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グッドデザイン賞学生インターン座談会

グッドデザイン賞では毎年夏に、審査会をお手伝いいただく学生インターンシップ・プログラムを実施しています。
2019年は、北は北海道から南は九州まで、全国各地の約30のデザイン系大学・専門学校から100名ほどの学生が参加しました。
審査会では、100名近くの審査委員1人1人に学生がマンツーマンでついて、一緒に応募対象を見て回りながら評価のポイントなどをメモに取ったり、審査を進める際に必要な資料を準備したり、実際の審査を見学しながら学んだことを最終日に発表したりと、かなり濃い学びのあるインターンシップ・プログラムとなっています。
今回は、まもなく2020年度の学生インターンの募集を開始するにあたり、これまでの参加者にその体験談をお話しいただきました。応募を考えている学生の方にぜひ参考にしていただければと思います。
昨年度の実施概要は下記リンク先をご覧ください。

また、大人の方や大学教員の方には「グッドデザイン賞はこんなこともやってるのかー」「良さそうなプログラムだから、うちの学生も参加させたいな」と温かい目でご覧いただけますと幸いです。
「過去に参加したことある!」という方は、「今はこんな風にやってるのか!変わったなー」と懐かしんでみてください!

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今回の座談会に参加してくれた4人の「卒業生」をご紹介します。写真左から、

- 伊藤智成さん(2017〜2019年名古屋工業大学U4〜M2在籍時に参加・4月から東京のITコンサル会社に就職)
- 武曽朋花さん(2019年千葉大学工学部デザイン学科U4在籍時に参加・4月から同大学院に進学)
- 串戸涼子さん(2017〜2018年武蔵野美術大学U3〜U4在籍時に参加・5月からWebUIデザイナーとして就職)
- 藤原風丸さん(2015〜2017年京都造形芸術大学U4〜M2在籍時に参加・現在は東芝デザインセンターに勤務)

それでは早速、お話を聞いてみましょう。

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ー それではまず、みなさんの自己紹介と参加した理由を聞かせてください。

武曽:2019年にスタッフ・リーダー*として参加しました千葉大学工学部デザイン学科の武曽朋花です。参加した理由は、大学の先生から紹介を受けて、おもしろそうだなと思ったからです。

* 学生インターンは、グループをとりまとめる「スタッフ・リーダー」と、グループを構成する「サポート・スタッフ(以下スタッフ)」の2種類の役割で募集しています。

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インターン参加の流れ

伊藤:2017年にスタッフ・リーダー、2018年にスタッフとして、2019年にまたスタッフ・リーダーとして参加した、名古屋工業大学大学院デザイン系プログラムの伊藤智成です。参加したきっかけは、2016年にリーダーとして参加していた同じ研究室の先輩の紹介で連れて行かれました。

串戸:2017年にスタッフ、2018年にスタッフ・リーダーとして参加しました武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業の串戸涼子です。きっかけは、研究室から来た募集案内を見て、自分の専門領域じゃないデザインに触れられそうなところが魅力的で参加しようと思いました。

(藤原くんは遅れて参加のため、自己紹介はこの後で登場します!)

ー きっかけはそれぞれですが、実際に参加してみてどうでしたか?

串戸:体力面が大変じゃなかったですか?

伊藤:そうですね(笑)。審査会の雰囲気としてどうだったかという話が来たら、まずそれを言おうと思ってました。とくにリーダーは体力つけて来た方がいいのは間違いないなと。

串戸:私は美大だったから、というのは関係ないかもしれませんが、、ほんとに普段運動してなくて、審査会が終わった後は体がバキバキでした(笑)。とくに二次審査会は3日間、動きっぱなし・立ちっぱなし・走りっぱなしなので、そういうフィジカルな部分は大変でしたよね。

武曽:私は去年だけの参加なのですが、その前の年まではずっと大変だと先輩方から聞いていました。去年も参加した方からは、今年はそうでもなかったという話を聞いたので、年々体力的にはそんなに大変ではなくなってきてるのかもしれないですね。私は去年、そこまで大変だとは思わなかったです。

毎年、プログラムの内容を改善するべく、少しづつアップデートしています。2018年→2019年は、より学びに集中していただくべく、それまでより日程が1日短縮されました。

伊藤:たしかに2018年から各ユニットにトランシーバーが配布されるようになって報・連・相が楽になったり、徐々に体力的な部分は改善されてきたのかも?(笑)どうなんだろう?

