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アートが修復する人と人の関係:NPO法人チア・アート(前編)

マスクで顔をおおっていると表情って読みとりづらい。でも、相手を見つめるまなざしが優しかったりすることは、マスクをしていてもちゃんと伝わってる。

 “患者さんや家族は自身が直面する一場面しか医療の現場を見ることができませんが、職員の多様な側面や表情を見ることで少しでも安心感につながれば”  2020年11月、コミュニケーションが制限される今だからこそ、病院職員の豊かな人間性を見てほしいと、緊張感が高まる病院内で企画されたスペシャルな写真展覧会がありました。

企画をしたのは、医療空間でアートやデザインの力をいかし療養環境の改善を行うNPO法人チア・アート。写真のモデルとなったのは、筑波メディカルセンター病院で働く職員のみなさん。コロナ禍において感染症対策をしながら、救急医療や感染症の患者さんを受け入れ、ケアにあたっています。

実際に撮影したのは約250名、本番の展示では病院1階の180 mほどの長い廊下に約100名分の職員のみなさんの写真がずらりと並びました。

カメラが捉えたのは、真剣なまなざしで最前線で働く医師、手術が終わってほっとしている職員、看護師。

それから、病院内のコンビニの店員さん、ボイラー室やベッドを直してくれる職員、警備員、シーツを変えてくれるスタッフなど…… 普段スポットライトが当たりにくい医療の現場を支えてくれているみなさんの姿。

3.写真展「病院のまなざし」

6.写真展「病院のまなざし」

2.写真展「病院のまなざし」


「病院の職員のみなさんにありがとうという言葉を使わずに敬意や感謝を伝えたいなというふうに思ったんですね。

この着想の元になったのが、イギリスの医療施設をいくつか視察したときに、職員をかっこよく撮った写真が廊下に展示してあったこと。これすごいいいな。やりたいなとずっと思っていたんです」

と話してくれたのはこの展覧会を企画したNPO法人チア・アート理事長の岩田祐佳梨さん。

イギリスで見た写真展と同様に、写真家 高木康行さんが撮影した介護職として働くかっこいい男の子の写真シリーズ『介護男子スタディーズ』、筑波大学附属病院において写真実習の一環で実施された写真展『ドリームポートレートシリーズ』にも影響されました。
https://www.cheerart.jp/dreamportrait(『ドリームポートレートシリーズ』についてはこちら)

新型コロナウイルスが世界に広がってから、病院では普段着用していたマスクにくわえ、フェイスシールド、防護服などを着用。患者の側も職員側も緊張感がどんどん高まっていって。

また「うつったらどうしよう?」「さっき話したことお医者さんにちゃんと伝わったかな?」と不安な気持ちがあるなか、病院で治療を受ける患者さんやその家族にも、職員を身近に感じてもらいたかったといいます。

「フェイスシールドをつけていても、病棟の看護師さんたちが患者さんを見守るまなざしが本当に優しくって。こういった写真がとれるというのは、いろんな現場で起こっていることなんだなーと感じました。

ふだんは“職員”と“患者”といろんな役割を生きているなかでも、見えてくる人間性のようなものが写真を通して表現できているのかな。と感じています。」

岩田さん自身、せっかく撮影してもマスクで表情はわからないのでないかと恐る恐る撮影してもらったけれど、できあがってみると目だけでも十分表情が伝わっていることに驚いたそうです。

「先生もおんなじ人間なんだな」(付き添い)

「皆さんの笑顔を見て、涙が出そうになった」(通院患者)

「自分も頑張ろうと思えた」(診療部)

といった感想もよせられました。

そしていつもは自分の持ち場で精一杯で、
他の職員さんの活動を知らなかったりする病院職員さんたちも、
写真を通して働いているほかの職員をみることで「自分も頑張ろう」とお互いはげまされたり、ケアし合うようなことが起きました。

(次に続きます!)


この記事は先月行われたオンラインでの「コロナ禍における障害のある人の仕事づくり」情報交換会での代表の岩田さんのお話をまとめています。
一回きりで消えていくのはもったいないような興味深い取り組みのお話が多かったため、noteでも随時ご紹介していきます。 


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