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すっぱいビールをつくる 【クイックサワー編】

ベルリナーヴァイスやGose、それらにフルーツを加えたものなど、すっぱいビールを目にする機会も増えましたね。さてこれらは何を使って、どんな手法で酸っぱくなるんでしょうか?
今回は短期間で酸味を生み出す、4つのサワリング手法について解説していきます。ここで紹介するのは、ランビックやフランダースレッドといった混合発酵とは異なり、主に発酵タンクに入る前の仕込み設備を使って酸味を生み出す手法です。

クイックサワー手法

サワーモルト

サワーモルトを使う簡単&手早くビールに酸味を帯びさせる方法です。サワーモルトはベースモルトに乳酸を散布したもので、Acidulated malt またはSauermalzと呼ばれます。主にドイツの醸造家がビールのpHをコントロールするために使われてきました。(ビール純粋令により麦芽、ホップ、酵母、水以外が使用できないため)

使用方法は至ってシンプルで、マッシングの一部にサワーモルトを使用するだけ。麦芽全体量に1%使用するごとに、pHが0.1低下する。最大で10%程使用可能。簡単にお好みのpHと酸味に仕上げることができます。
デメリットは、他のサワー手法と比べて酸味が弱いこと、使用量によってマッシング時にpHが下がりすぎて酵素の働きが悪くなり、エキス回収率が低下することが挙げられます。

サワーマッシュ

麦芽の表面についた乳酸菌を利用して酸味を生み出す手法です。
仕込みを行う数日前に、仕込みに使う予定の麦芽(ベースモルト)の25%のみマッシングを行い、その後38℃まで温度を下げる。38-40℃は乳酸菌が最も好む温度帯で、これを保つことで乳酸の生成を促し酸味を生み出します。2~3日後に好みのpH・酸味になったら、残りの75%の麦芽を投入して、その後は通常通りの仕込みを行う。

この手法のメリットは、比較的簡単であること、低コストで行えること、酸味の調整が可能なこと。デメリットは、時間がかかる、温度&嫌気状態をキープするのが難しい場合、乳酸菌以外の菌による汚染リスクがある、が挙げられる。

ケトルサワー

もろみから液体をろ過したあと、麦汁に乳酸菌を投入して酸味を生み出す手法です。
主な流れとして、ロイターまでの仕込みを通常通り行い、80℃以上で麦汁を殺菌or煮沸した後、40℃程度に麦汁を冷却し、そこに乳酸菌を投入する。pHが目標値まで下がったら(24~48時間程度)再び麦汁を昇温し乳酸機を死滅させ、あとは通常通り発酵タンクへと移送する。

メリットは、特定の微生物のコントロールが容易で目的に応じた酸味を出しやすいこと、酸味の調整が可能なこと。デメリットは、時間がかかること、温度と嫌気状態をキープするのが難しい場合の汚染リスク増加、が挙げられる。

発酵乳酸

食品グレードの発酵乳酸を投入して酸味を加える手法です。煮沸前や煮沸後、ワールプールなどお好みのタイミングでpHと酸味を調整できます。発酵乳酸(88%) 1ml = 40g of Acid Maltに相当。

メリットは、簡単、時間がかからない、好きなタイミングで投入できる、細かい調整が可能であること。デメリットは酸味が弱い、味の複雑性に欠ける、が挙げられる。

以上、4つのクイックサワー手法について解説しました。
この中でも現在主流なのは、特定の菌を使って狙った酸味を出しやすいケトルサワーですね。
醸造のスケジュールや目標とする味わい、時間や人的コストを考えてベストなサワリング方法を選びましょう!

次回は酸味を生み出す微生物についてです。

参考
Michael Tonsmeire, American Sour Beers: Innovative Techniques for Mixed Fermentations, 2014
John Palmer, How to Brew 4th Edition, Brewers Publications, 2017
Fal Allen, Gose: Brewing a Classic German Beer for the Modern Era, 2018

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