串戸:私は去年はインターンではなく、事務局側のスタッフとしてお手伝いしていたのですが、傍から見てて、自分がインターンだった2018年のときよりはスタッフの大変なところは少なくなってきてるんじゃないかと思いました。なので、その分、学びたいと思って参加している人にとっては最高の環境になってきてるんじゃないかと思います。

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武曽さん

武曽:先輩からは「参加するとおもしろいよ」と言われて、でも「ふつーに疲れるけど楽しいよ」とも言われてました。千葉大は、毎年、若干強めに先生から行けと言われるので、やや強制参加のように感じる人もいると思います。先生から「研究室から行けるやつは誰だ、じゃあおまえ行け」という感じで(笑)。

串戸:そうなんだ。うちは研究室からメールが流れてくるだけなので、雰囲気が全然違いますね。

伊藤:名工大も、僕が所属している研究室の先生から行って来いという感じはありました。

ー 希望した審査ユニットに配属されましたか?

グッドデザイン賞では、応募カテゴリーごとに各ジャンルに分かれた「審査ユニット」単位で審査が行われます。学生インターンは、1ユニットにつき5〜6名が配属され、チームを作って活動します。応募時に希望ユニットを書くことはできますが、必ず希望通りに配属されるわけではありません。希望しないユニットに配属されても参加することが応募の条件となります。
2020年度は、20の応募カテゴリー(審査ユニット)が編成されます。2020年度の応募カテゴリー

串戸:私は建築系のユニットを希望して、配属されました。もともと建築や都市のことは個人的に好きだったのですが、建築学科に入って勉強するには至らなくて、素人がなかなか踏み入ることができない領域だなと思っていました。大学での専攻はビジュアルデザインなんですが、以前から興味のあった建築分野の審査に携わることで、建築の端っこを掴めるような経験ができないかなと思って希望しました。結果的に配属されたのが小規模住宅の審査ユニットで、2年とも同じところでした。
知らない言葉や用語があって、建築的な考え方や、あまり他のデザインにはないポイントなどを審査の過程で知ることができたので、本当に良かったです。もともと中学高校も美術系の学校だったのですが、久々に初めて覚えるようなことがすごくたくさんあって、本当に刺激的だったというのが一番の感想です。
実際、刺激を受けた結果、卒業制作では「都市のダイアグラム」という作品を制作しました。平面のビジュアル・デザインと建築系デザインの狭間を行くような、領域をまたぐようなものができないかなと思っていたので、審査会で覚えたことを結構細かくメモしたり感想を書いたりして、それも卒制に生かすことができたと思います。結果的には学科の賞を取ることもできたので、すごくためになったな、ありがたいなという気持ちです。

武曽:私はサービス系のユニットを希望していましたが、商業施設などの建築系のユニットに配属されました。千葉大のデザイン学科には、スペース、プロダクト、ビジュアル系と呼ばれるコミュニケーション、カーデザインの4本柱があって、2年生のときにスペースデザインの授業をとっていたので、審査会のときに、なんとなく審査委員の先生方の言ってることはこのへんかな?というのがわからなくもない状態で参加しました。
審査では、先生方の意見がばんばん飛び交うのですが、建築家の先生の目線もおもしろいし、今回ユニットには建築家だけじゃなく土地利用などを専門にしている先生とかもいらして、自分は建築学科ではないのですが、おもしろかったですね。

