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【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!

GOOD COFFE FARMSを主宰するカルロス・メレンが、
「コーヒーで世界を変える人たち」とトークを繰り広げる対談シリーズ。
今回のゲストは、経験ゼロから単身オーストラリア・メルボルンに渡り、
ラテアートの世界チャンピオンにまで輝いた異質のバリスタ深山晋作さん。
今、もっとも勢いのある逆輸入日本人バリスタにお話を伺ってみました。


◆夢を失ってから、バリスタ人生が始まった

(カルロス)
晋作の第一印象って、2018年にAustralian Latte Art Championshipsで日本人初のチャンピオンになったとき、ミルクを注ぎながらジャンプしている写真で・・・

【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!2

(深山)
あれかぁ(笑)

(カルロス)
変わった日本人もいるなぁって(笑)

(深山)
実は僕、バリスタになる前はプロのスノーボーダーだったんですよ。

(カルロス)
え、本当に?

(深山)
父親の影響で、小さい頃からスノボとかサーフィンにのめり込んで、高校卒業後は親元を離れてプロ活動をスタートさせたんです。長野とかカナダに住んだこともあったかな。でも当時はスポンサーさんの通訳が付いていたんで、英語は喋れなくても全然大丈夫で。

【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!6 (2)

(カルロス)
私も17歳で親元を離れたから、境遇がちょっと似ているかも。22、23歳のときもバンクーバーにいたから、もしかしたら当時会っていたかもしれないね(笑)

(深山)
そうなんだ!すごい偶然だね。それで22歳の時に、スノボの撮影中に大怪我をしてしまって、プロを引退したんですよ。そこで夢もパッションも無くなってしまって。これからどうしようかって。

(カルロス)
私の好きな言葉に、「When life gives you lemons, make lemonade.」ということわざがあって、逆境の中でも、できるだけのことをしようっていう意味なんだけど。

(深山)
そう、先が見えなくても前に進むしかないんですよね。僕の場合は、父親が飲食店をやっていたので、そこから料理の道に行きました。

(カルロス)
最初は料理からなんだね。

(深山)
でも今は料理をやっていて良かったと思いますね。コーヒー豆の焙煎も料理に近いじゃないですか。豆の水分に対して、火力・ガス圧でどうエネルギーを与えていくか。素材を生かすために、焙煎オーバー(焦がす)なのか、アンダー(生に近い)方向なのか。いわばステーキと一緒ですよ。スーパーのお肉と松坂牛では焼き方も違いますし、お客さんの好みもそれぞれだし。

(カルロス)
ステーキの例えは、私もよく使うよ。熟成ビーフのように、コーヒー豆もエイジングするからね。


◆英語力も、コーヒーの知識もないまま海外へ

(カルロス)
料理から、どうコーヒーの世界に入ったの?

(深山)
たまたま父親がある日、エスプレッソマシーンを買ってきたんです。それで自分でもスチームしてみたら、ビビビ!と来て。1回さわっただけで、これだ!って。

(カルロス)
へえ、すごい!

(深山)
サーフィンやスノボと同じで、一目惚れでしたね。新しい夢が見つかった!と思って、その10日後には海外に出てました(笑)。

(カルロス)
すごいエネルギーだね。でも、どうしてメルボルンに?

(深山)
当時はコーヒーのことを何も知らなかったから、「コーヒー先進国」ってネットで調べたら、メルボルンが出てきて、メルボルのコーヒーの有名店を調べたら「St.Ali」が出て、シンプルにそこで働かせてもらおうと。

(カルロス)
自分を信じて新しい世界に飛び込んでいく感じ、分かるなぁ。私が日本に来たときと同じかもしれない。

(深山)
それで幸運なことに、「St.Ali」のドアを開けたら、そこにオーナーがいて(笑)。すぐにポケットから履歴書出して、「バリスタをやりたい」と。そしたら「経験はあるのか?」って聞かれて、「いや、料理はできるけど」と答えたら、「じゃあ、キッチンに行け」と。

(カルロス)
それからバリスタの修行?

(深山)
いや6ヶ月間、お店では朝から晩までオレンジを切ってました(笑)。1日500個くらい。

(カルロス)
わお!ラテチャンピオンの時の写真、オレンジを持っていれば良かったね(笑)。

【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!4

(深山)
まずは自分で勉強だと思って、エスプレッソマシンを買って独学でやってましたね。

(カルロス)
どんなことをしたの?

(深山)
とにかく味覚をとる練習です。父親から料理を教えてもらっていた時に言われたんですよ。食べたことがなければ、料理なんて作れないって。だから「今日はケニアのWashed、今日はルワンダ、明日はエチオピア」って品種を変えながら、味覚を磨きました。

(カルロス)
そこからどういうタイミングで、大会で受賞するレベルになったの?

