、育ちゆく子どもたちと、その子どもたちをとりまく環境との関わりのありかたが見て取れます。

「人は聞いてもらうことによってのみ、聞くことを学ぶ」

「人の話をちゃんと聞きなさい!」と命じるだけでは、子どもたちは人の話をちゃんと聞くようにはならない。子どもたちが人の話をちゃんと聞けるようになるためには、子どもたちの話をちゃんと聞くこと(子どもたちが自分の話をちゃんと聞いてもらうこと)が必要だ。こんなふうに言えるかもしれません。私も毎日子どもたちに向けて話をしますが、なかには「聞いてくれない子」もいます。だからと言って「オレの話を聞けー!」なんて言う自信もありません。まずはその子どもと話すとき、私自身がちゃんと話を聞こうと思うようになりました。

「人はやさしくされることによってのみ、やさしくすることを学ぶ」

「相手の人権を大切にしましょう」という呼びかけは大切です。しかし、呼びかけるだけで実現してしまうわけでもありません。他者に対してきつい言葉を投げかけてしまったり、傷つけてしまったりすることがあります。そんなとき、私たちは「これからはちゃんと相手のことを考えてから行動するように」と諭しがちです。子どもたちも「これからはよく考えて行動します」と(その場しのぎの)反省を口にしがちです。でも、しばしば、同じようなことがくりかえされてしまうことがあります。だからこそ、時間はかかっても、まずはその子どもにやさしく接することを大切にしたいと思うのです。

「人は愛されることによってのみ、愛することを学ぶ」

この言葉が教えてくれるのは「能動的な行為は、受動的な体験を起源としている」ということではないだろうかと思いました。

子どもたちに「受動的な体験」をたくさん提供できるような学校を「ナスビの学校」と呼びたいと思います。


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