グッドデザイン賞では、前述の応募カテゴリー=審査ユニットごとに審査委員会を編成し、それぞれのユニットのその分野の専門家と、少し違う立場から審査ができる専門家をバランスよく配置しています。
2020年度の審査委員会編成

武曽:デザイン的にみると人がどう動くかとか、人間中心で語られることが多くて、それで評価されているものももちろん多いのですが、構造的な部分での評価とかもあって、その部分は全然知らなかったのでおもしろいなと思いました。あとは土地柄にあってるかどうか、とか文脈をすごく意識しますよね。それを聞いたとき、ああそういう視線で、こういう風に考えてその土地に溶け込むものを作るんだなというのは、おもしろいなと思いました。そのあと、自分の生活の中でも空間系のものに触れるのが多くなりました。卒業研究は子どもを対象にしたワークショップだったんですが、「家造りを体験してみよう」という、家の構造を子どもたちが知るようなワークショップをやったりして、審査会に参加したことで「空間」という基礎の部分が自分の中に積み上げられたのかなという感じはしました。

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伊藤くん

伊藤:僕は3年間全部希望通りのユニットに配属されました。今の専攻はIT系なんですけど、学部4年生のときにはプロダクトデザイン、とくにキッチン系が好きで、そのときはキッチン家電や冷蔵庫などのユニットを希望して配属されました。そのときに「なるほど、自分がやりたい分野ってこういうことなのか」と知れるきっかけになりました。2回目に参加したM1のときは、一番苦手な分野を希望してみようと思いました。僕が所属する工業大学ではわりと理論的思考が強くて、社会背景や情報源にこだわっている分、見た目の美しさとかグラフィック的なところがすごく苦手だなと思って、あえてメディア・パッケージの審査ユニットを希望しました。どこを意識してみんな作ってるんだろうか、とか、どこを評価してるのかを学ぼうと思っていました。
最後3年目は、文房具や学習・教育系のユニットに配属されました。翌年から新社会人になるにあたり、文房具って一番身近なものなのかなと思ったときに、文房具でいいものってどういうことなんだろう?というのを少しでも学びたいと思って参加しました。
最初の2年は、学生生活の中でどう活かせるだろう、という感じでしたけど、最終年のM2のときは、これからの生活に活かそうと思って、文房具のユニットを希望しました。これから生活する上で、これはいいものだと選べる基準を学べたというのは良かったかなと思っています。

→ ここで仕事で遅れていた藤原さんが参加しました

藤原:2015年〜2017年の3年間、スタッフ・リーダーとして参加した、京都造形芸術大学プロダクトデザイン学科、そのあと大学院でデザイン領域ソーシャル・デザイン専攻修了の藤原風丸です。今は東芝のデザインセンターに勤務しています。
最初に応募したきっかけは、学部時代の担当教員だった植松先生から聞いて、やってみようかなと思ったからです。応募動機の2割くらいは「お金をもらって東京に行ける」と思ったのはありますが(笑)。単純に、グッドデザイン賞のGマークは小さいころから知ってはいて、でもどうやって決まるのかとかは不思議ではあったというのがあります。別に調べたりしたことがあるわけではないけど、お店に行くとGマークのついた商品がよく売っていて、よくわからないけど、グッドな商品なんだなと思っていたので、なんなんだろうというのを知りたかったのがきっかけでした。どんな人が出てて、どうやって審査してて、なに基準でグッドデザインを決めるんだろう?という多少懐疑的な視点を持って応募しました。
実際やってみて一番驚いたのは、いわゆる狭義の意味でのデザイナーと呼ばれる人たち、プロダクトやグラフィックの方だけではなく、人間工学の専門家とか、幅の広い広義な意味でのデザインの専門家の方々がそれぞれチームになって審査しているっていうのが結構衝撃的でした。「グッドデザイン賞はコンペじゃないんですよー」とよく言いますけど、そのときの流行りのデザイナーを5人くらい呼んで、右から左に流れていって、マルバツマルバツの多数決で決まるものだと思っていたので、こんなにちゃんと見てると思わなかったというのが正直な感想でした。もっと黒いものを想像していました(笑)。意外と審査ちゃんとやってる!現物も見てる!と思って驚きました。