(深山)
しばらくして「St.Ali」の姉妹店の「Sensory Lab」で働き始めたんですけど、そこにバリスタ界で何度もチャンピオンになっている有名バリスタがいて。そのテクニックやマインドを吸収しながら、とにかく忙しいお店で1日1000杯のコーヒーつくっていました。1時間に200杯くらいのペースで。

(カルロス)
めちゃくちゃ忙しいね。

(深山)
「カプチーノ」「ラテ」「フラットホワイト」といった違う種類を何杯も何杯も作り続けていくうちに、テクニックも異様に上手くなって、「ラテアートの大会に出てみたら?」と会社から言われたんです。「もし大会で結果出したら、スポンサードするよ」って。

(カルロス)
そこから1年半で世界チャンピオンになるんだよね。そのエネルギーとかパッションは本当にすごい!


◆「人」と向き合うコーヒーの伝道者たち

(カルロス)
晋作は、GOOD COFFEE FARMS(以下、GCF)のどういうところに興味を持ったの?

(深山)
いただいたサンプルを飲んだら、すごく美味しい!こんなに甘いんだって衝撃を受けました。グアテマラのWashedのコーヒーって、水洗で果皮を全部取り除いているから、甘さが出ないんですよ。でもGCFの豆は、とにかく甘くて。すごく気になりました。どうやって作っているんだろうって。

(カルロス)
なかなかクレイジーな豆の精製だったでしょ。

(深山)
クレイジーでしたね。自転車で脱穀? 水も電気も使わずに? って驚きました。確かにバイシクル式の脱穀機であれば自然環境にもいいし、甘みも残る。すごいアイデアだよね。なんでカルロスはあんなことを思いついたの?

バイシクル製法

(カルロス)
一番は、経済的にゆとりのない小さなコーヒー生産者でも、美味しいコーヒー豆づくりができるシステムを作りたかったんだ。通常の脱穀機はとても高価だからね。それにグアテマラの自然を守りたかった。グアテマラのコーヒー農園では、コーヒーチェリーの果皮や汚れた水が、そのまま川に流されているから。

(深山)
なるほど。GCFの精製のやり方はお客さんもすごく興味を持ってくれることが多くて。そういうコーヒーを「飲む」だけじゃない、新しい価値を共有できる場所が必要だと常々思っていたんです。それで地元大阪に1.8坪の小さなショップBarista Map Coffee Roastersをオープンしたんですよ。コンセプトは「コーヒーと人が繋がる焙煎所」。

【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!3

(カルロス)
そう、大事なのは「人」だよね。どの業界もそうだけど、「大量生産・大量消費」の社会だと、つい「人」がないがしろにされてしまうけど、GCFで取り組んでいるのも、小さな生産者ひとりひとりにフォーカスをあてること。彼らの想いを一杯のコーヒーに注いでいかなくてはいけないし、彼らが自分たちで美味しいコーヒーを作っていけるように、ノウハウをしっかりと提供して、それができる機会を作りたいと思っているんだ。

(深山)
ロボットではできないことって何だろうと考えると、結局は人の「心」に訴えかけられるかどうか。バリスタという立場からも、お客さんに何を提供できるかはいつも考えています。

(カルロス)
晋作は、バリスタを育てることにも力を入れているよね。

(深山)
僕が日本に帰ってきた理由の一つでもあるんですけど、実は海外と比べて、日本にはバリスタがバリスタらしく働けるところって、まだまだ少ないと感じていて。

(カルロス)
というと?

(深山)
海外だと、バリスタはスキルや知識が認められていて、それだけで生活できるくらいなんだけど、まだまだ日本ではカフェ店員とバリスタにそこまで違いがないというか。もっとバリスタを目指す若い人が夢を持てる場所を作りたいんです。

(カルロス)
晋作も、夢と情熱だけでコーヒー業界に飛び込んだからね。

【ラテアート世界チャンピオンとコーヒーブレイク】異質の日本人バリスタとのクロストーク!1

(深山)
そうなんですよ。自分はバリスタを目指すことで、人間的にも大きく成長できたんで。コーヒーを作るだけじゃなくて、人と人がつながることで、若い人の夢をプッシュできるようなプロジェクトを考えています。

(カルロス)
晋作はパッションに溢れているから、ぜひその情熱をこれからも注ぎ続けて、周りにもそのエネルギーをシェアして欲しいね。GCFも「コーヒーで世界を変えよう。」というスローガンを掲げているけど、当然ひとりではできないので、晋作ともチームとして一緒にやっていきたいよ。

(深山)
もちろん!一緒にイベントとかもやりたいし、やっぱり一度はあのバイシクル式の脱穀機をこいでみたい(笑)。

(カルロス)
ぜひグアテマラに一緒に行きましょう!現地のコーヒー農家のみんなも嬉しすぎて泣いちゃうと思うよ。

(深山)
それは嬉しいなぁ。コーヒーを作っているときも、お客さんから「元気が出ました」とか「勇気をもらいました」と言ってもらえるのが本当に嬉しくて。バリスタは、コーヒー1杯で感動を与えられる仕事だと思っているので、これからもがんばります!

(カルロス)
We need SAMURAI!(※深山晋作さんの海外での愛称は「SAMURAI SHIN」)

(深山)
Thank you!

https://baristamap.coffee/


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