【参考】グッドデザイン賞の理念
グッドデザイン賞はデザインの優劣を競う制度ではなく、審査を通じて新たな「発見」をし、Gマークとともに社会と「共有」することで、次なる「創造」へ繋げていく仕組みです。

串戸:ほんとにそう思いました。

藤原:ユニット配属は、最初の年は、コンシューマー製品のユニットを希望していたけど、BtoB系の産業機器のユニットに配属されました。正直最初は「えっ」と思ったけど、結構おもしろかったのが印象としてあって。「あ、世の中ってこんなものもあって、こんなものがグッドデザイン賞を取ろうとしてるんだ」というのが衝撃でした。
それで良かったなと思って2年目も参加しました。2年連続でスタッフ・リーダーをやる人は初めてだったということで、その年はユニットは担当をせず、事務局と学生インターンを繋ぐ遊軍として動きつつ、いろんなところに顔を出してやってました。ちょうどその年くらいからインタンジブルな応募も増えていて、そういうのは興味深く見ていました。学生インターン間で横の繋がりができるというのもこの年くらいからだった気がします。

ー 事務局目線としては、希望しないユニットに配属されても、逆にそれを「普段知ることができないデザインに触れられるチャンスだ!」と思う学生さんに来てほしいです。実際、その場合の学びも大きいようです。

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藤原:3年目は希望を出して、BtoB製品の医療とか測量とか精密機器のユニットに配属されました。審査委員にはいろいろな背景を持つ先生がいらっしゃって、めちゃくちゃおもしろかったです。
結局今の会社に就職を決めたのは、最初の年にBtoB商品に触れたというのが影響として大きかったです。それまでは、プロダクトデザインをやりたいと思っていたのですが、もうちょっと広義的なデザインをやりたいと思うようになりました。今の会社に入るきっかけになったのは、最初の年の経験があるかなと思います。

伊藤:僕の場合も、4年のときキッチン系プロダクトの企業を目指して就活してたんですが、その後大学院に進学して、IT系の方に進んだのは、このインターンが目指す方向を定めるきっかけだったのかなと思います。

藤原:グッドデザイン賞のインターンで会ったメンバーに、そのあとなにかしらで会う、みたいなことが多発していました。3年目のときは鯖江のメガネのコンペでファイナリスト選出で残ったメンバーがスタッフで来てて、わー!となりました。あのとき俺が負けたやつや!グランプリ取ったやつや!とか(笑)。
最初の年の学生インターンだった子が去年のミッドタウンアワードで受賞していたり、コクヨアワードで受賞してたりとか。すごいと思って見ていました。

ー そうやって聞いてると、意識高い人じゃないと参加できないのか...?と思うのですが、どうですか?

串戸:いや、全然そんなことはなかったです。私、全然意識低い系で(笑)。美大って、自分からバンバン事務所にアプローチして、お金なくていいからインターンさせてください!とかそういうガツガツした人は本気ですごいんですよ。それを見てると、自分はほんとになにもしてなくて。唯一、研究室からのグッドデザイン賞のインターン募集のメールが来たときに、自分でもできるのかな・・・?と思って応募しました。

ー たしかに応募ハードルは低いですよね(笑)。応募フォームも、きっかけとかくらいしか書くところないし。

グッドデザイン賞インターンの募集は、これまでのインターン卒業生がいる大学の担当の先生宛に事務局からご案内をお送りしています(2020年度の募集はまもなく開始予定)。これまで派遣実績のある大学についてはこちら(リンク先一番下の「MEMBER ARCHIVE」)から確認できます。

串戸:フォームに送ればすぐに応募できるから、という最初はほんとそんな感じだったんです。結果的に参加できて、思ってたよりすごい学ばせてもらえるような機会を得られて、ほんとうにお金をもらってるのに、こんなに学ばせてもらっていいの?くらいにあまちゃんだったので、最初にスタッフをやったときは、おどおどしてました。

グッドデザイン賞学生インターンでは、スタッフ・リーダー/スタッフはそれぞれ所定の賃金/日当が支払われます。2019年度からは、交通費も地域区分による一括支給となり、全国各地から参加しやすくなりました。

ー 以前は雇用体系が違っていたので、アルバイト感覚で来る方も多かったです。今は、「学びの機会」として捉えて来てくれる方が増えた気がします。

藤原:たしかにそういう声はありましたね。でも単純な労働要員としてなら、事務局も学生を雇う必要はないんですよね。学生のほうがいろいろ「やらかす」リスクがありますからね(笑)。

ー ユニット内で、学生同士で仲良くなりましたか?横のつながりとかどうでしたか?

武曽:同じ大学の子がユニットにいたので、仲良くなる会話を広げやすかったのもあって、やりやすかったですね。ユニットの中に、去年参加したことがある子もいたので、やり方を聞いたりして、まわしやすかったです。

伊藤:僕は2年目はスタッフとして参加して、前年にリーダーを経験してたので、違う目線から見る経験もできました。リーダーは、スタッフに比べて責任感がまったく違うのが表情にも出ていた気がします。事務局からの指示をスタッフの子に伝える責任とかもあって。

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串戸さん

串戸:私は1年目スタッフで、2年目にリーダーをやったので、自分のところのリーダーはこんなに去年大変だったのか!と申し訳ない気持ちになりました。最初の年はみんな仲良しだったんですけど、みんなお花畑みたいなふわーっとした感じで(笑)。ほんと去年はすみませんでした、と思いながら2年目はリーダーをやりました。

藤原:僕自身は3年目はゆとりがあったので、最初のチーミングの仲良くなる方法とか、だいぶ工夫をしました。

ー 2年以上参加した人たちは、なんで「またやりたい」と思ったのですか?

伊藤:僕は純粋に楽しさしかなくて、マイナスが1つもなかったので、絶対またやりたいと思いました。僕が初めて行った年が、メンバーも良かったのかもしれません。経験者も多くて、体制も整ってきた年から参加したので、これすごい楽しいところなんだ!かつ、学びもあって、お金ももらえる!と(笑)。だから参加しないと損だなと思ってたので、2年目3年目の方が参加しとかないと!みたいな軽い気持ちで参加してましたね。

串戸:リーダーしか知らないこととかあって、もっと私も知りたい!とスタッフのときに思ってたので、1年目に満足したからこそ、さらに全貌を知ってみたいなと思って、2年目もやろうと思いました。2年目は入ったら心強いメンバーがいたので、タイミング的にはすごいラッキーだったなと思います。結果的にもっと知りたいと思ってたところは知ることもできたし、1年目のときに知らなかったけど、たぶんこういうことがあったんだなと振り返りながら、去年の審査のことを思い返したりして、2年目もやってよかったなと思ってます。

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2019年審査の様子。審査委員1人に学生が1人付き、アシスタントを務めます。

ー 審査委員との交流はありましたか?審査で大変だったことはありますか?

武曽:私は先生方とは全然お話できなかったのですが、スタッフの子が喫煙者だったので、ついていた先生と喫煙所に一緒に行って、そこで仲良くなったりとかはしてたみたいです。もしかしたら、スタッフの方が仲良くなれるかもしれないですね。私のユニットは、先生たちの審査が早かったので、いろんなデザイナーがいる中で、建築家はやっぱり特殊なんだなと思いました。ユニットによるのではないでしょうか。

スタッフ・リーダーのみ、一次審査・二次審査の両方に参加して、審査の補助を行います。主に審査資料の管理と記録を任されます。担当ユニットの審査シートの数を数えたり、合否や評価ポイントを記録したりします。
スタッフは二次審査会のみのサポートとなります。審査委員に付いて評価のポイントをメモしたり、リーダーの指示のもと審査資料のまとめや審査の運営補助を行います。

伊藤:1年目は、同じ大学の先輩も参加していたので、夜な夜ないろいろ相談して進めていました。実際始まってみると、事務局の方が助けてくるし、審査委員の方も慣れているので、とりあえず資料を徹底的に管理しようと意識していました。そこまで負担はなかったですね。

藤原:3年目は余裕をもって臨めたのですが、1年目のときは、ほんとにいきなり崖から突き落とされた感じがしました。うっそ!みたいな(笑)。突然「え、これ今から責任持って管理しなきゃいけないの?」という状況で。

串戸:私がリーダーをやった年には、前年までやってらした藤原さんから伝言メモが送られてきて、そのおかげでみんなだいぶ安心してできました。当たり前のことだけど、前日の夜までに、自分の担当するユニットの審査委員の方が普段なにをされているかや、お名前と顔が一致するように予習をしておく、とかは聞いていたので、少し安心して臨めました。たぶん藤原さんの1年目の恐れみたいなのはなかった気がします。おかげさまです。

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藤原くん

藤原:リーダーの特権として、早めに審査シートの集計が終われば、自分のユニット内であれば聞きたい先生のところに審査を見に行ける、というのはありました。3年目のとき、デザイナーのコメントはある程度想像がつくのですが、デザイナーではない研究者の方や専門家の方々はどこをみて、なにを思って良しとするのかを聞いてみたくて、ちょっとした隙間に、東大の先生の審査を覗きにいったのですが、超おもしろかったです。こんな、何かよくわからないものに、こんなに語れるんだ!と(笑)。その先生についていた担当学生のメモ帳はぎっしりメモで埋まってました。

伊藤:最終的に合否を決めるときは、審査委員の先生はみなさんまじめで険しい表情になるんですけど、ものをみて触って体験してるときはすごく楽しそうなんですよね。2年目は、ついていた審査委員の方と一緒にVRの応募対象を体験して、楽しさを一緒に共有できるなってところで、仲良くなりやすくはなるのかなと思いました。

串戸:建築のユニットはわりとパネルに向き合って、ずっと文字を読んだり、静かに進行するユニットなので、そこは建築以外の実際にモノがある審査ユニットのうらやましいところですね。あとから映像を見たら、あれ?なんかうちのユニットにはない光景だぞ、審査委員の方と笑い合うことなんてなかったぞ?とか(笑)。先生からは淡々とぼそっと「新規性がない」と言われたりとかして。

2018年度インターン・プログラムまとめ映像 [YouTube]

全員:新規性(笑)。

伊藤:文具の審査はほんとにすごくて、一緒に「これほしい!」って盛り上がったり。ほんとに和気あいあいでしたね。審査委員の先生によっては、若者から見てどうなの?と聞かれたりもしていました。

グッドデザイン賞では、二次審査会は「現品審査」を実施します。モノがある応募対象は、すべて現品を二次審査会会場に展示をしていただきます。建築やサービス、取り組みなど現品がない審査ユニットの応募対象は、概要とセールスポイントなどをまとめたA1サイズのパネルにまとめて展示をしていただいています。

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約3,000点の応募対象が並ぶ二次審査会場

藤原:逆に、建築ユニットがうらやましいなと思うポイントは、他のユニットを担当していると、あの膨大なパネルの内容をちゃんと読めたことがないんですよね。だから、きれいに作られたものが多いし、いいことが書いてあるんだろうなと思うけど、ちゃんと見れないというストレスが残ります。100巡回*のときに、初めてちゃんとパネルの内容を説明されて、なるほどね!と思いました。

「ベスト100」とは?
グッドデザイン賞では賞の種類がいくつかあります。すべてのグッドデザイン賞(2019年度のグッドデザイン賞は、1,420件が受賞)の中からとくに優れた100件が「グッドデザイン・ベスト100」に選定されます。→ 賞の種類
*「100巡回」とは:
二次審査会3日目は、「特別賞審査会」のメンバーである審査委員(正副委員長・各ユニットの審査リーダー、フォーカスイシューディレクター)が、各ユニットからベスト100候補として推薦された対象を、会場内を歩いて見て回る「ベスト100候補巡回審査」があります。
学生インターンはそれとは別に、約20名ずつの4〜5班に分かれ、審査委員と同じようにベスト100候補を見て回ります。自分の担当ユニットの候補対象の評価ポイントを、他の学生に説明しつつ、説明役・聞き役を入れ替えながら、ベスト100候補となった応募対象を学生なりの目線で見て回ります。

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インターン最終日、みんなでベスト100候補を見て回ります

串戸:インターンの100巡回ってほんとにいいなと思うのは、いくら「ベスト100候補」になっていても、なんでそこまで高く評価されたのかっていうのは、そこのユニットの審査に寄り添ってないとわからないんですよね。なんでかっていうのを、学生の言葉だったとしてもちゃんと聞ける方が、自分1人で見るよりも理解度が数段違いました。

ー 100巡回では、他のユニットのものを知るという以外にも、自分のユニットのものは評価ポイントを他の学生に向けて発表しなければいけないので、審査の過程で見て聞いたことを、伝える訓練としてもやっています。そういう意味でもいい勉強になるのかなと思うのですが、うまく説明できましたか?

串戸:すっごい難しかったです。ぺらぺらな言葉だけじゃ絶対話せないから、ちゃんと建築の用語の理解とかをユニットのみんなで短い時間でぶわーっと勉強して。

武曽:100巡回の前に、これはなにが良かったんだっけ?とか、みんなで、うわーっと復習してメモしていました。間違ったことは説明できないから、ちゃんとしなきゃ、と思ってやってました。

ー 審査委員の先生たちが言ってたことを、ただ聞くだけではなく、自分でみんなに説明すると、沁みますよね。

藤原:一日の業務が終わったあとに、審査会場の端から端まで、ぶわーっと全部の応募対象をみる、というのもやってました。そして、あとで自分がいいなと思ったものと、ベスト100を受賞したものと答え合わせをやってました。自分がいいと思ったものが、100に入ったかどうか、を見るのが楽しかったです。
3年目はその時間はなかったけど、自分の担当ユニットのものは、ひそかに自分でマルバツをつけてみて、それの答え合わせをやったりはしていました。そこらへんは楽しかったです。

二次審査会で確定した合否とベスト100受賞対象はその後、10月初旬に公に発表されます。学生もその公開日まで最終的な受賞対象を知ることはできません。さらにその後、ベスト100受賞対象の中から、ベスト100プレゼンテーションを経て特別賞が選出され、10月末に行われる受賞展で大賞を含む特別賞が発表されます。
→ 参考:2019年度の受賞結果

串戸:自分がいいと思ってたものが、通ったかどうかを確認するのは、私もユニットごとにやってみていて、このユニットは私の感覚と合ってたけど、このユニットはいいと思ってたのはほとんど落ちてるなとか、自分がどの分野に知見がないかというのがわかりやすく出るんですよ。それがすごいおもしろいなと思って。みんなでの活動もおもしろいと思うし、そうやって忙しいけど気になるものは見て、個人で答え合わせをやってもおもしろいと思いました。

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ガイダンスでは簡単なワークショップも行います

ー 審査会が夏にあって、秋には受賞展がありますが、みなさんはその年の受賞展は見に来られましたか?

串戸:行きました。2年連続関わったことで、それまでよりもちゃんとGマークを見るようになったときに、年ごとに似てるかもしれないけど、あきらかに違うものがあるから、やっぱり毎年来る方がおもしろいし勉強になるのかなと思いました。なんとなくGマークというふわっとしたイメージから、今年のGマークは、っていうのは、展示を見に来て改めて再確認できると思います。定点観測的な部分はありますね。ちゃんとその時代が反映されてて、審査委員の方も今の時代だから、とかをすごく考えたこの年のグッドデザイン賞、大賞なんだなと関わってから思うようになりました。

グッドデザイン大賞は、毎年すべてのグッドデザイン賞受賞対象の中から、審査委員と当年度のグッドデザイン賞受賞者等による投票を実施し、1件が選出されます。
参考:2019年度のグッドデザイン賞大賞選出経緯

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伊藤:2年目に参加したときからは、なにが大賞になるのかというのを考えるようになったんです。そのとき絶対これが取るだろうと思っていたものが大賞を受賞しました。それを見たときに、自分は時代の流れをちゃんと捉えられてるんだというのを実体験できたのはよかったです。

ー 就職活動とかで、このインターン経験がアピールポイントになったりしましたか?

伊藤:僕は実際就活で経験談として使いました。このインターンで得られた量は他とは全然違うので、アピールポイントになったと思います。

串戸:私もポートフォリオに載せました。グッドデザイン賞のインターンで学んだことを3つくらいあげて、それが生かされた自分の作品を目次みたいにして、ポートフォリオのはじめにしたら、「わかりやすいね」と見ていただいた方々にも言っていただけました。グッドデザイン賞は誰でも知ってるから、フックとしてすごくいいと思いました。

ー 参加を迷ってる人がいるとしたらなにを言ってあげたいですか?

藤原:なんで悩んでるのかなと思いますけど(笑)。僕は、うちの大学から初めて参加した学生だったんですね。正直うちの母校はちょっとぬるい感じがしてて、危機感を持つためにもちょっと行こうと思って参加したんですが、実際行ったら「やべっ」となりました。こんなにたくさんの同世代のデザイン学生が、学校外の人と繋がれるというのは本当にこういう場でしかないのかなと思います。
迷っている人には、とにかく来てみれば、と言ってあげたいですね。来てみてやってみて、それで合わなかったなと思ったなら、それはそれでいいと思います。淡々と勉強してお金をもらって帰ればいい。それが駄目とは言われてないので。

串戸:逆に今のシステムだと受動的でいても学べるので、意識高くなくても大丈夫だと思います。意識高くなくても、そういう人ほど来てみたらとりあえず「ふーん」とか「ほほー」と思うことがいっぱい落ちてる状態だと思うので、むしろラッキーというか、なかなかそういうインターンはないので。

ー このインターンのプログラムが濃い夏の3日間で終わるのももったいないので、受賞展のときに同窓会みたいなインターン・ナイトをやろうかなと思ってます。そういう機会で、実は今年僕のものが受賞しました!っていう子が出てきてくれたら事務局としてもうれしいです。

全員:楽しそう!そうなりたい!

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本プログラムへ興味を持たれた大学/専門学校教員・学生の皆さまへ
グッドデザイン賞学生インターンの募集は、過去に派遣実績のある大学の担当教員宛に事務局から4月〜5月にご案内をお送りしています(2020年度の募集はまもなくご案内します)。その後、各先生から学生の方へ周知していただき、希望する学生を推薦していただきます(1大学につき2-3名程度)。
応募を希望する学生は、先生から推薦を受けると、応募フォームへの登録案内が届きます。この登録をもって応募が完了します。
今までに派遣実績のある学校についてはこちら(リンク先一番下の「MEMBER ARCHIVE」)から確認できます。
これまで派遣実績がない学校から2020年度の参加を希望・検討してみたい学生の方や、学生の派遣を検討したい教員の方、派遣実績のある大学に所属しているけれど応募方法がわからない方は、事務局までお問い合わせください。